ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

消費増税を求める国際的圧力と中川昭一氏の「遺言」

2013-09-27 06:34:01 | 経済
 昨年12月アベノミクスが実行されて、まだ9ヶ月あまり。株価は上がり、円高は是正されつつはある。25年のGDPは1~3月期、4~6月期とも年率でそれぞれ4・1%と3・8%という高い伸びを示した。今はその勢いが持続・拡大するように、金融緩和の継続と成長政策の推進をすべき時であって、焦って消費増税をすべきではない。
 現在の日本は、15日も寝込んでいた病人が起き上がって、ようやく歩き出したというところである。ちょっと動けるようになったからといって、病み上がりで無理をさせたら、また寝込んでしまうだろう。増税は、マクロ的にはデフレ圧力になる。消費が縮小すれば、景気が後退し、税収も減る。増税と同時に経済成長政策を打つとしても、成長政策の効果が減少する。お湯を沸かしながら、水を足しているようなことになる。
 だが、一貫してデフレ下の消費増税に反対の姿勢を取っているエコノミストは、少ない。そうした中で、明確に消費増税反対を唱えてきているエコノミストの一人が、田村秀男氏である。
 9月22日の産経新聞の記事に、田村氏は、一般商業紙ではぎりぎりに近いと思われることを書いた。まずその部分を引用する。
 「日本はデフレで国内資金需要がないから、余剰資金は海外に流れ出る。デフレ圧力を一層高める大型消費税増税に日本が踏み切ることは米欧の投資ファンドにとって死活的な利害といえよう。米欧の国際金融マフィアが牛耳る国際通貨基金(IMF)は2年以上前から日本の消費税増税をせき立ててきた」
 ここで「国際金融マフィア」と言っているのは、巨大国際金融資本である。ロスチャイルド家、ロックフェラー家を中心とした支配者集団である。IMFは、国際的な経済機関だが、中立的な組織ではなく、巨大国際金融資本が世界的に利益を実現するための組織であることに本質がある。
 田村氏は書く。「英フィナンシャル・タイムズ紙(FT、アジア版)は13日付の社説で、消費税増税を『挑戦するに値するギャンブル』、『さいは投げられた』として安倍首相の増税決断を先回りして褒めたたえた。ウォール街など国際金融市場の利害を反映する他の金融中心の米欧メディアも同様だ」と。
 田村氏が指摘する海外のメディアは、巨大国際金融資本の意思を受けた情報を流し、世論を形成し、各国の指導者を彼らにとって望ましい政策を誘導する。いまわが国の政府に対し、消費税を上げよという圧力がかかり、政治家、経済官僚等に様々な働きかけがされていると考えられる。
 次に、田村氏の書いた別の点を引用する。
 「消費税増税問題を国際金融の次元でとらえ直すと、日本は増税によって米欧のための『キャッシュ・ディスペンサー』の役割を確約したといえるかもしれない」 「日本はデフレで国内資金需要がないから、余剰資金は海外に流れ出る。デフレ圧力を一層高める大型消費税増税に日本が踏み切ることは米欧の投資ファンドにとって死活的な利害といえよう」
 言い換えれば、日本が消費増税を行うかどうかは、「米欧の投資ファンドにとって死活的な利害」となる。消費増税は、日本が「米欧のための『キャッシュ・ディスペンサー』の役割」を果たすことになる。
 田村氏は、日本が「キャッシュ・ディスペンサー」となる仕組みを次のように書いている。
 「日本はデフレで国内資金需要がないから、余剰資金は海外に流れ出る」「日本は世界最大の外国向け資金の提供国であり、その基本的な担い手は家計である」「家計は10年以来の『15年デフレ』の間、消費を抑えてひたすら金融資産を増やし続けてきた」「増分相当がそっくり海外での金融資産に充当されている」と。
 最後になるが、田村氏の記事は、上記のことを伝えるために、中川昭一氏が語ったことを書いている。「キャッシュ・ディスペンサー」という表現は、中川氏が使ったものである。「日本はキャッシュ・ディスペンサーになるつもりはない」と。
 中川氏は、堂々と海外の指導者を相手に渡り合い、日本の国益を追求した政治家だった。彼の自殺後、その活躍を称え、その死を惜しむ者は多い。いま日本の政治指導者に必要なのは、中川氏のように、日本の国益を生命をかけても守る意志である。
 安倍総理大臣以下、国政を担う政治家は、日本を守るために、巨大国際金融資本の圧力に屈してはならない。そして、そのためにも財務省・内閣府の虚偽情報に左右されてはならない。
 以下は、田村氏の記事。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
●産経新聞 平成25年9月22日

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130922/fnc13092214460005-n1.htm
【日曜経済講座】
「現金支払機」の増税デフレ 中川元財務相の「遺言」に思う
2013.9.22 14:45

