語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】教育費の財源問題で政局化か

2017年11月26日 | ●佐藤優
 ①鯨岡仁『日銀と政治』(朝日新聞出版 2,000円)
 ②井上久男『自動車会社が消える日』(文春新書 830円)
 ③現代にゃん語研究会・編『現代にゃん語の基礎知識2018』(自由国民社 1,300円)

 (1)①は、政治と日本銀行との相互関係を詳細に描いた傑作だ。大きな流れでは、日銀の専門家集団よりも政治の力が強くなっている。
 今後の政局に影響を与え得るのは、子どもの教育のための財源の問題だ。
 <自民党内には、下村博文幹事長代行ら文教族を中心に「教育国債」を発行して、そこで得られたお金を財源に教育予算を拡充すべきだという考え方が多かった。
 小泉(進次郎)らは、これに異議を唱えた。この国の将来を支える子供たちの育成を、国債発行という「借金」に頼ってしまえば、その借金を返済するのも、納税者になった若者自身ということになる。手厚い福祉のある高齢者に比べて、あまりに不公平だという憤りがあった。
 小泉らが構想した「こども保険」は、勤労者と事業者の年金の保険料を上乗せして財源を確保し、未就学児の教育費用の軽減を図ろうという提案だ。消費増税という選択もあるのに、あえて保険方式を選んだのは、消費増税への国民の拒絶反応が強く、政治家も増税延期の易きに流れがちで、なかなか実現しない点にある>
 安倍政権は取りあえず、消費税を教育財源に充てる方針を示すが、拙速に決めたこの方針が今後、政争の原因になる可能性がある。

 (2)②を読むと、日本の自動車産業の未来に悲観的にならざるをえない。
 <自動車の動力源一つとっても、ガソリン・エンジンのみならず、ハイブリッド、ディーゼル、PHV、EV、燃料電池車と多岐にわたり、莫大な開発投資がかかる。今後は人工知能を使った自動運転にも大きなリソースを割かなければならない>
 脱化石燃料依存という世界的潮流に従って、思い切ってEV(電気自動車)にかじを切る必要があろう。

 (3)③はユニークな猫事典だ。著者の一人(山根明弘氏)は次のような問題提起をする。
 <今後、われわれ日本人とノラネコとの関係はどのようになっていくのであろうか。ヨーロッパの一部の国のように、ノラネコの不妊去勢処置によって人間が完全に管理し、街からノラネコが消えてしまう社会になるのか。それとも、昔の日本のように、街の中で自由気ままなノラネコがそこここに見られ、人は人らしく、猫は猫らしく同じ社会の中で共存できる社会になるのか。
 それを決めてゆくのは、猫ではなく、われわれ人間なのである>
 日本社会には、猫に対して強い拒絶反応を持つ人が一定数いる。この現実を考慮すれば、野良猫に不妊去勢手術をして人間と猫の共存を図るのが   現実的だ。

□佐藤優「教育費の財源問題で政局化か ~知を磨く読書 第225回~」(「週刊ダイヤモンド」2017年12月2日号)
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【佐藤優】普天間基地移設問題の本質、外務省犯罪黒書、老後に快走!
【佐藤優】シリア難民が日本へ ~ハナ・アーレント『全体主義の起源』~

【米国】ハリウッドに蔓延するセクハラ、男性支配の構図は崩れるか? ~ハリウッドのパンドラの箱~

2017年11月25日 | 社会
 (1)「恋におちたシェイクスピア」「パルプ・フィクション」などで知られる米映画プロデューサーのハーベイ・ワインスタイン氏をめぐるセクハラ(sexual harassment)疑惑が表面化したことで、ハリウッドが蜂の巣をつついたような騒ぎになっている。
 米NBCテレビの人気バラエティー番組「サタデー・ナイト・ライブ(SNL)」も10月14日、皮肉たっぷりに同氏のセクハラ疑惑を取り上げた。コメディアンのケイト・マッキノンさんは老女優に扮して「ハリウッドでのセクハラは古くて新しい問題」と痛烈に批判した。
 ハリウッドで暴行を受けているのは有名女優だけではない。被害女性はどこにでもいる。パンドラの箱(Pandora's box)は開いた。そしてパンドラは怒っている。
 その後、まさにパンドラの箱が開いた状況になった。

