世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

狙ったわけではないのですが、訪れた美山は雪をかぶった茅葺の農家が凛とした風景を作っていました

2009-08-09 10:26:42 | 日本の町並み
 怖い地名とは裏腹に、のびやかな農村風景が広がっていたのが長野県白馬村の青鬼集落ですが、この青鬼集落では維持が大変なためにトタン葺きとなって無くなってしまった茅葺の農家が数多く残されている集落の一つが京都の美山です。今回は京都市の北北西30kmほどの山里の美山地区を紹介します。

 美山町は、2006年に京都府の中央部にある4町が合併してできた南丹市の北部にあります。ただ、市といっても廻りは山ばかりで、山陰本線の園部あたりが開けているくらいでしょうか。美山を公共輸送機関を使って訪問するのは、かなり大変です。早朝の6時台のバスか列車に乗らないと、その後は現地到着が午後になってしまい、その日のうちに戻ってこれなくなります。かといって、時間がかかるのかというと、2時間程度なので、さほどではありません。要は、公共の足である市営のバスがほとんど走っていないのです。京都からのアクセスは2種類あり、JRバスで周山街道を北に行き、市営バスなどを乗り継ぐルートと、山陰線で園部まで行って、駅前からの市営バスに乗り継ぐルートです。距離的には山陰線ルートですと三角形の二辺を廻る感じで若干不利ですが、レールの上を走る列車が、市街地を抜けていくバスよりスピードが出るようで、遠回りの割には、所要時間はあまり変わりません。

 京都の市街から30kmほどの距離なのですが、むしろ日本海側の福井県の小浜に近く、雪も多いようです。茅葺の里に積もった雪景色を撮影のために、多くのカメラマンが訪れるそうですが、このところの暖冬でめっきり雪が減り、2月に開催される雪祭りも雪が無くって中止にと言うこともあるそうです。ところが、何が幸いをしたのか、筆者が訪問したときには、前の夜から降りだした雪で、あたり一面の銀世界でした。

不意を突かれて間に合わなかったのか、カメラマンの姿どころか、人影そのものもほとんど見かけず、静まりかえった風景は、ちょっと神々しくもありました。

真っ白の巨大な屋根の連なりも迫力がありますが、周りの山々の杉木立に降り積もった雪も日本画の水墨画を見るような風景です。

このあたりは、周山街道でつながる京都の北山杉の植林の流れなのでしょうか、広葉樹林とは違い、植樹されて規則的に並んだ幹とその上の三角形の樹形が幾何学的な美しさです。

 集落の中には、農家を移築した資料館があり、

民具などが展示されています。

この資料館は一度火災に遭って再建されたそうですが、五右衛門風呂とはちょっと構造の違うお風呂や、

茅葺屋根の裏側の様子なども見ることができて、面白い施設です。他の季節に訪れると印象も違ったのかもしれませんが、訪れる人も多くなく、観光のための施設もあまりなく、昔ながらの村落がそこにあるという状況が、好ましい印象でした。刻印された地名だけが違って何処ででも買える土産が並ぶ観光地が多い日本では、少数派なのかもしれません。

 周山街道は、京都と若狭(小浜)を結び、日本海で取れた鯖を運んだ道の一つです。もちろん人力で運んだわけなので、丸一日ほどかかったのでしょうが、京都に着く頃には、一塩をした鯖がちょうど食べごろにになっていたそうです。京料理として伝統の料理がもてはやされますが、地元で取れるものは京野菜くらいで、大部分の食材は山越え海越えで運ばれたもののように思います。当然鮮度は落ちるわけで、この鮮度の落ちた食材に、いろいろと手を加え、季節感も盛り込んで美味しく食べるのが京料理なのかもしれません。ところで、今日の食材は、運送や保存の技術が進み、途方も無い遠くのものでも、新鮮な状態で手に入ります。温度や湿度や日照時間をコンピュータ管理された、ビニールハウスからは、季節に関係なく果物や野菜が出荷されてきます。制約のある食材に手を加えて料理に仕立てるのが文明でしょうか、それとも季節を問わずに食材を提供できるようにすることが文明なのでしょうか。


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