ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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コロナ禍の台湾に日本政府がワクチンを提供

2021-06-08 10:14:27 | 国際関係
 台湾で新型コロナウイルスの感染が5月中旬から急拡大し、新規感染者は300人の以上のペースが連日続いており、まだ収まる気配はない。厳しい水際対策で昨年1年間の感染者を1000人以下に抑え、世界で最も見事に対応してきた台湾が、いきなりピンチに陥った。
 急速な感染拡大に市民の間で動揺が広がっている。病院に患者が大量に押し寄せ、病床と人手、ワクチンが不足し、医療現場は逼迫している。蔡英文政権の支持率が急落している。これに対し、共産中国はワクチンの提供を申し出て、人命を用いて、蔡政権に揺さぶりをかけている。
 最大野党の中国国民党は、政権の対応について「無能」「無策」などと痛烈に批判し、与野党の対立が一層鮮明となっている。北京のワクチン外交と連携して政権批判をしているものだろう。
 フォーカス台湾の5月18日の記事は、次のように書いた。

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台湾、中国のワクチン支援表明に「偽の善意いらない」

 (台北中央社)中国が台湾にワクチンを提供する姿勢を示したのに対し、対中政策を担当する大陸委員会は17日夜、「偽の善意を示す必要はない」とした。また、中国大陸が邪魔さえしなければ「われわれは信頼性がより高いワクチンをより早く国際社会から入手できる」との立場も示した。
 中国の台湾政策を担当する国務院台湾事務弁公室は17日夜、台湾の新型コロナウイルス感染拡大に言及した上で、大陸側は台湾の人々がウイルスに勝つため最大の努力をしたいと表明。「当面の急務は島内の政治的な障害を取り除き、多くの台湾同胞にワクチンを打たせることだ」との考えを示していた。
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 台湾の大手紙・自由時報は、台湾情報機関が得た情報として、習政権が「台湾人の自信をくじけ」などとの指示を出したと伝えた。SNSやメディアを動員し、「中国は防疫に成功し、台湾は失敗した」との宣伝戦を仕掛ける構えだとのことである。
 台湾政府は、ファイザーやビオンテックとワクチン購入の交渉をしていたが、入手できていない。蔡英文総統は5月26日、一部の海外製薬会社からのワクチン購入に関し、中国の介入で今も契約できていないことを明らかにした。中国は、裏では人命を危険にさらす妨害、表では人命を利用した揺さぶっている。悪辣にして卑怯なやり方である。
 台湾政府が入手出来ているのは、英国製アストラゼネカのワクチンである。量は人口2300万人の1%分くらいという。台湾は独自のワクチンを開発中で、7月に独自ワクチンを供給すると蔡総統は言っているものの、治験に必要な期間が足らないと観測されている。
 こうした台湾に対し、わが国の政府は、国内供給用に調達するアストラゼネカのワクチンの一部を提供する方向で検討していると5月28日に報じられた。日本国民への接種は他社製でまかなえる量を確保しており、提供しても国民への影響はない見通しである。日本と台湾は大規模災害などの際に相互に助け合っていることを踏まえ、今回は緊急措置として支援が必要と判断したとのことである。
 東日本大震災では、台湾から日本への義援金が200億円超にのぼった。新型コロナの感染拡大に伴うマスク不足の際には台湾から医療用マスク200万枚が送られた。まさかの時の友こそ、真の友である。日本がコロナ禍に苦しむ台湾を支援するのは、当然である。
 共産中国は、わが国の政府に対してワクチンを政治的利益に利用するなと、圧力をかけて来た。だが、政府は、中国の圧力を跳ね返して、新型コロナウイルスの感染拡大でワクチン確保に苦しむ台湾に対し、国内供給用に調達した英製薬大手アストラゼネカのワクチン約124万回分を提供することを決定した。ワクチンを積んだ輸送機は4日、台湾北部の桃園国際空港に到着した。自由時報は「中国の脅しに直面しながら日本は気概を示した」と見方を示し、台湾人の多くが支援を歓迎している。
 蔡英文総統はフェイスブックで「自由と民主主義という同じ価値観を共有するパートナーからの迅速な支援に感謝する」と表明した。また蔡氏は、今回の支援に尽力した安倍晋三前首相に直接謝意を伝えたとのことである。
 6月4日は天安門事件から32年となる日だった。わが国の政府がこの日に合わせてワクチンを届けたのかどうかは分からない。
 わが国に続いて米国も台湾にワクチンを供与することを決めた。6月6日米上院の超党派議員団が米空軍のC-17で訪台し、蔡英文総務と会談し、台湾に75万回分のワクチンを供与すると表明した。訪台したのは、上院軍事委員会のアジア系退役軍人タミー・ダックワース氏(民主)、元国務次官補ダン・サリバン氏(共和)、上院外交委員会のクリス・クーンズ氏(民主)である。蔡氏は、日本から提供されたワクチンに加え、米国からの供与はコロナとの闘いに大きく貢献するとして謝意を示した。
 ところで、今回のコロナ感染の原因は、中華航空の国際線パイロットが新型コロナに感染し、そこから広がったことが分かっている。台湾出身の評論家・黄文雄氏は、それが原因となっていることを認めつつ、5月初旬に台湾領である金門島に中国人がゴムボートで密航する事件が相次いだことに注目している。ゴムボートにエンジンはついていたものの、台湾海軍の軍人によると、燃料の量から判断して福建省から直接来た可能性は低いと報道されており、台湾近くまで違う船で来て、金門島付近でゴムボートに乗り換えて台湾上陸を狙ったということだろうと黄氏は推測している。さらに、黄氏は、台湾でコロナ感染が拡大するや、中国側が支援を申し出たことについて、点と点が結ばれた先にある「疑惑」を記している。
 一つの可能性は、新型コロナに感染した人間、またはそのウイルスを保持した人間を送り込んで感染を広げるという生物戦だろう。もとが生物兵器であるかどうかに関わらず、共産中国が台湾に対して、このような戦術を用いて超限戦を仕掛けることは、あり得ると私は思う。最も低費用で、甚大な効果を生むことができる戦術である。
 蔡政権の危機は、自由主義の砦・台湾の危機である。日米を始め自由主義諸国は、コロナ禍の台湾への救援を拡大すべきである。
 ここのところ、台湾は水不足も深刻だった。例年のように台風が来ず、降雨量が記録的な少なさである。水不足から電力不足となり、半導体の生産に影響。生産量が減少したため、世界の半導体関連の製造業にも被害が広がった。しかし、6月4日日本からワクチンが届いた日は、待望の雨が降った。それによって、一部地域で実施されていた給水制限が6日に解除となった。天の恵みである。
 負けるな台湾! 頑張れ台湾!

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