新花巻駅前の古民家「熊谷家」は今、茅葺き屋根の葺き替え工事中。
工事が始まった頃には仕事の様子が見えたが、そのあとは
萱を積んだ車が出入りするから、工事は進んでいるようだが覆われたシートで中は見えない。
昔、「ふきぎゃ」と言った。大きな茅葺き屋根の葺き替え工事が記憶に残る。
手伝いにと、それぞれの家で保管していた萱の束を背負って集まる。
手伝いを受付た後に、今度は労力の手伝い、怪我は自分持ちで無報酬、屋根葺き職人の手元や、萱を運んだり、片付けたり。更に親類や身内となると米、野菜、醤油、 豆腐の類までお手伝い。
大勢の昼、夕食はにぎやかになる。
板を並べた上に簡単なお膳が、5、60人分、加えて近所の子供もいっぱい集まり、一日の仕事で黒くなった顔に、どぶろくをしたたかにいただき、勝手の手伝いの母さん方も混じって大賑わい。
地域の大きな楽しみでもあったと思う。
葺き替えは家の仕事と言うより地域の事業だったように思う。
葺き替え作業が、一年に集中しないように長老たちが順番を考え、段取りを決めた事だろう。
知恵、資材と労力は出し合って屋根替えをした、地域の人たち、先人の知恵には驚く。
現代の「ふきぎゃ」葺き替えは数千万円もかかるらしい。
20年ほど前だろうか、同じ熊谷家の葺き替えの終わった頃、真新しい萱が美しい。
その頃までは地元にも萱葺き職人が残っていた。