●マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー
マハリシ・マヘーシュ・ヨーギーは、1918年にマディヤ・プラデーシュ州に生まれた。本名はマヘーシュ・プラサード・ヴァルマーという。
イラーハーバード大学で物理学の学位を取った後、ヒマラヤ山脈のウッタルカーシーの洞窟で隠遁生活を行った。その後、1955年に、超越瞑想(transcendental meditation、TM)の指導を開始した。
超越瞑想は、シャンカラ派のブラフマナンダ・サラスワティの教えを受け継ぐものとされ、マントラを心の中で唱える瞑想法の一種である。集中せずに、1日に20分づつ2回実行する。それによって、神経活動を抑え、意識を深みに導く。ストレスの解消、それによる健康増進、能力開発、自己実現等の現世的・実用的な効果を謳い、悟りと世界平和を目的とする。
マヘーシュは、「人は悟りを達成するために聖人になる必要はない」「生命はその本質において至福であり、すべての人間は何物にも縛られない至福の意識を経験することができる」「生きることは神意識と一体になることである」と説いた。超越瞑想によって自己の本性が至福に他ならないことを経験し、神意識に到達し、それを日常生活に貫徹することができると教えた。現代文明は物心の両面が不調和であり、超越瞑想を行うことで、それが完全に調和されて物心両面の幸福が得られるとした。
マヘーシュは、人類の10分の1が超越瞑想を実践すれば、世界に平和と調和を生み出せると考え、1959年カルフォルニアに精神復活運動の法人を設立した。また、1960年代に、ヨーロッパ諸国で講演を行った。すると、超越瞑想は欧米で瞬く間に広まり、マヘーシュはヒッピーたちの尊敬の的となった。1968年にビートルズがインドを訪問し、ヒマラヤ山麓にあるマハリシ・アーシュラムに滞在したことは、世界的なニュースになった。1970年代前半には、超越瞑想を支持する科学者たちが権威ある科学雑誌にその効果を認める論文を寄稿した。これによって超越瞑想が社会的に広く受け入れるようになった。
マヘーシュは、1972年に、「世界計画」と呼ぶ運動を始めた。この運動は、次の7つの目標を掲げる。(1)個人の可能性を十分に開発すること。(2)行政の成果を高めること。(3)思考の教育理念を実現すること。(4)人類を不幸にしているあらゆる行動や犯罪の問題を解決すること。(5)知性ある環境の用い方を最大限に行うこと。(6)個人と家族と社会に充実感をもたらすこと。(7)人類のあらゆる精神的目標を現在の世代において達成することーーである。
1975年に、マヘーシュは「マハリシ効果」について発表し、「悟りの時代の夜明け」を宣言した。TMの団体のサイトによると、マハリシ効果とは「人口の1%の平方根に当たる人数が同時に超越瞑想を実践すると、社会の秩序と調和が激的に増進する相転移という現象が起こり、気候、作物の収穫、人間の寿命、世界平和が著しく向上し、犯罪、事故、疾病、ストレスが明らかに減少し、その地域に平和をもたらすことができる」というものである。
1980年代の日本では、超越瞑想がサラリーマンを中心としたストレス解消法として広まり、ソニー、京セラ等の企業が福利厚生に導入した。米国では、IBM、ゼネラルモーターズ等が瞑想を研修として採用した。
マヘーシュは、ヴェーダに盛られた古代インドの医学、食事療法、建築術、天文学、音楽等を再評価し、これに現代の科学や医学の知見を取り入れた「ヴェーダ科学」を提唱した。マヘーシュは、自らの瞑想法や思想を広めるため、2000年に「世界平和のグローバル・カントリー」という非営利の世界的組織を設立した。また、2001年に、米国アイオア州フェアフィールドに「マハリシ・ヴェーディック・シティ」(ヴェーダ都市)を設立した。これは「ヴェーダの原理に基づいて行政が行われ、自然法によって統治される完全な共同体」(TM団体のサイト)とされる。ヴェーダに基づく有機農法で作物が生産され、ヴェーダに基づく健康管理が行われているという。
マヘーシュは、2008年にオランダで亡くなった。現在、超越瞑想の実践者数は、世界全体のおよそ300万~500万人といわれる。メディア王ルパート・マードック、映画監督ジョージ・ルーカス、俳優クリント・イーストウッド、女優キャメロン・ディアス等の著名人が実践者として知られる。
マヘーシュの超越瞑想は、ヒンドゥー教に伝統的な世俗を離れて厳しい修行生活を送るのではなく、現代人が日常生活で簡単に実践できるものとされる。それが果たして解脱に到達できる道であるかどうかは、大安楽往生の体験報告が多数あるかどうかで判断する必要がある。
次回に続く。
************* 著書のご案内 ****************
『人類を導く日本精神~新しい文明への飛躍』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/cc682724c63c58d608c99ea4ddca44e0
『超宗教の時代の宗教概論』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/d4dac1aadbac9b22a290a449a4adb3a1