 (2)米ニューヨーク・タイムズ紙が、独自の調査報道でワインスタイン氏の性的暴行(sexual assault)などを最初に明らかにしたのが10月5日。すると、グウィネス・パルトロウさんやアンジェリーナ・ジョリーさんら著名女優が、次々と被害に遭ったと名乗り出たのだ。
 被害者の女優が今まで黙っていた背景に何があるのか。いわゆる「キャスティングカウチ(casting couch)」だ。プロデューサーら実力者が女優に対して役と引き換えに性的関係を迫る行為のことだ。性的関係を受け入れなければハリウッドでは成功できない--。このように女優側は考えるわけだ。
 ワインスタイン氏以外のスキャンダルも次々と明らかになっている。その結果、米アマゾンの映画・ドラマ子会社、アマゾン・スタジオのトップを務めるロイ・プライス氏は休職に追い込まれ、「ラッシュアワー」などを手掛けた売れっ子監督のブレット・ラトナー氏は米映画大手ワーナー・ブラザースとの契約を切らなければならなくなった。

 (3)ソーシャルメディアを舞台に「Me Too(私も)」運動が広がっており、これからも被害者側からの告発が続きそうだ。
 ハッシュタグ「#MeToo」を使って「私も被害者」と名乗り出ているのは女優にとどまらない。男優もいるし、アーティストもいる。そのうちの一人はミュージシャンのレディー・ガガさんだ。
 ハリウッドでセクハラを助長する性差別主義(sexism)が根強いのはなぜなのか。
 地元紙の米ロサンゼルス・タイムズは「ハリウッドの隅々まで男性支配が徹底しているため」と指摘する。根拠にしたのが南カリフォルニア大学(USC)の調査だ。それによると、2016年に公開されたヒット作のうち監督の95%、脚本家の87%、プロデューサーの79%が男性だったという。
 だからこそ、ハリウッドは映画界の巨匠ロマン・ポランスキー氏にかねて同情的だったのだろう。性的虐待事件を起こして国外逃亡していた同氏が8年前にスイスで身柄を拘束されると、釈放を求める動きがハリウッドで広がったのである。その中心人物がワインスタイン氏だった。
 だが、パンドラの箱は開いた。ハリウッドでも男性支配の構図がいよいよ崩れ始めるかもしれない。

□牧野洋(ジャーナリスト兼翻訳家)「Pandora's box in Hollywood(ハリウッドのパンドラの箱) /ハリウッドに蔓延するセクハラ、男性支配の構図は崩れるか? ~Key Wordで世界を読む No.166~」(「週刊ダイヤモンド」2017年11月18日号)
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【米国】トランプ大統領が描く従来と違うレッドライン ~北朝鮮は世界の問題に~
【欧州】英航空・防衛大手企業が受注苦戦で大リストラ ~英国のEU離脱も影響か~
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【南雲つぐみ】体に良い起き方 ~脳貧血の対策~

