旧家に保管されていた鴨川ダムの絵はがきセットのうち、「永遠に固定に沈む在りし日の土井(兵庫縣)」と書かれた一枚があります。まさに在りし日の土井の全景が写っています。
地図は、同じく旧家にあった古い地形図で、明治43年測量大正12年修正測図昭和4年鉄道補入同24年応急修正の5万分の1の地形図「三田」です。ダム建設前の地形図には、東条川にそそぐ鴨川、土井の地名、ダムが建設された峡谷が読み取れます。
「天恵の地形、土井は池になる」(近藤準吉翁:旧市場村村長)は有名な言葉ですが、干ばつに苦しんだこの地方の人々の思いを伝えています。東条町黒谷字土井は、周囲を山に囲まれた盆地で、一ヶ所だけ岩が裂けるように鴨川が流れ出ていました。土井は戸数7戸ののどかな豊かな村でした。この写真には、在りし日の土井の全景が写っています。写真の白点線の割れ目にダムが建設されたのです。
東条湖を訪れ、その湖面を見ると、湖底に沈んだ土井のことを思い浮かべ、生まれ育った土地を離れていかれた方々のことに思いを馳せたいたいものです。