*堀川炎脚本・演出 劇団公式サイトはこちら シアタートラム 22日で終了
2008年1月旗揚げしたカンパニーの特徴は「踊る大人の絵本」とのこと。
宮澤賢治の『銀河鉄道の夜』をベースにした本作も、舞台美術、照明、衣裳はじめ、俳優の動きも含めて、なるほど絵本のページを次々にめくるような作りである。
負けん気が強く、同級生ともけんかばかりの少女しおりには、あかり職人の無口な父がいる、母は不在だ。祭りの日、あかりは父親の飲む牛乳を買うためにしぶしぶ隣町へ向かう。
彼女が乗った列車は時空を行き来する光速列車だった。
そこで見知らぬ人や懐かしい人との出会いと別れをめまぐるしく体験する80分の物語。
・・・というのがおよその流れであるらしい。というのが前方席であったにも関わらず、開幕してしばらく、俳優の声が反響するためか台詞がよく聞き取れず、舞台の勢いに乗れないままとうとう終幕まで集中できなかったのである。
舞台は3つのパーツに分かれており、それらのあいだを人々が行き来する。人々のなかにしおりは若き日の母を見、しおりと仲の良い男の子は成長して過去を振り返る・・・という流れもいまとなっては正確かどうか、心もとないありさまである。
『銀河鉄道の夜』をベースにした作品は枚挙にいとまがなく、当ぶろぐの記事では(1,2,3)あたり。賢治の作品に心酔し、宝物のように大切に思う心あればこそ、こうして次々と舞台化されてゆくのだろう。どれが正しい、違うという一元的な見方は避けたい。
ただ「しっくりしない」という感覚があるものについては、やはりじゅうぶんに楽しめないことは確かである。
ベースに原作がある舞台の場合、月並みな言い方だが原作に作り手のオリジナリティーをどのように反映させるかがみどころになる。その結果、「これが自分たちの作る舞台だ」という確固たる芯が感じ取れるものであれば、それが原作への溢れるような愛と憧れであっても、原作を逆手にとった思いもよらない世界であっても、たとえ原作を(よい意味で)一種の口実にして自己の劇世界へと巧妙に転換したものであっても構わないのではないか。
今回の舞台は、その芯がどこにあるのかがつかめなかったのが残念であった。
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