早池峰草紙 大迫地方の伝説から
権現堂山の神話② ①から続きます。
権現堂山の神様は驚いて、そのまま西のほうに走ったが、とうとう夜が明けてしまったので、そこに置いた。それが紫波の南昌山である。
権現堂山の神様は口惜しくて、どうしても大山にしなくてはならないと、今度は天の神様にお願いしないで、真夜中に西根山の山奥に飛んで行って、また山を抱えてきた。
ところが帰る途中で一番鶏の鳴き声が大きく響いたので、驚いて採ってきた山をそこにおいて飛んで帰ってしまった。それが今の石鳥谷町新堀の戸塚森である。
権現堂山の神様は二度まで失敗したが、さらに諦めなかった。あるとき、三人姉妹の神様が集まった時に権現堂山の神様は
「わたしたち三人のうち、誰かの枕元に蓮華の花を咲かせてくださるように、天の神様にお願いして、眠っている間に枕元に咲いた蓮華の花を持って行ったものが、早池峰山の主になることにしましょう」 と言い出した。
そこで三人の神様は、めいめい天の神様にお祈りして眠った。
権現堂山の神様がふと目を覚ましてみると、末の妹の枕元に蓮華の花が咲いていた。二人の妹はよく眠っていて、それを知らない様子である。そこで、そっとその花を取って、「わたしの枕元に咲きました」といって、とうとう早池峰山の主となった。
そのため、早池峰山の神様は、一生一度はどんな無理な願望もかなえてくれる神様であるという。
(この話は姉が妹を出し抜いて早池峰山の神になる伝説であるが、ほかの地域に伝わる早池峰山姉妹伝説は、すべて姉の枕元(胸)に咲いた蓮華の花を、ずる賢い妹が取って早池峰山の神になるという構成になっている)
写真は①②とも、晩秋の晴れた朝、新花巻ふきんから
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