ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

教育再生は社会総がかりで8

2007-02-16 08:51:31 | 教育
●社会全体の取り組み

 教育再生会議が対応を求めている第四の領域は、社会全体である。社会全体の対応として、次のような対応を要望している。

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(4)社会全体の対応 -有害情報から子供を守る-
【家庭自身がチェック、フィルタリングの活用、企業等の自主規制の一層の強化】

 テレビ、インターネット、ゲーム、出版物から送り出される不用意な有害情報が子供の心を傷つけて、犯罪を助長させる要因の一つにもなっています。その大きな悪影響を見過ごすことは断じてできません。家庭、メディア、企業、販売業者は、子供を有害情報から守る責任があります。
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 社会全体の対応は、「有害情報から子供を守る」という一点に絞られている。それほどに、テレビ、インターネット、ゲーム、出版物等の情報が、子供たちに深刻な影響を与えているという認識に基づく要望だろう。具体的には、以下のような対応内容を求めている。

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○ 子供が俗悪番組や、性・暴力などの有害情報に接しないよう、各家庭ではテレビの視聴、携帯電話の持たせ方、テレビゲームの遊び方、インターネット利用などについての家庭内のルール作りやフィルタリングの活用などにより、家庭自身で子供が何をしているかチェックする。特に、携帯電話については、フィルタリングを利用することと、親が直接契約の場に立ち会うことを基本とする。
○ 俗悪番組、コミックや成人雑誌などの出版物、ゲームやインターネット上の有害情報が子供に悪影響を与えないよう、特に、メディアやスポンサー企業には、自覚を促す。
有害情報や俗悪な番組に関して意見を通報する窓口(放送倫理・番組向上機構(注)など)やフィルタリングの活用を広く周知して積極的活用を図るとともに、有害情報から子供を守るために国民全体としての運動に早急に取り組む。
※「放送倫理・番組向上機構(略称 BPO)」の視聴者応対専用連絡先は、次のとおり。
TEL 03-5212-7333(平日10:00~12:00、13:00~17:00)
○ 上記に関係する企業や販売業者等は、子供が接することのできる有害情報を社会に氾濫させている当事者の一人であるとの自覚を持ち、子供の教育に悪影響を及ぼすような企業活動の自粛等、自主規制の一層の強化を行うべきである。
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 今日の情報社会では、セックス、ホラー、殺人、政治家の汚職、官僚の過剰接待など、大人社会のことが、直接、洪水のごとく子供に押し寄せてくる。子供は情報をえり分けることができない。マスコミやスポンサーの企業は、そのことに対して責任を負おうとしない。無責任なまま、いいも悪いもごちゃまぜにして販売・発信している。

 テレビについては、暴力的な場面や露骨な性的描写などが盛り込まれた番組を子どもに視聴させない具体的な手立てを考えなければならない。イギリスやフランス等では、子どもに不適当な番組をあらかじめ画面上警告する事前表示が制度化されている。アメリカでは、親が子どもに不適切と判断する番組を見られないようにするVチップをテレビに内臓することが義務付けられている。VはViolenceのV。Vチップは「暴力遮断回路」とでもいった意味である。
 日本は、これらの諸外国に比べ、番組内容がさらにひどいと、海外の人々から驚かれている。性描写・暴力・猟奇。暴力的・破壊的・扇情的内容。大衆の欲望を煽り、それで儲ける産業が大人も子供も心を蝕んでいる。視聴率追求や利益優先の商業主義の害悪である。テレビの番組を制作する方も、スポンサーとなる方も、自分たちの利益ばかりを考えている。果たして自分たちの子供に見せられるものかどうかを考えてみればよい。こうした経済中心、お金中心の社会が、子供の心を荒廃させ、親も教師も手におえない子供たちを生み出していると私は思う。
 それとともに、わが国では、大人と子供も平等という誤った考えが悪しき事態を助長している。大人の文化と子供の文化の境目、区別がない。大人の社会全体に性の道徳や倫理が乱れて、大人の欲望を満たすためのものが世の中のあらゆるところに溢れ、子供たちはそれに接してしまう。コンビニ、レンタル・ショップ、本屋など、子供が出入りする場所に、有害な漫画やビデオやゲームなどが溢れている。親は子供の目に触れさせない、与えないという毅然とした態度が必要である。

 有害情報を規制しようと自治体が条例を厳しくしても、業界側はなかなか自主規制しようとしない。公共の福祉より個人の権利を優先する考え方や、表現の自由や児童の人権を極端に尊重する考え方も、妨げになっている。この社会を変えてゆかなければ、家庭や学校でいくら親・教師が努力しても間に合わない。国民全体が真剣に考え、決断しなければならない。教育再生会議が社会全体の対応として「有害情報から子供を守る」ことを要望していることは、非常に重要なことだと思う。

 次回に続く。

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2 コメント

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Unknown (fuzu-fuzu)
2007-02-17 16:40:19
日本はすぐ表現の自由が出て来ます。そこへ営業の自由が絡む。公序良俗をもっと重視するべきですね。
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>fuzu-fuzuさん (ほそかわ)
2007-02-17 21:21:19
>日本はすぐ表現の自由が出て来ます。そこへ営業の自由が絡む。公序良俗をもっと重視するべきですね。<

 そう思います。根本的には、現行憲法が、個人の自由や権利の擁護に傾いて、自由には責任が、権利には義務が伴うことを軽んじているところに原因があると思います。
 現行憲法に「公共の福祉」という概念はありますが、「公共の福祉」を「個々人の権利を調整し、それら相互の衝突を規制する原理」と規定する宮沢学説が有力です。この考え方は、個人本位・私益優先に偏りすぎています。しかも、ここにいう「公共」は、国家国民の意識が欠けた「国家なき公共」となっています。わが国の社会が、市民社会ではなく、私民社会だといわれるゆえんです。
 こうした憲法のもと、わが国の多くのマスメディアやIT産業、ゲーム産業等の企業は、ひどい商業主義に走っています。視聴率の向上や販売部数の拡大のためなら、何でもやるというような姿勢です。そうした企業は、表現の自由を、「国家公共の利益」を考慮せず、「私企業の利益」の追求のために利用しています。モラルなきもうけ主義です。その弊害・悪影響が、子どもたちに対して、集約的に現れているのだと思います。
 私は、「公序良俗」には、大人のみで想定した社会の「公序良俗」と、子どももいる社会の「公序良俗」という考え方が必要だと思います。現実の社会は、後者です。そのことを踏まえて、私企業の社会的責任を問う必要があると思います。
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