今日、大東亜戦争(太平洋戦争)は、日本の侵略戦争だったと考えている人が多くいます。しかし、歴史というものは、そう簡単には言い切れないところがあります。
ノンフィクション作家ジョン・トーランドは、『大日本帝国の興亡』(毎日新聞社)の中で次のように書いています。同書は、ピューリッツアー賞に輝いた名著です。
「日本の満州奪取と北支(註 中国北部)への侵攻に対して、アメリカがさらに激しい言葉を用いて日本を弾劾するようになると、両国の溝はいっそう深まった。……なぜアメリカはモンロー主義の存在が許されるのに、アジアに対して門戸開放の原則を強制しようとするのか? 日本が匪賊の跋扈(ばっこ)する満州に乗り出すことは、アメリカがカリブ海に武力介入するのと、なんら変わらないではないか。……イギリスやオランダが、インドや香港、シンガポールおよび東インド諸島を領有することは、これを完全に認めることができるが、日本が彼らのまねをしようとすれば、罪悪であると糾弾する根拠はどこにあるのか? なぜインディアンに対して術策を弄し、酒を使い、虐殺をして土地を奪ったアメリカ人が、日本人が中国で同じことをしたからといって、指をさすことができるであろうか」
トーランドはここでアーノルド・トインビーの次の言葉を引用しています。
「日本の満州に対する経済進出は、日本が国際社会で存立してゆくのに不可欠であったので、けっして貪欲な行為とはいえない。……国民党に率いられる中国と、ソ連と、太平洋にあった人種偏見の強い英語国民(アメリカ)が日本を圧迫すると、日本の国際的地位は再び危ういものとなった」
戦前のアメリカで、日本について最もよく知っていたといわれる人物が、ヘレン・ミアーズです。ミアーズは日本に滞在したことがあり、実際の日本を知っていました。彼女は、戦後間もなく『アメリカの鏡・日本』(メディアファクトリー)という本を書きました。この本は、マッカーサーによって、発禁処分にされました。わが国の占領期間中は、禁書とされたのです。
この本でミアーズは、戦前の日本がアジア地域で行ったことを、侵略であるとは決めつけていません。日本よりもむしろ欧米列強の方が、よほど大規模な植民地政策や拡張主義、奴隷搾取主義をとっていたと指摘しています。
ミアーズは、「アメリカは日本を裁くほど公正でも潔白でもない」と書いています。そして、「日本の指導部が満州と中国における行動を説明するのに使っている言葉と、今日私たち(アメリカ人)の政策立案者、著名な評論家がアメリカの政策を説明するのに使っている言葉は、まったく同じなのだ」とも。『アメリカの鏡・日本』という題名の含意が伺われましょう。
アメリカは日本を打ち負かしました。しかしその結果、中国は共産化し、ソ連は勢力を拡大してしまいました。戦後、アメリカはソ連を封じ込めようと強力な反共政策を推進しました。その中心となったジョージ・F・ケナンは、それまでのアメリカの対日政策を批判しました。アメリカは戦前、日本に対し、中国や満州における権益を放棄させようと、極めて厳しい要求をしました。ケナンはその点について『アメリカ外交50年』という講演録で、次のように述べています。
「これを字義通りにまた型破りな仕方で適用しようとすれば、それは外人一般が中国における居住および活動を完全に破棄することを、意味するだけだっただろう」「長年にわたって、我々が要求していることが、日本の国内問題の見地からみていかに重要な意義をもっているかについて、我々は考慮を払う事を拒んできた。…我々の要求が特に敏感な部分に触れて、日本人の感情を傷付けたとしても、それは我々にはほとんど影響を持たなかった」「我々は十年一日のごとく、アジア大陸における他の列強なかんずく日本に向かって嫌がらせをした」
彼はこうした米国外交が、日本を戦争に追いやり、共産主義を増強させるはめになったと、米国の政策を批判したのです。
アメリカ人のなかにもこういう意見があることを知ると、大東亜戦争が単純に日本の侵略戦争だったとはいえない、複雑な性格をもっていることがわかるでしょう。
次回に続く。
************* 著書のご案内 ****************
『超宗教の時代の宗教概論』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/d4dac1aadbac9b22a290a449a4adb3a1
