世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

松方幸次郎ゆかりの和田岬周辺には歴史を感じる建物に混じって神社仏閣もたくさん

2015-11-08 08:00:00 | 日本の町並み
 上野公園一帯は、寛永寺の遺構や古い町並み、それに博物館、美術館とてんこ盛りのエリアでした。上野駅に近い西洋美術館は、途切れることなく特別展が開催されて、いつも入場待ちの行列を見かけます。特別展ばかりが注目されますが、この美術館の基本は松方コレクションで、いつ見ても飽きない作品がたくさんそろっています。このコレクションは松方幸次郎が第一次世界大戦後にヨーロッパで収集したものですが、この松方幸次郎の資金の源が初代社長に就任した川崎造船所です。今回は、川崎造船所が産声を上げた神戸の和田岬一帯を紹介します。

 
 
 
 和田岬は、神戸の中心街の西側に南に向かって突き出している岬で、港の歴史としては現在の神戸港より古いのです。神戸の福原に都を築いた平清盛が、現在の兵庫港近くに大和田泊を作り、日明貿易の基地としたのが始まりです。兵庫港から少し内部に入った切戸町には、清盛塚があり十三重の石塔とならんで清盛の銅像が遠くをにらんでいます。ところが、そこから新川運河沿いに北に行った橋の上には清盛くんという別の像が立っています。平成17年に作られたもので、清盛塚の像とは製作意図が違うようですが、清盛の違った面を見直すきっかけ作りいいかもしれません。この新川運河沿いには、ウッドデッキでできたキャナルウォークがあり、そのそばには兵庫城の石碑もあります。お城の面影はおろか、初代の兵庫県庁の面影も完全に町並みに飲み込まれてしまっています。

 
 
 清盛くんのある橋を渡り、歩いていくと、地下鉄が走る広い通りにぶつかり北に曲がり再び運河を渡ったところに、レトロなビルが2棟残っています。一つは、通りに面した石川本社のレンガのビルで三菱倉庫の兵庫出張所として建てられたもの。もうひとつは、海岸に面した場所で、加藤海運のモルタルの角の取れた丸こいビルで、どちらも現役で使われています。新川運河から分岐する兵庫運河を南西に行くと、また違ったレトロがあります。一つは、富士通テンの建物で、前身の神戸工業時代の本社ビルで、こちらも入り口上部の曲線が温かみのある味を出しています。もう一方は、すぐ近くの川崎重工の建物の外壁です。塀と言われていますが、窓などがあるので、建物の外壁のようで、古ぼけたレンガが自然のモザイク模様となり、こちらも温かみを感じさせます。

 この川崎重工を生んだのが、松方幸次郎の川崎造船所で、現在も川崎重工の造船部門として兵庫港の北よりにドックが並び、時折は潜水艦が停泊しています。この川崎重工とは兵庫港を挟んで南にあるのが三菱重工の造船部門で、神戸の二大造船業です。

 
 三菱重工の正面に、JRの看板があって、これが兵庫駅から伸びてくる和田岬線の終点の和田岬駅です。この和田岬線は、駅周辺の工場群の通勤客を運ぶために引かれた線で、1駅しかない盲腸線ですが堂々の黒字路線です。ただし、通勤客に絞ったダイヤが組まれていて、休日は朝夕2本、平日も昼間は一切電車が来ません。この駅の地下に神戸市営地下鉄の和田岬駅があります。こちらは、かつて走っていた市電の役割なので、土日も日中も電車は走っていますが、通勤時間やスタジアム神戸でサッカーの試合がある時以外は、いつ乗ってもガラガラで、コスト意識の低い公営企業の需要予測のいい加減さを証明しています。JRの和田岬線があるからといってますが、市外からの人は、初乗りを2回、それも料金の高い料金を払って乗る人は少ないでしょう。

 
 
 
 和田岬駅の近くに初詣でたくさんの人出があるのが和田神社で、入り口のえとの図柄の幕が目を引きます。この神社の初詣の記念品は、境内にある弁財天をモティーフに、いろんなものを持たせた人形です。和田神社の手前には、神宮皇后ゆかりの三石遺跡のある三石神社があり、こちらは船舶関係の方のお参りが多いようです。この神社以外にも、近くには神社仏閣が多く、十日恵比寿の時には大混雑をする恵比寿神社や日本三大大仏の一つの兵庫大仏などがあります。兵庫大仏は、明治時代に作られたのですが、戦時の金属供出で壊され、平成3年にようやく再建されたものです。

 学生時代まで住んでいた神戸では、地元の神戸工業(テン)が製造する真空管が安く手に入ったの購入したものです。これが、価格の高いT社やN社などのものより雑音が少なくって、性能の良いアンプを作るのに好適でした。真空管は過去の技術になってしまいましたが、安くて性能の良い製品の伝統は、大企業の子会社になっても生きているのでしょうか。海外では、まったく分野の異なる企業が、金とMBAの力で技術力のある会社をM&Aで買収するのが常套化しています。金にしか価値を感じない一部の人にとってはいいのでしょうが、安くて品質の良い製品を期待する小市民にとっては迷惑ですね。


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