昨日の犬養毅の推薦状に続いて、今日は青木雷三郎本人の立候補挨拶状を紹介します。これまで紹介してきた候補の文章と比べて読み易いように思います。また、投票用紙の具体的な書き方まで示しているのも他にはなたっかものです。
謹んで立候補の御挨拶を申上げます
昭和七年二月
青 木 雷 三 郎
既に御承知の如く第六十議会は解散となりました。来る二月二十日に
は総選挙が行はれます。私は昭和五年の選挙に於て皆様の厚き御同情
と熱烈な御後援を賜りましたに不抅落選を致しました事は全く不徳の
致す處と深く慚愧に堪えぬ次第で御座います。
今回は同志各位より是非前回の雪辱戦をとの切なる御勧めによりまし
て更に立候補致しましたが又も非常に大苦戦で御座います。
前回の雪辱戦でも御座いますから何卒皆々様の厚き御同情におすがり
申し是非共当選の栄冠を得たいと存じます。幸ひ当選の栄を担ひ得ま
した節は此の重ねての御高恩に相酬ひ申上げ度い念願で御座います
私は重大なる時局の秋に当り政見の要領のみを申上げまして皆々様の
公平なる御判断に愬ぇ度いと存じます
〇重大なる時局と国民の審判
我国は今や重大なる時局に臨んで居ります。内には経済界に未曾有の難局を控え、外には満蒙問題を中心として帝国の運命を決すべき国際的危機に直面してゐるのであります。此際に於きまして政府の採るべき経済政策の適否は直ちに国民死活の問題となり、満蒙問題を中心とする対支外交の成敗は、即ち帝国存立の死命を制するのであります。
今回の総選挙は、この二大問題を中心として全国民が現政友会内閣の政策と、前民政党内閣の政策とを比較判断し、前民政党内閣の執った政策を支持するか、或はまた現政友会内閣の政策を是とするか、にあるかと思います。
〇我等の政策と私の覚悟
政策の詳細は演説会に於て申上げたいと思ひますが、要するに積極進取の経済外交が我党の本領であります、此際に於て国民はただ暗黒に向ふか光明を取るか、景気が不景気か、積極か消極か、進取か退却か、自主か追随かその何れを取るか何れを可とするかは言はずして自ら明瞭であろうと信じます。私は我党の政策実現の為に団々乎として勇往邁進せんとする覚悟であります
謹んで貴下の賢明なる御判断を仰ぎます
衆議院議員 あを き らいさぶろう
青 木 雷 三 郎
候補者 アオ キ ライサブロウ
明石市相生町二丁目二〇三番地
何れを書いて下 青 木 雷 三 郎
さいましても有 あをきらいさぶろう
効で御座います ア ヲ キ