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因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

人形劇団ひとみ座 『赤い蝋燭と人魚』

2016-02-06 | 舞台

*同時上演 『野ばら・月夜とめがね』 小川未明原作 伊東史朗脚本・演出 公式サイトはこちら 県民共済みらいホール(横浜・桜木町)2月6,7日 
 開演の際、「文化庁委託事業 平成27年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業、児童青少年演劇、新進芸術家育成公演」等々まで、きっちり長々とアナウンスされたのには戸惑った。長すぎて観劇前の高揚感が萎える気もするが、当日パンフレットの挨拶文を読むと、今回は若い人形遣いが「新進芸術家」として何人も抜擢され、朗読を行う俳優座の岩崎加根子と共演の機会を得たことも相まって、今後の活動に対して非常に期待されているとのこと。
 気を取り直して、1本め『月夜とめがね』の開幕である。

 人形劇を見るのは何年ぶりだろう。これまで江戸糸あやつり人形結城座の『マクベス』や『リチャード三世』などを見たことはあるが、すっかり足が遠のいている。以前から知己に勧められていたこともあり、今回ようやく1948年に創立された人形劇の老舗劇団・ひとみ座の観客デヴューとなった。

 圧巻は3本めの『赤い蝋燭と人魚』である。海のなかを泳ぐ人魚、嵐に猛り狂う海など、さまざまに創意工夫が凝らされており、これが大変おもしろい。人形劇の劇世界は繊細であると同時に大胆だ。人形には目玉の部分に細工があり、見開いたり閉じたりすることで表情の変化を見せることのできるものもあるが、人間の俳優ほどの変化を作ることは困難であろう。まして『赤い~』に登場する人形は和紙で作られている。一見のっぺらぼうだ。にもかかわらず、「人形が無表情だ」とは決して思わなかったのである。喜怒哀楽はもちろんのこと、そこに 収まりきれない、もっと複雑で微妙な心の動きが伝わってくる。

 人間のエゴイズムが人魚の思いを踏みにじる残酷。海は穏やかで優しいときもあれば、魔物のように荒れるときもある。地上で起こることには関わりなく、いや人間のあれこれを知っていてさまざまな顔を見せるのか。

 またひとつ、魅力的な劇世界を知ったこと、ひとみ座に出会えたことは、大変嬉しい。からだがいくつあっても足りないが、心に覚え、次に観劇する機会をぜひ作りたい。

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