2017年11月24日 | 医療・保健・福祉・介護
 朝、跳び起きた瞬間に腰や背中を痛めてしまったという話がある。寝ている間の筋肉は、実はこわばりやすい。筋肉は動かしていると柔軟性が保たれるが、寝ている間は昼間のように体を動かさないからだ。
 また、血流も起きているときほど活発ではなく、心拍数も低い。急に起き上がると頭まで血流が十分に届かず、脳貧血(起立性低血圧)も起こりやすい。脳貧血やめまいを起こしやすい人だけでなく、健康な人にとっても、目が覚めてすぐに跳ね起きるという習慣は、体に良くないのだ。
 これから冬に向かう。朝晩の気温がますます下がり、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まる季節でもある。目が覚めたら、ゴロゴロと寝返りを打ったり、手足の曲げ伸ばしや手指を開閉して全身の血行をよくし、筋肉をほぐしながら起きるようにしよう。
 民間療法の西式健康法の中にある「血管運動」は、あおむけになって手足を上げ、ぶるぶると細かく動かすというものだ。血行を良くするということで愛好者が多い。寝起きにできる安全性の高い運動だ。

□南雲つぐみ(医学ライター)「体に良い起き方 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年10月26日)を引用
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【本】歪み増殖していく物語に迷う ~『森へ行きましょう』~

2017年11月24日 | 批評・思想
★川上弘美『森へ行きましょう』(日本経済新聞出版社 1,836円)

 <(前略)この本は川上弘美の長編小説である。「一九六六年 留津 〇歳」から始まり、「一九六六年 ルツ 〇歳」と続く。そして同じ時に生まれた同じ音の名前をもつ二人の人生が語られていく。留津とルツが出会うことはない。二つの物語が同時進行していくのだが、一方の物語の登場人物がもう一方の物語に出てきたりする。読者は、語り出されるエピソードや人間観察に、ときにニヤリとし、ときにドキリとしながら二つの物語を並行して読み進んでいく。
 だが、この物語の前半ですでに感づかなければいけない。なんだろう、この微弱な緊張感は。
 時間は二人が五十歳になる二○一七年まで整然と刻まれていく。しかし、いわば物語の空間が歪(ゆが)むのである。お互いの登場人物が交差すると、留津の物語とルツの物語が作用しあって、かすかに陽炎(かげろう)のように物語の輪郭が揺れる。さらに読み進むと、留津/ルツと同じ音の人物が増える。「琉都」「るつ」「流津」「瑠通」「る津」。さらに、同姓同名の人物が、別人なのだが、まったく別人とも言えない仕方で現れてきたりもする。
 人生には無数の分岐点がある。小さな分岐点なら、ほら、いまも。そこで人生が変わる。別の道を行っていたならば、どうなっていただろう。その分岐した物語が、ここに描き出されているのである。流れていく時間に沿って、物語の空間が歪み、分岐し、増殖する。次第に読者はその中で眩暈(めまい)に襲われるだろう。(後略)>

