風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

黒潮

2018-02-26 | 映画・芝居・TV


NHK BS3で放送されている新日本風土記が好きだ。
地域に昔から残っている伝統文化を取り上げる
「日本再発見」の番組。
先日の朝の再放送は「黒潮」だったのだが、
世界を構築するスケールの大きさ、
綿密に計算されているかのような連鎖に目が釘付けとなった。

地球の自転の関係でハワイからポリネシアに吹く強い風が
フィリピン沖に向かう暖かい海流となり、
赤道付近でさらに温められ、フィリピンの島を沿うように北上。
台湾、沖縄から鹿児島、宮崎をかすめて四国沖へ。
紀伊半島からは少しずつ日本から遠ざかりながら北東へ。
そんな、世界最大級の海流が黒潮とのこと。

暖かい海水がさらに夏の日差しに温められ、
上昇気流を生んで次々に積乱雲をなり、
日本の山や森に雨となって降り注ぐ。
堆積した落ち葉や微生物、菌類によってミネラルを含んだ水は
また集まって川となり、海へと注ぐ。
海が雨を降らせることによって
自分自身の栄養分を補給しているかのような仕組みがすごい。
そしてそのミネラルを求めてプランクトンが集まり
プランクトンを主食とする小魚が集まり
小魚を食べるカツオなどの大きな魚が群れを作る。
誰がシナリオを書いたのか、このメカニズムがすごい。

もうひとつ興味深い話があった。
紀伊半島では大昔から
遠い海の向こうに極楽浄土があると信じられてきたという。
あれ?似たような話を聞いたことがあるぞ。
沖縄では遠い海の向こうに
ニライカナイという神の国があると信じられてきたよね?
黒潮が流れる地に同じような伝説が残る。
しかもそれは遠い海の向こうだという。
それって、南から黒潮に乗ってやってきた祖先の記憶?
懐かしい故郷を思う気持ちが代々伝えられてきたんじゃないの?

地球の動きから黒潮の恵みまでの横軸に、
遠い祖先の記憶が今に生きている縦軸の文化が混じり合い
とてもスケールの大きな物語となっている番組だった。
人の営み、自然の営み、地球の営みはすごい。
こんなたくさんの意味あることのひとつが欠けただけでも
おそらくすべてのことに影響するのだな。
果たして人は様々な物を壊し、自分の都合に合わせて
新しいものを作り続けて良いのだろうか。
そんなことを再認識させられる番組。
コメント
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