ほそかわ・かずひこの BLOG

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中国共産党創立100年と世界覇権奪取への「100年マラソン」2

2021-07-25 09:50:22 | 国際関係
 共産中国の国営新聞社、中国新聞社系の合弁会社が発行している在日中国人向けの『東方新報』は、7月11日に中国共産党を賛美する記事を掲載した。在日中国人の約8割が同紙を読んでいるとされる。
 「中国共産党が中国民衆の信頼を得た理由は何だろうか。
 (略)中国共産党創立100周年を祝う大会で、習主席は『中国共産党は第1の百年奮闘目標を実現し、中国の大地に小康社会(ややゆとりのある社会)を全面的に建設し、絶対的貧困の問題を歴史的に解決した』と宣言した。2020年の中国の国内総生産(GDP)は100兆元(約1700兆円)を超え、1人当たりの可処分所得は3万2189元(約55万円)に達し、2010年より倍増する目標を予定通りに達成し、中国は絶対的貧困を完全に解消した。
 民衆は苦しみ、国家は貧しい。これは近代100年余りの中国民衆の最大の心の痛みだった。西洋の政治制度よりも、中国の民衆がまず注目しているのは、満腹になれるかどうか、着るものが買えるかどうか、子供が学校に行けるかどうか、病気になると病院に通えるかどうかだった。中国共産党の社会経済発展における得た成果は、たとえ西側世界であっても見過ごすことはできない。
 中国共産党は第1の『百年目標』の約束を果たし、次なる第2の『百年目標』を目指している。2020年から2035年まで、中国は社会主義近代化を基本的に実現し、2035年から今世紀半ばまでに、中国を富強・民主・文明・調和の美しい社会主義現代化強国にすることだ。これは中国共産党が民衆に描いた青図だ。
 経済面だけでなく政治面でも、中国共産党は長期的な政治的安定を実現した。中国政府は6月25日、『中国新型政党制度』白書を発表した。白書は、中国の政党制度が西側諸国で一般的に行われている多党制とは異なり、中国共産党が指導する多党協力と政治協商制度を実施していることを世界に説明しようとしている。この新型政党制度は中国の伝統文化に根ざし、中国の歴史伝承、文化伝統、経済社会発展の産物だ。
 中国共産党は、世界には各国に普遍的に適用される政党制度はなく、自国の国情に合ったガバナンスの有効性を示す政党制度が良いものだと主張している。
 中国と西洋がそれぞれの価値観を表現する一方で、中国は、自分たちの考えと一致しない強大な中国に対する西側の懸念を認識している。そこで『中国人民はこれまで他国の人民をいじめたり、抑圧したり、奴隷にしたことはなく、過去にも、現在にも、将来にもない』と繰り返し世界に強調している」
 この記事は、中国共産党は第1の『百年目標』の約束を果たし、「次なる第2の『百年目標』として、2020年から2035年まで、中国は社会主義近代化を基本的に実現し、2035年から今世紀半ばまでに、中国を富強・民主・文明・調和の美しい社会主義現代化強国にすることを目指している」と書いている。
 この百年目標の裏には、米国の中国専門家マイケル・ピルズベリーのいう「100年マラソン」という戦略があると言えよう。ピルズベリーは、かつて米中国交回復や米国の関与政策を推し進め、「パンダ・ハガー」と呼ばれる親中派の一人だった。中国を援助して中国が経済的に発展すれば、民主化すると信じていた。だが、1990年代の後半から、徐々にそれが間違いであることに気づき始め、ようやく2013年に自らの間違いを決定的に認識するに至った。その後、自らの反省をもって2015年に『China 2049 秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」』を刊行した。原題は、”The Hundred-year Marathon” (100年マラソン)という。邦題は、中国は2049年までに世界覇権の確立を図る「100年マラソン」戦略を秘密裏に遂行していることを意味する。
