風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

「浅草キッド」

2021-12-17 | 映画・芝居・TV

物事にはすべからく表と裏がある。
最新のファッションと化粧品の香り漂う百貨店にもバックヤードが
眩いほどのスポットライトが当たるテレビのスタジオも
セットの裏側に回るとベニヤ板や小道具などが剥き出しだ。
きらびやかなステージも、そこを降りると雑多な楽屋や現実がある。
かっこいい技や芸も、身に付けるまでの努力や苦労がある。
颯爽とスーツを着こなし、ハットを被って街を闊歩するスターも
家に帰ると木賃アパートだったりするのだ。

NETFLIX配信のこの作品は
北野武さんが下積み時代からスタートなった今に至るまで
師匠と仰いだ深見千三郎さんとの師弟の物語。
原作は武さんご自身だが、脚本と監督は劇団ひとりさんだ。
とにかく深見役の大泉洋さんがはまり役。
この人以外には考えられないキャスティングだろう。
驚いたのは武さん役の柳楽優弥さん。
若い頃の武さんが完全に乗り移っている。
ストリップの踊り子役の門脇麦さんの健気な姿もいい。
深見の奥さんで踊り子役の鈴木保奈美さんも。
特訓したという大泉さんと柳楽さんのタップダンスも見事だったな。
劇団ひとりさんの脚本は、とにかくセリフ回しが素晴らしい。
含みのあるセリフのやり取りが泣かせるのだ。

泣いたよ。
特に後半はただただ泣けた。
深見師匠と武さんのやり取りがとにかく泣かせる。
何度でもみたい作品だ。

テレビドラマはスポンサーの意向が強く反映されるし
一般家庭に届けるという意味ではそう過激な描写もできない。
映画はある意味ギャンブルだし、
配給会社がつかなければ資金集めにも苦労する。
でもweb配信ドラマはサブスクではじめから予算が見えているし
見たくない人は見なきゃいいから、多少過激な描写もできる。
だから「全裸監督」のような作品も生み出せるわけだ。
これからはNETFLIXなどによる製作ドラマが面白いかもしれない。
コメント
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