□野矢茂樹(東京大学教授・哲学)「(書評)『森へ行きましょう』 川上弘美〈著〉 歪み増殖していく物語に迷う」(朝日新聞 2017年11月19日)
(書評)『森へ行きましょう』 川上弘美〈著〉 歪み増殖していく物語に迷う
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 【参考】
【本】加工食品はどこから来たのか ~軍隊と科学の密な関係~
【本】80年代中世ブームの傑作 ~『一揆』~
【本】万華鏡のように迫る名著 ~『新装版 資本主義・社会主義・民主主義』~
『【本】『世界をまどわせた地図』
【本】率直過ぎる米情報将校の直言 ~『戦場 -元国家安全保障担当補佐官による告発』~
【佐藤優】宗教改革の物語 ~近代、民族、国家の起源~」」
【本】舌鋒鋭く世の中の本質に迫る/地球規模で読まれた洞察の書 ~『反脆弱性』~
【本】【神戸】「自己満足」による過剰開発のツケ ~『神戸百年の大計と未来』~
【本】英国は“対岸の火事”にあらず ~新自由主義による悲惨な末路~
【本】人材開発でもPDCAを回す ~戦略的に人事を考える必読書~
【本】仮想通貨が通用する理屈 ~『経済ってそういうことだったのか会議』~
【本】進化認知学の世界への招待 ~『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか』『動物になって生きてみた』~
【本】「戦争がつくっった現代の食卓」 ~ネイティック研究所~
【本】IT革命、コミュニケーションの変容、家族の繋がりが希薄化 ~『「サル化」する人間社会』~
【本】生命はいかに「調節」されるかを豊富な事例で解き明かす ~『セレンゲティ・ルール』~
【本】メディアの問題点をえぐる ~『勝負の分かれ目 メディアの生き残りに賭けた男たちの物語』~
【本】テイラー・J・マッツェオ『歴史の証人 ホテル・リッツ』
【本】中国から見た邪馬台国とは
【本】核兵器は世界を平和にするか ~著名学者2人がガチンコ対決~
【本】『戦争がつくった現代の食卓 軍と加工食品の知られざる関係』
【本】梅原猛『梅原猛の授業 仏教』
【本】東芝が危機に陥った原因は「サラリーマン全体主義」 ~『東芝 原子力敗戦』~
【本】バブル崩壊後の経済を総括 ~『日本の「失われた20年」』~
【本】20世紀英国は実は軍事色が濃厚 ~通念を覆す『戦争国家イギリス』
【本】時代による変化、方言など ~『オノマトペの謎 ピカチュウからモフモフまで』~
【本】冷笑的な気分に喝を入れる警告と啓発に満ちた本 ~『日本中枢の狂謀』~
【本】物質至上主義批判の古典 ~『スモール イズ ビューティフル』~
【本】日本近現代史を学び直す ~『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』~
【本】精神の自由掲げた9人の輝き ~『暗い時代の人々』~
【本】遊牧民は「野蛮」ではなかった ~俗説を覆すユーラシアの通史~
【本】いつも同じ、ブレないのだ ~『ブラタモリ』(1~8)~
【本】分裂する米国を論じた労作 ~『階級 「断絶」社会 アメリカ』~
【本】否応なきグローバル化、つながることの有用性 ~「接続性」の地政学~
【本】読書の効用、ゆっくり丹念な ~より速く成果を出すメソッド~
【本】国谷裕子『キャスターという仕事』

【保健】認知症と性格の関係 ~責任感は予防的に働く~

2017年11月23日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)認知症になりにくい性格はあるか?
 実はすでに性格特性のうち、「誠実さ」が予防的に働く、という研究結果が複数報告されている。
 さらに先日、米フロリダ州立大学の研究グループから「誠実さ」を構成する細かい要素のうち、何が最も認知症予防と関連するのかという報告があった。

 (2)研究者らは、米国に在住する50歳以上の男女を対象とした調査「ヘルス・アンド・リタイアメント研究」から分析対象を選定。
 最長6年間の追跡期間中、少なくとも1回は認知機能検査を受けた1万1,181例について性格特性と認知症発症との関連を調べた。期間中に278人が認知症を、2,186人が正常と認知症との中間状態ともいえる、認知機能低下(CIND)を発症している。
 分析の結果、性格特性のうち認知症リスクと最も強く関連したのは「責任感」で、責任感が強い人は認知症発症リスクがおよそ35%低下した。このほか「自制心(セルフコントロール)」と「勤勉さ」も認知症の予防に働くことが示されている。この三つの資質は、認知症の遺伝的リスクや他の疾患の影響からも独立して、予防的に働くらしい。

 (3)研究者は「責任感があり、自分の行動をコントロールできる人、ハードワークの人は認知症を発症する可能性が低い」としている。
 この試験の性格評価法は心理学でよく利用される「ビッグファイブ」を指す。すなわち、次の5要素で性格を評価するもの。
   ①開放性(知的好奇心の強さ)
   ②誠実性(高い目的意識を持ち、まめに行動する)
   ③外向性(活動的で社交的)
   ④調和性(利他的で協調性がある)
   ⑤神経症傾向(緊張しやすく衝動的で不安定)
 誠実さが認知症予防的に働くのに対し、神経症傾向が強い人は、逆に認知症やうつ病の発症リスクが高いことが知られている。