 ピルズベリーは、本書で「アメリカの対中戦略は根本的に間違っていた。中国の歴史的野望をつい最近まで見抜けなかった」と告白している。中国共産党は、19世紀半ばから100年にわたり欧米諸国によって支配された屈辱に復讐するために、中華人民共和国建国以来、100年後の2049年には世界の覇権を米国から奪うという野心をもって、100年マラソンを着々と走ってきたという。ピルズベリーは、自分自身が中国の巧みな戦略に騙されてきたと認めたうえで、中国の長期的な戦略を明らかにして、米国と世界に向けて強く警鐘を鳴らしている。
 ピルズベリーによると、「100年マラソン」とは、共産中国のタカ派が、毛沢東以降の指導者たちに吹き込んできた計画である。タカ派の多くは陸海軍の将官や政府の強硬派であり、極端なナショナリスト、中華民族主義者たちである。彼らの計画は、欧米列強によって与えられた「過去100年に及ぶ屈辱に復讐すべく、中国共産党革命100周年にあたる2049年までに、世界の経済・軍事・政治のリーダーの地位をアメリカから奪取する」というものである。2049年は共産中国の建国百年の年だが、中国共産党が「中国を富強・民主・文明・調和の美しい社会主義現代化強国にする」ことを目標としている時期が、今世紀半ばだから、基本的に目標時期は一致していると見ることができる。
 共産中国は2017年(平成29年)の共産党大会で、中華民族の偉大な復興の下に「人類運命共同体」を構築するとして、2035年までに西太平洋の軍事的覇権を握り、2049年の中華人民共和国創設100周年までに世界覇権を握るという方針を決めた。そのために世界最強の軍隊を保有する計画を進めている。この軍事的な目標は、経済的な発展あってのみ可能である。ここで重要なのは、経済発展も、軍が関わる企業が主要な推進力になっているのが中国だということである。
 さて、2049年の中華人民共和国創設100周年までに世界覇権を握るという計画を絶対的な権力者として進めているのが、習近平国家主席である。習近平は主席になる前、共産党書記長に就任して最初の演説で、毛沢東も鄧小平も江沢民も公式の演説では決して述べたことのない「強中国夢」(強い中国になるという夢)という言葉を口にした。彼は人民解放軍の退役軍人で、中央軍事委員会弁公庁秘書だったことがあり、軍のタカ派と密接に結びついている。そして、極端な中華民族主義と共産主義が合体したファシズム的中華共産主義を、彼は強大な軍をバックにして推進しているのである。
 次に、東方新報の記事は、「中国の政党制度が西側諸国で一般的に行われている多党制とは異なり、中国共産党が指導する多党協力と政治協商制度を実施している」と書いているが、共産中国の政治体制は、実質的な一党独裁制である。微弱な政党が複数あるのは、一党独裁ではないように見せかけるためである。人民民主主義を標榜しながら、建国以来、国民による普通選挙が行われたことがない。実態としては専制主義・強権主義・全体主義であり、自由民主主義という意味での民主主義とは、正反対の体制である。
 記事は最後に「中国人民はこれまで他国の人民をいじめたり、抑圧したり、奴隷にしたことはなく、過去にも、現在にも、将来にもない」という言葉を引用しているが、この言葉は、7月1日の党創設百周年の行事で、習近平主席が演説で述べた言葉の主旨と一致する。中国共産党の「百年目標」は、チベット、新彊ウイグル、モンゴル、香港等への抑圧・支配の上に追及されてきたものである。習政権は、2049年を目標に、その抑圧・支配を日本・アジア・世界に広げようとしている。それは中華民族主義、ファシズム的共産主義による世界支配という野望の追求である。
 人類は、自由、民主、人権、宗教等が尊重され、精神的に進化・向上した新しい文明に飛躍できるか、中国共産党がハイテクを使って支配し、人間が道徳的に劣化していく全体主義社会に堕落するか。まさに「昼」と「夜」、光明と暗黒の違いにたとえられるべき、全く異なった未来への分かれ道にある。その帰結の時点を、21世紀の半ば、2050年頃に見定めてよいだろう。最悪の場合、この過程で世界的な核戦争が起こり、人類の大半が死滅するやも知れない。私たちは、嫌がおうでもそういう時代に生きていることを自覚し、自らの生き方を考えねばならないのである。(了)

関連掲示
・拙稿「凄まじい軍拡を続ける中国から日本を守れ」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion12-15.htm

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