ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

人権267~共産中国の人権抑圧

2016-02-14 08:41:24 | 人権
●共産中国の体制と人権の抑圧

 ソ連・東欧の共産主義政権の崩壊によって、冷戦は終焉した。だが、共産主義は、死滅してはいない。今日も、シナ大陸では共産党が支配している
 共産中国は、国連安保理の常任理事国である。国連の発足後、冷戦が終わるまでの約40年間、国連は麻痺状態にあった。この間、最初の大規模な国際紛争となったのが、朝鮮戦争である。当時、ソ連が安保理をボイコットしおり、アメリカは安保理を強行して、朝鮮半島に介入した。アメリカ主導の国連軍が派遣された。国連軍は、1949年(昭和24年)に建国された中華人民共和国の人民解放軍と激突した。当時の常任理事国は中国といっても、中華民国(台湾)だった。中華民国は、国連創設時からの加盟国である。しかし、中華人民共和国が建国されると、蒋介石政権は台湾に移った。1971年(昭和46年)10月に、北京政府が台北政府にかわって代表権を認められた。国連憲章では、今も安保理常任理事国は「中華民国」のままである。中共の加盟、蒋介石政府の脱退後も、「中華民国」を「中華人民共和国」と読み替えることにして、ずっと放置してきたからである。中華人民共和国が国連に加盟を許された時、国連から脱退したのは、厳密には蒋介石政権であって、中華民国そのものではない。しかし、実質的に台湾は国連から追放されたに等しかった。こうして共産中国は、国連のメンバーとなり、かつ拒否権を持つ主要国の一角に座を占めた。その地位にある共産主義の国が人民の自由と権利を抑圧している。
 毛沢東指導下の中国は、ソ連ほど工業化が進んでおらず、社会主義体制というより、アジア・アフリカ・ラテンアメリカにおける軍事政権による開発独裁に近い体制だった。開発独裁は、政府主導の近代化・産業化であり、資本主義化の道と社会主義化の道を選択しうる。中国の場合、毛の時代には、まがりなりにも社会主義経済体制を目指していた。しかし、毛の政策は、大躍進政策や文化大革命等、破壊と混乱を繰り返すばかりで、膨大な犠牲者を出した。また、ほとんど経済成長ができなかった。毛の死後、実権を握った小平は、経済的な停滞を打開すべく、「社会主義市場経済」の導入という政策を掲げた。中国は共産党独裁下で資本主義的な経済発展の道を進んだ。いまや中国はかつてのソ連の地位に取って代わるほどの経済的・軍事的な大国となっている。だが、旧ソ連に似て中国の人権状況は劣悪なままである。
 シナ大陸には、アジア的専制国家の土壌に、マルクス=レーニン主義が移植され、シナの官僚制と共産党の官僚制が融合し、アジア的共産主義の国家が建設された。自由やデモクラシーは認められない。政府は人命を尊重しない。人々の自由と権利は無視される。中国は長い間、間人権問題は「国家主権の範囲内の問題(国内専権事項)」と言ってきた。発展途上国で人権の獲得・拡大が進むと、1991年に「人権白書」を発表するなど人権の擁護を解禁したが、それを集団的努力により達成される人民の生存権に読み替え、主権の優位を強調し続けた。
 小平の跡を継いで、1993年に江沢民が国家主席になると、1997年に国際人権規約のA規約に署名、2001年に批准し、B規約に1998年に署名した。その結果、中国は形の上ではロック=カント的な人間観に立つ人権を認めることになった。これは、ロック=カント的な人間観をブルジョワ的と批判するマルクスの思想とは、異なる対応である。ただし、中国は国家間の権力関係を有利に進めるために、国際人権規約に参加しているだけで、自国内では積極的に人権状況を改善しようとはしていない。共産党の特権集団が富と権力を独占し、彼らに搾取・抑圧されているのが、農民労働者である。とりわけ少数民族や宗教者への弾圧は、激烈である。
 中国のチベット侵攻は、1950年(昭和25年)に始まった。ナチス・ドイツによるユダヤ人虐殺以後最大のジェノサイド(民族大虐殺)が行われてきている。チベット人は仏教徒であり、唯物論的共産主義による宗教弾圧が行われている。国際的に中国の人権弾圧への非難が高まっているが、人権の擁護・普及の世界的な中心であるはずの国連で、中国のチベット問題は、議論らしい議論が行なわれない。中国が安保理常任理事国の一員だからである。2008年(平成20年)4月国連人権理事会で、欧米はチベットの人権問題を取り上げようとした。ところが、中国は内政干渉だと反発し、これにキューバ等の独裁国家が加勢し、議題として取り上げられることもなく、同理事会は会期を終えた。
 中国は、チベット自治区だけでなく、新疆ウイグル自治区でも、弾圧・虐殺を行っている。ウイグル人はイスラーム教徒であり、ここでも宗教弾圧が行われている。さらに、中国では民主化運動家への弾圧、インターネットへの監視・規制、法輪功への弾圧、生体からの臓器取り出し等が行われている。2010年、民主化運動家・劉暁波にノーベル平和賞が贈られると、中国政府は激しく抗議し、劉暁波を事実上の軟禁状態に置いている。
 中国やロシアの人権問題について国連で議論らしい議論がされないのは、これらの国が安保理常任理事国だからである。ロシアにしても中国にしても、人権問題を扱うことを頭から拒否する。これら二国が国連において人権問題で連携すれば、主要5大国は二分する。そのため、安保理では、これまで人権弾圧を非難する本格的な決議や声明は出されていない。こういう現状ゆえ、国連は「人権のとりで」としての存在意義が問われている。国連憲章、世界人権宣言、国際人権規約の思想と、国連の現実は違う。

 次回に続く。