□井出ゆきえ(医学ライター)「認知症と性格の関係は?/責任感は予防的に働くようだ ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.375~」(「週刊ダイヤモンド」2017年11月25日号)
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 【参考】
【保健】手洗い励行の季節 ~CDC推奨の方法は~
【保健】何を食べていましたか? ~認知良好な69~71歳の場合~
【保健】SNSに投稿した写真が鬱病診断の手がかりに?
【保健】もし妻が乳がんに罹患したら ~10月はピンクリボン月間~
【保健】ダイエット法の新説は最大18時間の絶食 ~朝・昼2食でBMI低下~
【保健】秋の登山でも水分補給を ~脱水係数で消費量を把握~
【保健】歯周病と全身疾患との関係
【保健】尿のpHで糖尿病の発症予測 ~酸性度が高いとリスクが上昇~
【保健】ビタミンB群の過剰摂取にご注意 ~男性の肺癌発症リスクが上昇~
【保健】長距離タイムは血液型しだいか ~影響は普段の練習に匹敵~
【保健】活動格差が肥満を招く ~72万人に対する調査で判明~
【保健】認知症の発症を予防する/10代から意識すべき9因子
【保健】10代の望まない妊娠を防ぐ ~長期間効果がある避妊法を選択~
【保健】糖尿病網膜症リスクを軽減 ~26メッツ・時/週以上の運動~
【保健】ヒアリにどう対処する? ~アナフィラキシーに注意~
【保健】鬱に効くボルダリング ~悲観的な自動思考を解消~
【保健】主食をしっかり食べると公平な判断ができる
【保健】梅雨明け~お盆は熱中症の季節 ~危ない人、予防と対応法~
【保健】塩分過剰で空腹に ~高血圧どころかメタボに~
【保健】満腹より栄養素に目を向けて ~収入が低い世帯は主食頼み~
【保健】だるいときほど階段昇降を ~カフェインより効果的~
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【保健】ギャンブル依存症ってなに? ~最新の定義は「プロセス依存」~
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【保健】アジア系2型糖尿病でも全がん死リスクが上昇
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【保健】高齢者は健康な生活、他方、若い世代は生活習慣に課題
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【保健】中高年の性行動と認知機能
【保健】揚げ物はレジリエンス(心の弾力・回復力)に悪影響?
【保健】カロリー制限か運動療法か、どちらか一つじゃダメか?
【保健】遺伝子検査で再発リスクを評価 ~乳癌、抗癌剤治療の回避も~
【保健】慢性疲労症候群に関係か ~腸内細菌叢~
【保健】脳トレに有酸素運動をプラス ~認知機能と記憶力が向上~
【保健】標準体重なのに2型糖尿病?/BMIが「1」増加しただけで
【保健】受動喫煙は確実に癌、脳・心疾患、乳幼児突然死症候群を生む
【保健】嫌な気分の時こそ、動く ~うつ病治療に行動活性化療法~
【保健】孤独リスクも欧米化する?/宴会文化が廃れた後は
【保健】茶カテキンによる肝障害でノルウェーがサプリメント含有量規制へ
