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ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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米国と戦争すれば中国は崩壊する~村井友秀氏

2019-03-30 09:36:25 | 国際関係
 米中関係について、村井友秀氏が産経新聞平成31年3月18日付に書いた記事は、極めて重要なものである。
 村井氏は、米国ワシントン大学国際問題研究所研究員、防衛大学校国際関係学科長等を歴任した国際関係論の専門家で、東アジア安全保障、中国、軍事史の権威である。
 記事は大局的かつ非常に濃密な内容であり、精読に値する。大意を要約すると、次のようになる。
 「米中対立の本質は超大国の地位を維持しようとする米国と、米国の地位に挑戦する中国の世界の覇権をめぐる争いである」
 「中国海軍は宮古海峡やバシー海峡を通らなければ太平洋やインド洋に出ることはできない。米国が強力な海空軍力を動員して、この狭い海峡を封鎖し、中国の海空軍力を(略)東シナ海と南シナ海へ封じ込めた場合(略)中国は貿易の9割を失う」「海上交通路を遮断された状態が1年間続くと、中国のGDPは25~35%減少する」。「中国が苦し紛れに戦争を拡大して核戦争になれば、圧倒的に有利な米国の核攻撃によって共産党政権は確実に崩壊する」
 「中国共産党の統治体制は、国民の支持と国民を強制する暴力装置(軍隊と警察)によって成り立っている」「もし、米中戦争によって軍隊が打撃を受ければ、共産党政権を支える暴力装置が弱体化し、国民の不満を抑えきれなくなる可能性がある」
 「戦争が長引けば、(略)国民に信用されない政権が長期戦を戦い勝つことはできない」。「従って、中国共産党は決定的な敗北を被る前に、米国との戦いには負けていないと言い逃れることができる間に戦争をやめ、米国の要求をのむ道を選ぶだろう」「中国共産党は政権を維持し、米国は世界の覇者の地位を維持して戦争は終わる。また、戦争がない場合はこれが外交交渉の結果になる」

 以下は、村井氏の記事の全文。

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●産経新聞 平成31年3月18日

https://special.sankei.com/f/seiron/article/20190318/0001.html
米国と戦えば中国は崩壊する 東京国際大学教授・村井友秀
2019.3.18

 米中対立の本質は超大国の地位を維持しようとする米国と、米国の地位に挑戦する中国の世界の覇権をめぐる争いである。今後、経済面で表面的に対立を糊塗(こと)することがあるとしても、文化と価値観が異なる米国と中国の間に信頼感は生まれない。
 外交とは「棍棒(こんぼう)を持って静かに話す」ことであり、信頼感のない国家間の外交交渉の結果は戦争の結果に比例する。戦争に勝てない側が外交で勝つことはできない。

≪海上封鎖で経済は窒息する≫
 中国の海は東シナ海と南シナ海だけである。中国海軍は宮古海峡やバシー海峡を通らなければ太平洋やインド洋に出ることはできない。米国が強力な海空軍力を動員して、この狭い海峡を封鎖し、中国の海空軍力を日本、台湾、フィリピンを結ぶ防衛線の西側、すなわち東シナ海と南シナ海へ封じ込めた場合(オフショアコントロール戦略)、西太平洋に展開する米軍が東シナ海や南シナ海に侵入せず、中国軍が米軍の防衛線を突破しようとしなければ米中間に戦闘はなく、中国軍に損害はない。
 中国海軍は東シナ海や南シナ海から出られず、米海軍は中国海軍がいない太平洋とインド洋で中国の海上交通路を遮断する。中国の貿易の9割は海上交通路による。従って中国は貿易の9割を失うことになる。現在中国では国内総生産(GDP)の3割は貿易である(米国は2割)。海上交通路を遮断された状態が1年間続くと、中国のGDPは25~35%減少する。米国も中国や周辺諸国との貿易を失い、GDPは5~10%低下する。第二次世界大戦の敗戦国日本はGDPが52%減少した。
 中国が苦し紛れに戦争を拡大して核戦争になれば、圧倒的に有利な米国の核攻撃によって共産党政権は確実に崩壊する。

≪「冷たい資本主義」が不満高める≫
 このような状況は中国共産党政権にどのような影響を与えるのか。中国共産党の統治体制は、国民の支持と国民を強制する暴力装置(軍隊と警察)によって成り立っている。国民が共産党を支持する理由は、個人の収入を増やしたことによる。1979年に始まった改革開放政策によって、中国では1人当たりGDPが300元(78年)から4万6000元(2014年)に増えた。個人収入が100倍以上になり、共産党に対する国民の支持は高かった。
 しかし、現在、国内総生産の成長率は低下している。07年には14%あった成長率は昨年は6・6%に低下した(米国のシンクタンクによると成長率は4・1%、中国の人民大学教授によれば成長率は1・6%)。経済成長率の低下は社会に不満を持つ失業者を増大させ、共産党に対する支持を減少させる。
 また、経済の資本主義化によって貧富の差が拡大している。貧富の差を測る指標であるジニ係数(全国民が平等ならばゼロ、1人が富を独占していれば1)を見ると、多くの欧米諸国が0・3程度であるのに対して中国は0・5~0・7である。ジニ係数が0・4になれば社会が不安定になり、0・6を超えると暴動が発生するといわれている。本来、全国民が平等であるべき共産主義国家において貧富の差が資本主義国家よりも大きくなれば、共産主義国家の国民の不満は資本主義国家の国民よりも大きくなるだろう。
 現在、中国は米国よりも「冷たい資本主義」国家になったといわれている。現実に中国では市町村など末端の共産党統治機構に対して住民が暴力を振るう事件が多発している(年間20万件の群体性事件)。戦争によって経済がさらに悪化すれば共産党に対する支持も危機的状況になるだろう。

≪軍の弱体化は党の致命傷にも≫
 経済が悪化し国民の支持が低下すれば、共産党は政権を維持するために軍隊や警察といった暴力装置に頼らざるを得なくなる。もし、米中戦争によって軍隊が打撃を受ければ、共産党政権を支える暴力装置が弱体化し、国民の不満を抑えきれなくなる可能性がある。中国共産党にとって最優先の核心的利益は共産党支配の維持であり、共産党政権を支える大黒柱である軍隊が大きく傷つくことは絶対に避けなければならない。
 また、戦争が長引けば、政権に対する国民の信頼度が戦争の勝敗に影響する。中国では「北京愛国、上海出国、広東売国」と言われることがある。最近は1年間に8万人の中国人女性が生まれてくる子供に米国籍を取得させるために米国で出産する。国民に信用されない政権が長期戦を戦い勝つことはできない。
 従って、中国共産党は決定的な敗北を被る前に、米国との戦いには負けていないと言い逃れることができる間に戦争をやめ、米国の要求をのむ道を選ぶだろう。世界の覇者は米国であることを中国が認めれば、米国も中国の面子(めんつ)をそれ以上潰さずに戦争をやめるだろう。中国共産党は政権を維持し、米国は世界の覇者の地位を維持して戦争は終わる。また、戦争がない場合はこれが外交交渉の結果になる。(むらい ともひで)
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