因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

NHK大河ドラマ『天地人』:三成最期

2009-09-27 | テレビドラマ
 石田三成について、自分の最初の記憶は71年放送のNHK大河ドラマ『春の坂道』の中村敦夫である。汚れて疲れきったみじめな姿で引き出され、人々の憎しみや嘲笑を浴びながら斬首刑に処せられる場面が子ども心に強烈に焼きついて未だに忘れられない。ただただ恐ろしく、そこだけ切り取ったように覚えていて、大学生のときだったか友だち数人と「中村敦夫の三成はすごかった」という話題になり、自分だけではなかったのだと嬉しかった。中村敦夫の石田三成の、どこがどうすごかったのか。それを詳細に言い表すことは当時も今も出来ないが、『天地人』で小栗旬演じる石田三成に対していささか過剰な思い入れをしてしまうのは、幼いころの「三成体験」の記憶を何らかの「記録」として残しておきたかったからかもしれない。小栗旬の石田三成が、今夜最期の日を迎えた。
 小栗旬の三成はこのところ主役の直江兼続(妻夫木聡)を凌いでおり(や、これも自分の思い入れ過多か?)、囚われて罪人となり、尾羽打ち枯らしてもなお誇り高く、ぞくぞくするほど美しい。今夜の福島正則(石原良純)、小早川秀秋(上地雄輔)とのやりとりはどちらもいい場面であったし、これらが史実かどうかは別として、死にゆく三成に少しでも温かな思いをしてほしい、本音を言わせてやりたいというこちらの気持ちに応えてくれるものであった。実際のところ直江兼続とドラマで描かれているほどの交わりがあったのか疑問を呈する向きもあるだろうが、他者が(特に女性が)たやすく入り込めない男同士の友情は胸が締めつけられるほど美しく、エロティックである。これと似たような思いは『白い巨塔』の財前五郎(唐沢寿明)と里見修二(江口洋介)にも抱いたことがあった。

 小栗旬の石田三成は自分の心に確かな手応えをもって長く残るだろう。三成を見送って少々抜け殻のように秋の夜長を過ごしている今夜の因幡屋であった。
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