【保健】学んで4時間後に運動すると記憶が定着 ~記憶術~
【保健】飲む抗癌剤で生存率改善へ ~膵臓癌の再発を抑制~
【保健】恐竜も腫瘍を患う ~癌は進化の宿命~
【保健】高血圧にはモーツァルト ~安静に寝ているより効果的~
【保健】塞栓症リスクが低いピルは?/エストロゲン量と黄体ホルモンで違い
【保健】悲しいと食べすぎる ~食べ放題は幸せなときに~
【保健】「夏の蚊対策国民運動」 ~ジカ熱対策~
【保健】2型糖尿病発症にも民族差/アジア系は「BMI23」でリスク
【保健】ジャガイモに高血圧リスク/ノンオイルでも要注意 
【保健】ADHDに「ゲーム療法」?/2製品が臨床試験へ
【保健】男性は運送業、女性は医療・介護 ~メタボになりやすい業種~
【保健】健康生活の王道は「食」 ~食事バランスガイドと死亡率~
【保健】眼底検査で何がわかるか ~眼疾患だけではない~
【保健】弾性ストッキングが効果的 ~エコノミークラス症候群対策~
【保健】マインドフルネスで腰痛改善 ~認知行動療法と同じ効果~
【保健】歯磨きが心血管疾患を予防 ~毎食後で発症リスクを軽減~
【保健】ガン=生存時代の就労支援 ~治療と仕事の両立に指針~
【保健】糖尿病患者の降圧目標値 ~140mmHgでよい?~
【保健】睡眠不足でスナック菓子を渇望、体重増加 ~大麻並みの快楽
【保健】コーラ1缶で薬の吸収率がアップ ~抗癌剤の薬効~
【保健】その一言で妻の2型糖尿病リスクが減少 ~「先に寝ていて」~
【保健】先進国では認知症が減少? ~予防の鍵は生活習慣の改善~
【保健】生活設計は長期戦か短期決戦か ~癌の臓器別・病期別生存率~
【保健】イチゴとオレンジはEDに効く ~米国の研究報告~
【保健】高齢者の服薬適正化にGL ~容易な多剤併用に警鐘~
【保健】朝食抜きに脳卒中リスク 阪大など調査 大規模調査で1.18倍高
【保健】下剤は脳・心血管疾患リスク> ~背景にストレスや運動不足~
【保健】高脂肪食でシナプスが消失? ~動物実験~
【保健】2型糖尿病とフライド・ポテトとの関係 ~ポテトは煮物で~
【保健】世帯の所得と健康リスクの関係 ~食習慣と飲酒習慣~
【保健】抗がん剤の価格差は最大4倍以上 ~WHOの調査~
【保健】より危険な睡眠時無呼吸 ~脳・心疾患のリスク増~
【保健】初日の出の心身的効果 ~鬱対策は光を浴びて~
【保健】日本人肥満男性の食事と運動 ~糖尿病予防~
【保健】適性な「降圧目標値」 ~120未満で関連疾患が3割低下~
【保健】自由な裁量権でスリムに ~ストレスでメタボ~
【保健】目の老化には赤と緑と橙色 ~加齢黄斑変性症の予防~
【保健】早期発見のためにエコーと併用 ~乳がん検診~
【保健】骨折予防はカルシウムのほかに・・・・
【保健】前糖尿病患者は食習慣の改善を ~全国糖尿病週間~
【保健】糖質制限より脂質制限? ~体脂肪を減らす~
【保健】受動喫煙が歯周病リスクに ~ただし男性のみ~
【保健】貧乏ゆすりが命を救う? ~マナーより健康~
【保健】「高収入の勝ち組」の健康リスク? ~50歳以上の有害な飲酒~
【保健】照明用白色LEDのブルーライトは安全か?
【保健】目の愛護デー ~緑内障による失明を予防~
【保健】長時間労働は脳卒中リスク ~週41~48時間でも上昇~
【保健】ほぼ毎日食べると、死亡リスクが14%減少 ~唐辛子~
【保健】水族館でリラックス効果 ~血圧・心拍数に好影響~

