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因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

TPN plays&players Vol.2『黄色い月/宮殿のモンスター』

2012-07-13 | 舞台

*デイヴィッド・グレッグ作 中山夏織翻訳/芸術監督 公式サイトはこちら 調布市せんがわ劇場 16日まで
『黄色い月 レイラとリーのバラッド』巣山賢太郎演出 
『宮殿のモンスター』松本純一演出
 TPNプレイズ&プレイヤーズは、日本では上演される機会の少ない海外の優れた戯曲を、俳優のアンサンブルに焦点をあててシンプルに上演することを主な目的に2011年活動を始めたプロデューサーたちのチームとのこと。今回のような作品上演だけでなく、演劇教育、国際共同制作の推進、他領域とのコラボレーションなど、さまざまな活動を行う。

 2作品を通して、出演者は石田博英、高山佳音里、西村俊彦、備本よしかの4人のみだ。一人の劇作家のふたつの作品を、同じキャスト、同じ空間で交互上演する試みである。客席は対面式になっており、俳優は『黄色い月』は椅子ひとつ、『宮殿~』では眼鏡とマイクくらいしか手にしない。作り手もみる側も逃げ場のない空間でグレッグの作品世界と対峙することになる。

 『黄色い月』については、3月に上演されたオフィスコットーネプロデュースの舞台が記憶に新しい。すでにみたことがあり、しかもその印象が強烈である場合、2度めの観劇はいろいろな面でむずかしい。往々にして翻訳、演出、俳優の演技すべてを以前の舞台を比較することに終始してしまうことがあるからだ。前回の舞台すべて記憶しているはずはないのに、たったひとつのことばに違和感を覚えたために、そこから先を楽しめないこともありうる。

 違和感を覚えたのは翻訳のことばのひとつひとつではなく、演出全般であった。
 本作は登場人物が自分の台詞や独白だけでなく、ト書きや小説でいうと地の文らしきものも発語すること、しかも戯曲にはどの俳優がどのことばを発語するという指定がいっさいないのが大きな特徴である。どの人物がどのように語るかによって劇世界の空気が変わることになる。

 大変残念だが、今回の上演を新鮮な気持ちで受けとめることはできなかった。『宮殿の~』は初見であるが、やはり同様の印象をもった。
 具体的にどの場面のどの演出がどのように・・・と比較検討することはあまり有益と思われないので、その点についての記述はここで留める。
 同じ戯曲が作り方によって変容すること、その体験を通してあらためて戯曲と上演、客席との関連を考えることが目的であったから、その点で今回の観劇が自分にとって必要なものであり、目的が達せられたことは感謝であった。

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