『人類を導く日本精神~新しい文明への飛躍』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/cc682724c63c58d608c99ea4ddca44e0
『細川一彦著作集(CD)』(細川一彦事務所)
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ノンフィクション作家ジョン・トーランドは、『大日本帝国の興亡』(毎日新聞社)の中で次のように書いています。同書は、ピューリッツアー賞に輝いた名著です。
「日本の満州奪取と北支(註 中国北部)への侵攻に対して、アメリカがさらに激しい言葉を用いて日本を弾劾するようになると、両国の溝はいっそう深まった。……なぜアメリカはモンロー主義の存在が許されるのに、アジアに対して門戸開放の原則を強制しようとするのか? 日本が匪賊の跋扈(ばっこ)する満州に乗り出すことは、アメリカがカリブ海に武力介入するのと、なんら変わらないではないか。……イギリスやオランダが、インドや香港、シンガポールおよび東インド諸島を領有することは、これを完全に認めることができるが、日本が彼らのまねをしようとすれば、罪悪であると糾弾する根拠はどこにあるのか? なぜインディアンに対して術策を弄し、酒を使い、虐殺をして土地を奪ったアメリカ人が、日本人が中国で同じことをしたからといって、指をさすことができるであろうか」
トーランドはここでアーノルド・トインビーの次の言葉を引用しています。
「日本の満州に対する経済進出は、日本が国際社会で存立してゆくのに不可欠であったので、けっして貪欲な行為とはいえない。……国民党に率いられる中国と、ソ連と、太平洋にあった人種偏見の強い英語国民(アメリカ)が日本を圧迫すると、日本の国際的地位は再び危ういものとなった」
戦前のアメリカで、日本について最もよく知っていたといわれる人物が、ヘレン・ミアーズです。ミアーズは日本に滞在したことがあり、実際の日本を知っていました。彼女は、戦後間もなく『アメリカの鏡・日本』(メディアファクトリー)という本を書きました。この本は、マッカーサーによって、発禁処分にされました。わが国の占領期間中は、禁書とされたのです。
この本でミアーズは、戦前の日本がアジア地域で行ったことを、侵略であるとは決めつけていません。日本よりもむしろ欧米列強の方が、よほど大規模な植民地政策や拡張主義、奴隷搾取主義をとっていたと指摘しています。
ミアーズは、「アメリカは日本を裁くほど公正でも潔白でもない」と書いています。そして、「日本の指導部が満州と中国における行動を説明するのに使っている言葉と、今日私たち(アメリカ人)の政策立案者、著名な評論家がアメリカの政策を説明するのに使っている言葉は、まったく同じなのだ」とも。『アメリカの鏡・日本』という題名の含意が伺われましょう。
アメリカは日本を打ち負かしました。しかしその結果、中国は共産化し、ソ連は勢力を拡大してしまいました。戦後、アメリカはソ連を封じ込めようと強力な反共政策を推進しました。その中心となったジョージ・F・ケナンは、それまでのアメリカの対日政策を批判しました。アメリカは戦前、日本に対し、中国や満州における権益を放棄させようと、極めて厳しい要求をしました。ケナンはその点について『アメリカ外交50年』という講演録で、次のように述べています。
「これを字義通りにまた型破りな仕方で適用しようとすれば、それは外人一般が中国における居住および活動を完全に破棄することを、意味するだけだっただろう」「長年にわたって、我々が要求していることが、日本の国内問題の見地からみていかに重要な意義をもっているかについて、我々は考慮を払う事を拒んできた。…我々の要求が特に敏感な部分に触れて、日本人の感情を傷付けたとしても、それは我々にはほとんど影響を持たなかった」「我々は十年一日のごとく、アジア大陸における他の列強なかんずく日本に向かって嫌がらせをした」
彼はこうした米国外交が、日本を戦争に追いやり、共産主義を増強させるはめになったと、米国の政策を批判したのです。
アメリカ人のなかにもこういう意見があることを知ると、大東亜戦争が単純に日本の侵略戦争だったとはいえない、複雑な性格をもっていることがわかるでしょう。
次回に続く。
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『超宗教の時代の宗教概論』(星雲社)
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