【南雲つぐみ】魚焼きグリルの掃除

2017年11月23日 | 医療・保健・福祉・介護
 ガスコンロの魚焼きグリルは、魚だけでなくパンやピザを焼くにも適している。上下からの熱で短時間で庫内の温度が上がるため、食べ物の中の水分を奪わずふっくらと出来上がるのだ。
 でも、焼き魚の臭いがついたままのグリルは活用しにくい。そこで、グリルで魚を焼いても、臭いや脂汚れがつかない方法を紹介しよう。焼く前の受け皿に片栗粉を溶いて入れておく方法だ。
 水200ミリリットルに対して大さじ4杯程度の片栗粉を入れる。むらなく十分に溶かしておくのがポイント。こうして魚を焼き、その後グリルが十分に冷えると、片栗粉が固まる。すると肌パックのようにペロンとはがれて、なかなか気持ちがいい。あとは軽く水洗いをするだけで臭いが消える。手が汚れにくいのもいい。
 片栗粉に対して水分が多過ぎると、うまく固まらない。片栗粉がないときやもっときれいにしたいときは、重曹を使う方法もある。500ccのぬるま湯に重曹大さじ2杯を混ぜて、グリルの中に流し込む。魚を焼き終え、しばらくして冷えてから水で洗い流すと、臭いや脂もとれているはずだ。

□南雲つぐみ(医学ライター)「魚焼きグリルの掃除 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年11月17日)を引用
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【南雲つぐみ】体重増加と関節の痛み

2017年11月22日 | 医療・保健・福祉・介護
 膝関節の痛みで受診したUさん(58)は湿布と痛み止めをもらい、医師に「少しやせたほうがいい」と言われた。しかし、「1年で5キログラム太ったけれど、肥満というほどではない」という。
 太ることで足腰の関節に悪影響を及ぼすのはなぜか。これは「てこの原理」によって説明できると聞いた。片足で立つと、骨盤が傾いて体の中心線からずれる。そこでバランスを取ろうとして体重より重い荷重が軸足の骨盤にかかるのだ。
 例えば、体重50キログラムの人が両足で立っているとき、左右の足はそれぞれ25キログラムずつの重さを支えている。では片足立ちをするとどうか。軸になった足には全体重50キログラムだけでなく、その3倍の150キログラムがかかるそうだ。
 階段を上り下りするときの軸足には体重の5倍、片足ジャンプとなると8倍がかかっているという。ということは、50キログラムの人が5キログラム太って55キログラムになったら、階段の上り下りは今までより25キログラム上乗せで、負担が掛かる。痛みやけがの出るリスクも高くなるというわけだ。

□南雲つぐみ(医学ライター)「体重増加と関節 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年11月20日)を引用
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【米国】とメキシコ国境に建つトランプの「壁」の試作品 ~国境の街の反応は?~

2017年11月22日 | 社会
 (1)「メキシコとの国境に巨大な壁を建てて不法移民をシャットアウトする」
 そう公言して大統領になったトランプ氏。その壁の試作品8点が、カリフォルニア州のオータイメイサ地区に建設された。
 現地には荒涼とした平原が広がる。高さ9メートルの壁の試作品が並ぶ場所は公道から1キロメートル以上離れた所にあり、公道から壁は見えない。封鎖された入り口には監視カメラがあり、国境警備隊が24時間体制で警備している。今後数カ月で試作品8点の壁の強度をテストし、採用するタイプを決めるという。
 目と鼻の先のメキシコから国境を越えてくる貨物トラックが行き交うこの街には、事故車や中古車を激安で販売する店舗が並び、メキシコからの客でにぎわっている。その他には州刑務所があるぐらいで閑散としている。

 (2)街角のどこを探しても壁の建設に反対してデモをする市民の姿は見当たらない。
 大統領自らが壁の試作品の写真をツイッターで発信したほどホットな話題なのに、なぜ地元は静まり返っているのか。サンディエゴを拠点とする市民団体、「ボーダー・エンジェルス」のエンリケ・モロネス氏いわく、
 「壁の試作品に対して数千人規模で反対デモなどしたら、壁に全米の注目が集まってしまう。それではトランプの思うつぼ。私たちは壁の建設に強く反対するからこそ、あえてデモをしない戦略」

