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4月29日(水)、加東市秋津の住吉神社で伝統の秋津百石踊りが奉納されました。
百石踊りの奉納に先だって、午前10時から大喜多宮司さん、氏子村代表、西戸踊り保存会の皆さんが神事に臨みました。本殿の東の一角、本殿内、そして境内の伊勢神宮遙拝所を参拝。続いて、小宮前で湯立ち神事が行われました。この神事は今年初めて行われたものです。
この頃から境内には地元の方をはじめ、参拝、踊り見学の人が増えてきました。そして、空も東の方角に黒い雲も広がり始め、生あたたかい風まで吹いてきました。
午前11時、山門から保存会の会長さんを先頭に踊り手さんらがかけ声と小太鼓の打ちながら入場してきました。続いて、境内の本殿と舞殿の間で百石踊りが披露されました。 太鼓の独特のリズム、踊り手の問答形式の掛け合いなど少しコミカルな動きに見ている方も思わず体が反応してしまいます。約40分ほどで6番の踊りが奉納されました。始めはゆっくりと、最後は早く強いリズムで太鼓が打たれ踊りも激しくなります。そうしたなか、雨がぽつりと落ちてきたという人もいました。雨乞い踊りの効果できめんです。
今は五穀豊穣を願って毎年奉納されるようになりましたが、元々は雨乞い踊りです。今年91歳になる地元西戸地区の古老によれば、昭和32年に地区で寄り合いがあり、その席で当時の年寄りたちが百石踊りの地唄を歌いはじめ、大いに盛り上がったそうです。そこで、当時始まったばかりの有線放送局からテープレコーダーを持って来させて録音し、それを放送で流したところ、反響が大きく、百石踊り復元のきっかけになったということでした。旱魃のときに雨乞いの踊りとして踊られていたために、この踊りを継承していくことは難しく、今では西戸地区だけとなっています。
現在では、東条ダム(鴨川ダム)が築かれ、用水路網を通して、加東市、小野市域のため池、田圃に水が送られています。台地にも水が送られ、土地が拓かれました。しかし、この地域は全国的にも降水量が少なく、昔から川に堰を築き、水路をつくって田に水を引く、あるいは池を築き、水を溜めて田に水を引く、そうした血のにじむような努力が積み重ねられてきた歴史があります。水争いの歴史も伝えられています。そうした地域の環境の中で生きてきた先人の生き方、すなわち文化を伝え、教えてくれているものの一つが百石踊りです。
東条川がすぐ近くを流れています。ダムと用水路、ため池、田園、そうしたものを軸に営まれる地域の祭りや人々の生活をひっくるめて、疏水文化とよんでいますが、まさに伝統の百石踊りは東条川用水疏水文化を代表する歴史的な文化遺産です。
人口減少、少子高齢社会が進行する中で、こうした地域の貴重な伝統芸能の維持継承はますます困難になってきます。しかし、そうした状況を乗り越えて大切に守り続けておられる保存会の皆さんに敬意と感謝の気持ちでいっぱいです。去年はあらたに10人の踊り手が紹介されましたが、針木会長は今年は立派に奉納できたと感激しながら挨拶をされました。ふるさと加東の、そして兵庫の大切な宝ものであるこの秋津百石踊りを、みんなでファンになって応援していきたいと思います。