ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

学力回復は、理数より国語から

2007-12-06 12:46:04 | 教育
 昨日書いた経済協力開発機構(OECD)の国際学力調査で、日本の学力低下が顕著に示された。理数系の学力低下に危機感を表す報道が目に付いたが、本当に深刻なのは、読解力の低下である。この点を、本日の産経新聞の「主張」(社説)に当たる。実際、科学が6位、数学が10位であるのに対し、読解力は15位と最も低い。
 私は試験問題を見ていないので、詳細は分からないが、その読解力の問題は、文章だけでなく、グラフや図表など資料から情報を読み取り、自分の考えや意見を述べる力を問うものだという。ということは、理解力・思考力・表現力を測るものだろう。こうした能力は、意味を読み取り、意味を構成し、意味を伝える能力である。単なる機械的な処理の訓練や、知識の集積では、意味の理解・思考・表現は養成されない。

 私は、現代の日本の教育は、この点も著しく弱体化していると思う。その根本には、国語教育の軽視があると思う。私は学力の基礎は、国語力だと思う。人の話を聴き、それを理解し、自分の考えをまとめ、それを語って人に伝える。また人の書いたものを読み、それを理解し、自分の考えをまとめ、それを書いて人に伝える。こういう行為を通じて国語力が養われないと、ものごとを理解し、考え、表現し、伝達することはうまくできない。それとともに、自分について考え、自分というものを理解し、自分を他者に伝えることもうまくできない。すなわち、コミュニケーションと人格形成の基礎となるのが、国語力である。
 数学や理科の教科書にしても、国語で書かれた説明を理解できなければ、数理やもの仕組みを理解し、知識を得ることはできない。数学や理科の試験問題にしても、国語で書かれた問題文を理解できなければ、問題を解くことはできない。教師が数学や理科の説明をするのも、国語で行う。ほかの教科も同じである。国語力が養成されないと、学力は全般的に向上しないのである。
 外国語にしても同じである。外国語の学習において、簡単な日常会話、旅行会話を練習するレベルは外国語だけでやったほうが身につく。しかし、外国語でものを考え、外国語で得た知識をもとに表現しようとすると、自国語の国語力がないと、あるレベルから以上には、力がつかない。母国語でさえ、論理的な思考・表現ができない人が、外国語で同等のことをするのは、難しい。小学校から学校の授業で英語教育をすることになったが、私はその必要はないと思う。まず国語力をしっかり身につけることが先である。国語力を養成しておけば、外国語は後からやっても、力がつく。国語力が身についていないと、外国語だけ習得しようとしても、限界がある。
 OECDの試験結果が明らかにした読解力の弱さを回復・向上するには、国語教育の充実をと強調したい。
 以下は、産経の当該記事。

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●産経新聞

http://sankei.jp.msn.com/life/education/071206/edc0712060249000-n1.htm
【主張】国際学力調査 読解力向上が喫緊の課題
2007.12.6 02:49

 57カ国・地域の15歳を対象にした経済協力開発機構(OECD)の国際学力調査(PISA)で、日本の学力低下がまた裏付けられた。特に読解力不足は深刻な課題だ。
 3年ごとに行われるこの調査は、解答理由を記述式で答えさせる問題が多く、「ゆとり教育」で育てようとした考える力や知識を活用する力が試されている。
 科学、数学、読解力のうち、前回は、数学が世界トップから陥落するなど、ゆとり教育の弊害が目に見える形で表れ、ゆとり見直しにかじを切るきっかけになった。
 日本は高校1年生が対象で、今回は学校現場で学力向上の取り組みが始まるなかで行われた。しかし、前々回、前回からの日本の成績の推移は、科学(2→2→6位)、数学(1→6→10位)、読解力(8→14→15位)と、今回もまた順位を下げた。
 なかでも読解力は韓国、フィンランドなど上位と大きな開きがある。
 PISAの読解力の試験問題は、文章だけでなく、グラフや図表など資料から情報を読み取り、自分の考えや意見を述べる力を問うものだ。こうした力は、数学など他の教科にも欠かせず、低下傾向が憂慮される。
 これまで日本の学校の国語の授業は、小説など文学作品の主人公の気持ちを読み取ることなどに時間が割かれがちで、教師の独り善がりの授業の弊害が指摘されてきた。
 別の学力調査でも、感想を自由に書くことはできているものの、説明文を読んで要旨を相手に伝えるなど、条件に沿って書くことは苦手とする傾向がでている。結果を受け止め、国語力や読解力の向上を目指して指導の改善に取り組んでほしい。
 韓国や台湾が上位に顔を出す一方、学力の高さを誇っていた日本は胸を張れなくなっている。にもかかわらず文科省は、数学、科学は上位グループだとし、危機感が薄い。OECDがこうした調査を実施するのも、学力が経済力や国力に反映されるからだ。
 調査では、科学への興味・関心や楽しさを感じる生徒の割合が他国に比べて低いことも明らかになった。ゲームなどに囲まれ、子供たちの読書量や体験不足が懸念される。考える力を養う教育が真剣に検討されるべきだ。
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