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マハリシ・マヘーシュ・ヨーギーは、1918年にマディヤ・プラデーシュ州に生まれた。本名はマヘーシュ・プラサード・ヴァルマーという。
イラーハーバード大学で物理学の学位を取った後、ヒマラヤ山脈のウッタルカーシーの洞窟で隠遁生活を行った。その後、1955年に、超越瞑想(transcendental meditation、TM)の指導を開始した。
超越瞑想は、シャンカラ派のブラフマナンダ・サラスワティの教えを受け継ぐものとされ、マントラを心の中で唱える瞑想法の一種である。集中せずに、1日に20分づつ2回実行する。それによって、神経活動を抑え、意識を深みに導く。ストレスの解消、それによる健康増進、能力開発、自己実現等の現世的・実用的な効果を謳い、悟りと世界平和を目的とする。
マヘーシュは、「人は悟りを達成するために聖人になる必要はない」「生命はその本質において至福であり、すべての人間は何物にも縛られない至福の意識を経験することができる」「生きることは神意識と一体になることである」と説いた。超越瞑想によって自己の本性が至福に他ならないことを経験し、神意識に到達し、それを日常生活に貫徹することができると教えた。現代文明は物心の両面が不調和であり、超越瞑想を行うことで、それが完全に調和されて物心両面の幸福が得られるとした。
マヘーシュは、人類の10分の1が超越瞑想を実践すれば、世界に平和と調和を生み出せると考え、1959年カルフォルニアに精神復活運動の法人を設立した。また、1960年代に、ヨーロッパ諸国で講演を行った。すると、超越瞑想は欧米で瞬く間に広まり、マヘーシュはヒッピーたちの尊敬の的となった。1968年にビートルズがインドを訪問し、ヒマラヤ山麓にあるマハリシ・アーシュラムに滞在したことは、世界的なニュースになった。1970年代前半には、超越瞑想を支持する科学者たちが権威ある科学雑誌にその効果を認める論文を寄稿した。これによって超越瞑想が社会的に広く受け入れるようになった。
マヘーシュは、1972年に、「世界計画」と呼ぶ運動を始めた。この運動は、次の7つの目標を掲げる。(1)個人の可能性を十分に開発すること。(2)行政の成果を高めること。(3)思考の教育理念を実現すること。(4)人類を不幸にしているあらゆる行動や犯罪の問題を解決すること。(5)知性ある環境の用い方を最大限に行うこと。(6)個人と家族と社会に充実感をもたらすこと。(7)人類のあらゆる精神的目標を現在の世代において達成することーーである。
1975年に、マヘーシュは「マハリシ効果」について発表し、「悟りの時代の夜明け」を宣言した。TMの団体のサイトによると、マハリシ効果とは「人口の1%の平方根に当たる人数が同時に超越瞑想を実践すると、社会の秩序と調和が激的に増進する相転移という現象が起こり、気候、作物の収穫、人間の寿命、世界平和が著しく向上し、犯罪、事故、疾病、ストレスが明らかに減少し、その地域に平和をもたらすことができる」というものである。
1980年代の日本では、超越瞑想がサラリーマンを中心としたストレス解消法として広まり、ソニー、京セラ等の企業が福利厚生に導入した。米国では、IBM、ゼネラルモーターズ等が瞑想を研修として採用した。
マヘーシュは、ヴェーダに盛られた古代インドの医学、食事療法、建築術、天文学、音楽等を再評価し、これに現代の科学や医学の知見を取り入れた「ヴェーダ科学」を提唱した。マヘーシュは、自らの瞑想法や思想を広めるため、2000年に「世界平和のグローバル・カントリー」という非営利の世界的組織を設立した。また、2001年に、米国アイオア州フェアフィールドに「マハリシ・ヴェーディック・シティ」(ヴェーダ都市)を設立した。これは「ヴェーダの原理に基づいて行政が行われ、自然法によって統治される完全な共同体」(TM団体のサイト)とされる。ヴェーダに基づく有機農法で作物が生産され、ヴェーダに基づく健康管理が行われているという。
マヘーシュは、2008年にオランダで亡くなった。現在、超越瞑想の実践者数は、世界全体のおよそ300万~500万人といわれる。メディア王ルパート・マードック、映画監督ジョージ・ルーカス、俳優クリント・イーストウッド、女優キャメロン・ディアス等の著名人が実践者として知られる。
マヘーシュの超越瞑想は、ヒンドゥー教に伝統的な世俗を離れて厳しい修行生活を送るのではなく、現代人が日常生活で簡単に実践できるものとされる。それが果たして解脱に到達できる道であるかどうかは、大安楽往生の体験報告が多数あるかどうかで判断する必要がある。
次回に続く。
************* 著書のご案内 ****************
『人類を導く日本精神~新しい文明への飛躍』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/cc682724c63c58d608c99ea4ddca44e0
『超宗教の時代の宗教概論』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/d4dac1aadbac9b22a290a449a4adb3a1
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