ふるさと加東の歴史再発見

少し気をつけて周囲を見回してみると、身近なところにふるさとの歴史を伝えるものがある。

田町通りの歴史(2)法蓮寺の道標

2006年06月14日 16時03分32秒 | Weblog
田町の法蓮寺の道標
田町通りは、今は空地があったり、商店も少なくなってさびしい感じがしますが、お年寄りの話によれば、社の街で一番にぎやかな通りだったそうです。
いろんな店が建ちならび、暮れの「誓文払い」や「歳の市」には、身動きがとれないほどの人出があってにぎわったといいます。
 さて、田町通りの東の端に法蓮寺があります。その境内の一角に「左 きよみず」「右 ほつけ山」と彫られた大きな道標が立っています。道標の裏にはこれを立てた人物の名と、これを発見し再建したその子孫と協力者の名が彫ってあります。この大きな道標にまつわるエピソードを紹介しましょう。
 今から200年ほど前、甲州(今の山梨県)の絹問屋の肥谷井角右衛門(ひやい・かくえもん)さんが商売のために西国を巡った帰りに、社の清水寺の辺りで道に迷い、寒さと疲労のために倒れてしまいました。幸い、そこを通りがかった大名行列に助けられ一命をとりとめることができました。角右衛門さんは、この経験から、旅人のために播州の街道に10本の道標を建てました。そのうちの一本がこの道標なのです。
 昭和になって、角右衛門さんの子孫が、先祖が播磨に道標を立てたという伝承の真偽を確かめるために社に来られ、肥田文旅館(現在の商店街駐車場イベント広場にあった)に泊まりました。その話を聞いた米屋を営んでいた上月泰治郎さんは、かつて本町通りに立っていた道標がそれにあたると思いましたが、その道標は社の街の拡大と交通の発展で邪魔になり、あちこちに移されたり売られたり、また買い戻されたりして、行方が転々としていました。そして、果ては佐保神社の境内の林の中に倒されていたのでした。
 上月さんはその子孫と出会い、昭和16年に京都への街道筋にあたる田町の法蓮寺の境内に再建したのです。その後、昭和40年代に、清水寺の麓で同じ形式の道標が見つかり、これも10本のうちの一本だということが分かりました。
 法蓮寺の道標には以上のようなエピソードがあったのです。これは、今は亡き上月輝夫先生(郷土史研究家)から教えていただきました。
 昔の旅人にとって、道標はとても大切なものでした。社の街の中にもまだ昔の道標が残っています。気をつけて見てみてください。
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田町通りの歴史(1)加東米穀取引所

2006年06月14日 08時57分18秒 | Weblog

社(やしろ)の地名の由来は、佐保神社(さほじんじゃ)に深く関係しています。
佐保神社の境内は、西側を旧国道175号線によって切り取られた形になっており、道路から高く積まれた石垣の上の石の玉垣が柵になっています。
玉垣の前に一列に小宮さん数社が並んで建っています。そのちょうど真ん中あたりに「御大神宮さん」とよばれる小宮さんがあります。周囲は石の玉垣で囲ってあり、正面の門柱にあたる背の高い石には、「加東米穀取引所」と刻まれています。
この小宮さん、そして刻まれた文字が社の歴史を語り始めるのです。
この小宮さんは、元は田町通りにあったのですが、昭和初期に田町通りを清水行きのバスが通り始めると、狭い道にはみ出して鎮座していた御大神宮さんをどこかに遷さなければならなくなりました。相談の結果、佐保神社の境内にお遷ししたというわけです。ですから、この御大神宮さんは、今でも田町通りの中田町町内会の皆さんがお祭りしています。
さて、加東米穀取引所とは?これは明治中頃から大正初期まで田町にあった米の取引所の名前です。当時の米の取引といえば、大阪の堂島が知られていますが、兵庫県では、神戸や姫路、そして社の取引所で行われていたのです。田町通りはこの米穀取引所に集まる人たちで賑わったそうです。電信や電話が発達していなかった頃、大阪の米の相場を旗振りで知らせたというのです。大阪から神戸、そして志方の城山などを中継して、社の田町通りに建てられた櫓から望遠鏡でのぞいて値段の上下を知り、それを小僧さんが大声で知らせてまわった、といいます。城山から社までは地図上で測ってみると、直線で約14キロほどです。本当に見えるのかを実験した方があり、結果は十分見えたそうです。御大神宮さんは田町の神様で、加東米穀取引所はやはり田町にあったのです。今は佐保神社の境内にあって、田町にはそのあとはありません。
御大神宮さんと加東米穀取引所と刻まれた石の玉垣を「ふるさと歴史遺産」に登録したですね。
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