数人の著者による実例集だが
編者の友原嘉彦氏の「まえがき」で早くも首肯。
「本書は観光についてまったく新しい視点で書かれました。
一言で申し上げれば
『クリエイティブな人が観光資源』だということです。
景色が美しいとか、料理が美味しい・インスタ映えするだとか、
そういうことは二の次です。
『おもしろい人に会いに行く旅』の研究です。
(中略)
地域に『いる人』を挙げ、その人が観光資源となる。
その人に会いたい個人が来る、通う。
そうした内外の個人の関係を重視します」
もうこの一節だけで100%アグリーだ。
現在私は花巻市の移住ガイドブックとして
電子ブック形式で「花巻ひと図鑑」を作り、毎年更新している。
「ひと図鑑」にした理由はこの「まえがき」のとおりだ。
(本書は観光で「花巻ひと図鑑」は移住が目的だが
基本的に「人を惹きつけるのは人」というコンセプトは同じだ)
まったく知らない、それまであまり興味がなかったまちでも
そこに会いたい人、興味ある人がいれば行ってみたくなる。
これは現在進行形のプレーヤーでもいいし、過去の人でもいい。
例えば花巻は宮沢賢治が生まれ育ったまちとして知られるが
賢治さんが歩いた道、賢治さんが感じた風を求めて
毎年たくさんの観光客が訪れる。
それもまた「クリテイィブツーリズム」のひとつだろう。
本書でいくつか紹介されている事例はどれも興味深いが
中でも最も興味深く読んだのは
「第6章 下関市におけるゲストハウスの新展開」だった。
サブタイトルとして
「クリエイティブツーリズムのポテンシャルを探る」
と題され、クリエイティブクラスと称されるプレーヤーたちに
サードエリアを提供しているという事例。
もしかしたら今花巻もその途上にあるのではないか?
高校生、大学生たちや20代、30台を中心に、
ここ数年で顕著となってきた花巻のポテンシャルを活かしつつ
本書の事例から学ぶことにより
現在の方向性をさらに推し進めることができれば
もっとおもしろいまちになって行きそうな気がする。
元々花巻は観光資源をありすぎるほどたくさん持っている。
ただそれらがマネジメントされることなく
ネットワークを作ることなくバラバラにプロモートされている。
この新しい波を使ってうまくマネジメントできれば
観光も、関係人口増も、自然に図っていけるようになると思う。
「クリエイティブツーリズム〜『あの人』に会いに行く旅」
友原嘉彦:編・著 古今書院
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