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因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

ブラジル『軋み』

2008-12-13 | 舞台
*ブラジリィー・アン・山田脚本・演出 公式サイトはこちら 新宿シアタートップス 14日まで

☆困った、これも幕開けから重要情報満載で、うっかりしたことが書けない…と思いながら帰宅後改めて公演チラシをみると、漫画家(桑原裕子/KAKUTA)の夫(櫻井智也/MCR)が冒頭場面を説明する独り言が書かれているではないか。自分は奇跡的にこれを読まずに開幕を迎えた。いや、読んだとしてもほとんど想像のつかない展開だったから、あまり関係はないのだろうか?一応このあたりからご注意ください☆
 2006年冬の『恋人たち』から、ブラジリィー・アン・山田は自分にとって外せない劇作家になった。しかし『恋人たち』の印象が強すぎたためか、あれを越える作品にはまだめぐり会えていない。理由のひとつは、舞台で殺しの場面がいささか多すぎることだ。「苦笑系ホラー」「苦笑系喜劇」の旨味が、殺人描写によって感じ取れなくなるのである。

 今回の『軋み』は簡単に言ってしまうと、殺人を隠蔽しようとした者が、あれこれあったのちに自首を決意する話である。夫婦の問題、人気漫画家と編集者の思惑、アシスタントと雇い主である漫画家の力関係など、マンションの一室で、登場人物たちの言動は混乱を極める。台詞のやりとりは全編ぶっ飛ばすような勢いで、あいだに顔をだす謎の男中川智明の絶妙なこと。話の要旨だけを書くと単純なサスペンスもののようだが、描かれているのは「犯人は誰か」というサスペンスではなく、殺してしまった人間が七転八倒するさま、事件をきっかけに本音を曝け出す人々の様相である。

 苦い結末だが、これもある意味ハッピーエンドである。偶然だが本作も昼間みた『空ソラの定義』も、主人公は身ごもっていた。子供が生まれてからの彼らのことを知りたいと思う。
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