編集委員・田村秀男

 18日昼、安倍晋三首相が苦悩の末、消費税増税を決断したと聞いたとき、ふと、「9月は日本にとって因縁の月か」と思った。「平成バブル」へと日本を導いたプラザ合意(昭和60年)、米中が裏で示し合わせてアジア通貨危機対策での日本の主導権を葬り去った国際通貨基金(IMF)・世界銀行香港総会(平成9年)、そして日本のデフレ不況を加速させたリーマン・ショック(20年)も9月の出来事である。日本はそのつど、国運を狂わせた。
 リーマン・ショック直後に財務相に就任したのは故中川昭一氏で、20年10月10、11の両日にはワシントンで先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議などを精力的にこなした。
 以下は氏から直接聞いた秘話のメモである。
 10日、ポールソン米財務相、バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長らに対して公的資金投入による金融危機対策を厳しく迫った。11日にはブッシュ大統領主催のホワイトハウスでの歓迎パーティーに出席。そこに飛び込んできたのは、北朝鮮に対する米国の「テロ国家指定解除」という重大ニュースだった。中川さんはそれを耳にするや、前日にも会って面識のあるブッシュ大統領に走り寄った。「大統領、どうしてですか。日本人などの拉致問題をどうするのか」と詰め寄る。大統領は「あそこにいるコンディ(コンドリーザ・ライス国務長官)に聞いてくれ」と逃げ出した。
 中川さんは帰国後、訪ねてきた米共和党の要人に向かって、口頭でホワイトハウスへの伝言を託した(筆者はこの場に居合わせた)。内容は、「いくら世界のためだ、黙ってカネを出せと言われても、日本はキャッシュ・ディスペンサー(CD、現金自動支払機)になるつもりはない」。遺言だな、と今思う。
 筆者が知る限り、国際金融の舞台での致命的とも言える日本の弱さにいらだちを強く感じ、激しく行動した政治家は、中川さんしかいない。
 消費税増税問題を国際金融の次元でとらえ直すと、日本は増税によって米欧のための「キャッシュ・ディスペンサー」の役割を確約したといえるかもしれない。
 日本は世界最大の外国向け資金の提供国であり、その基本的な担い手は家計である。家計金融資産の多くは銀行など金融機関に預け入れられる。金融機関は資金の多くを日本国債や外国証券に投資して運用する。財務省は外国為替資金特別会計を通じて金融機関から円資金を調達して米国債を購入、運用する。



 家計は10年以来の「15年デフレ」の間、消費を抑えてひたすら金融資産を増やし続けてきた。今年6月末、名目国内総生産(GDP)は9年末比で44兆円減だが、家計金融資産は305兆円、対外金融資産は398兆円増えた。
 リーマン後の増減が本グラフである。名目GDPはマイナスが続くのに、金融資産増に加速がかかっている。しかもその増分相当がそっくり海外での金融資産に充当されている。ドル換算すると、対外金融資産総額は今年6月末時点で約1兆7千億ドル増えた。このカネは米連邦準備制度理事会(FRB)が増刷したドル資金約1兆5千億ドルをしのぐ。FRBマネーは紙切れでいくらでも刷れるが、しょせんはあぶく銭だ。日本が出すのは本物のカネであり、国民の勤勉な労働の産物である。
 FRBが量的緩和政策の縮小に動く中で、動揺する米欧の株式や債券市場にとって、これほど頼りになるカネはない。日本はデフレで国内資金需要がないから、余剰資金は海外に流れ出る。デフレ圧力を一層高める大型消費税増税に日本が踏み切ることは米欧の投資ファンドにとって死活的な利害といえよう。米欧の国際金融マフィアが牛耳る国際通貨基金(IMF)は2年以上前から日本の消費税増税をせき立ててきた。G7、G20(新興国を含む20カ国)もそうだ。
 英フィナンシャル・タイムズ紙(FT、アジア版)は13日付の社説で、消費税増税を「挑戦するに値するギャンブル」、「さいは投げられた」として安倍首相の増税決断を先回りして褒めたたえた。ウォール街など国際金融市場の利害を反映する他の金融中心の米欧メディアも同様だ。
 今の日本には中川さんのような「国士」が見当たらない。それどころか、得体のしれない「国際世論」を重視し、国内世論を無視し、増税を「国際公約」同然とうそぶいて恥じない風潮が言論界や政界に蔓延(まんえん)している。中川さんがもし健在なら、首相にどう助言するだろうか。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

関連掲示
・現代世界の支配構造については、下記の拙稿をご参照下さい。
「現代の眺望と人類の課題」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion09f.htm
 第9~14章

最新の画像もっと見る

コメントを投稿