因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

青年団リンク 二騎の会『F』

2010-02-05 | 舞台

*宮森さつき作 木崎友紀子演出 公式サイトはこちら(1)こまばアゴラ劇場 7日まで
 今年最初のアゴラ劇場行きとなった。大変に寒い夜である。
「二人芝居がやりたい、という素朴な衝動で、木崎さんに演出をお願いし、宮森さんに執筆をお願いし、多田くんに共演をお願いしました。」と当日リーフレットに端田新菜のあいさつ文が掲載されている。端田がプロデューサー的役割を果たして実現した公演であるということだろう。
 配役表にAと書かれた女(端田)は不治の病に冒されているが、(おそらく)新薬の治験のために自分のからだを提供し、かなりの報酬を得たらしい。その報酬によってアンドロイドを購入し、身の回りの世話はじめ一切をそれに委ねる暮らしを手に入れた。そのアンドロイドがBと書かれた男(多田)である。
・・・と物語の外枠を記すと、いかにも近未来の話のようだが、目の前にあるのは生身の男女(男はロボットなのだが)が四季の移ろいのなかで、命の終焉に向かって過ごす瑞々しいあれこれである。

 女は別の方法で治療する可能性があるにも関わらず、ひたすら同じ薬を飲み続ける契約で報酬を得ているらしく、はしゃいだりしていてもどこか捨てばちで緩やかな自殺を試みているようにみえる。「あっち側 こっち側」という台詞があり、今より社会の経済的格差が大きくなっていることを匂わせる。

 プロデュース、戯曲、演出を女性が行い、そこに選ばれた多田淳之介のアンドロイドは、人間よりも細やかで愛情深く女に接する。機械的な言いなりではなく、微熱があるのに浴衣を着て花火をしたいと女が我がままを言うときには不機嫌にもなる。しかしそれは「お前の利益を守ることが俺の義務」というアンドロイドの使命によるものだ。女性の願望や理想を一身に集めたごとき役柄だが、多田は実に自然で、「作っている」という感じがしない。ビジネスで雇われた存在なのに、女とのやりとりは恋人同様に温かで楽しげだ。ときおりエロティックな場面もあって、劇場ぜんたいが息を詰めたように静まって見入ってしまうこともあり。

 あさってまで公演があるのであまり詳しいことを書けないのだが、このどうにも書きにくい気持ちの最大の理由は、多田淳之介にすっかり魅了されてしまったせいではないか。端正で涼やか、飄々と自然に舞台に立っている。女に浴衣を着せてやる仕草が単なる手順ではなく、相手への優しさがあふれている(と見えてしまう)さま、「ちいさい秋みつけた」と歌う女に素直に喜び拍手を贈るところ。死期が近づいた女に喜んでほしくて、クリスマスツリーを飾りながらはしゃいだりずっこけたりする様子に、ぼぉっと見入ってしまう。これではまったくの白旗、降参で劇評の体をなしていないわけで、しかしこれが現時点の自分の偽らざる印象なのだった。

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