 (3)米国とメキシコの間の国境の長さは約3,200キロメートル。その3分の1にはすでにフェンスが設置されている。フェンスがない地域の多くが砂漠地帯だ。そこをメキシコ側から徒歩で渡るのが不法入国の主要ルートだが、「1994年以降、1万人以上がこの砂漠越えで命を落とした」とモロネス氏。大リーグ球団パドレスのマーケティング担当をしていた彼は、市民団体を立ち上げ、砂漠を歩いては、水のボトルをあちこちに配置してきた。
 「不法移民の命を助けることで、不法移民に加担している」と保守派のFOXニュースで糾弾されたモロネス氏は「水を置くのは命を救うため。摂氏45度の砂漠を歩く幼い子どもや母親が脱水症状で死んでいく。それを黙って見ていろと言うのか」と、砂漠に落ちていた子ども用のスニーカーの片方を見せながら反論する。米政府が壁を強化すれば、監視の目をかいくぐれる僻地の砂漠での死者が増えるだけで、移民問題の根本的解決にはならないとモロネス氏は言う。

 (4)米国内の不法移民の数は1,100万人規模だ。メキシコ人の不法移入は年々減少し、中南米からの不法移民の割合が高まっている。ドラッグや犯罪者の流入を国境で阻止すると公約し、保守派の支持を取り付けたトランプ大統領にとってみれば、壁の建設は支持率を左右する死活問題だ。だが、220億ドルと試算される壁建設の資金にいまだ米議会の承認が下りない。さらに、トランプ氏自らが選んだ国土安全保障省のトップ候補が「国境全体に壁を張り巡らせる必要はない」と発言したばかりだ。
 米軍の施設が多数あるサンディエゴは、ロサンゼルスよりも保守派の地盤が強いが、住民に聞いてみると「“美しい”壁より医療に税金を注入して」「壁の下にトンネルを掘れば入ってこられるから意味がない」という声も多かった。

□長野美穂(ロサンゼルス在住ジャーナリスト)「米・メキシコ国境に建つトランプの「壁」の試作品/国境の街の反応は?」(「週刊ダイヤモンド」2017年11月25日号)
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 【参考】
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【米国】トランプ大統領が描く従来と違うレッドライン ~北朝鮮は世界の問題に~
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【中国】で日本の「どら焼き」や「カステラ」が売れない理由 ~風土で違う味覚~
【中国】ユニコーンが55社、加速する起業ブーム ~課題は人材確保~
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【米国】サンオノフレ原発の核廃棄物移転を訴えた地域住民が“勝った”理由
【欧州】カタルーニャ独立は正しい選択なのか? ~住民投票で9割支持~
【米国】トランプ大統領のころころ変わる政策に振り回される不法移民
【中国】信用情報システム「芝麻信用」とは? ~個人の信用力を点数化~
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【欧州】ドイツ自動車業界を襲うディーゼル締め出し判決 ~EV普及の契機となるか~
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【欧州】スペイン経済は大打撃、欧州金融危機の再来か ~カタルーニャ独立~
【欧州】のゴミ箱扱いに憤慨する東欧諸国 ~深まるEUの東西分裂~
【英国】の地政学的優位性がBrexitで喪失 ~領内で高まる独立気運~
【欧州】北欧も難民入国規制強化へ ~形骸化するシェンゲン協定~
【スウェーデン】文化多元主義の限界 ~移民問題~

【本】加工食品はどこから来たのか ~軍隊と科学の密な関係~

2017年11月21日 | 批評・思想
★アナスタシア・マークス・デ・サルセド(田沢恭子・訳)『戦争がつくっった現代の食卓』(白楊社 2,808円)【注】

 (1)爆薬、ミサイル、潜水艦、戦闘機--。「軍事研究」という言葉でわれわれが思い浮かべるのは、ふつう、そういうものだろう。だが、軍事研究の成果は、はるかに広く、深く、日常生活に浸透している。
 行軍中の兵士のためには、ポケットに入り、カロリーが十分で、他の栄養素も摂取できる食品が望まれた。そのためにチョコレートバーや各種のエナジーバーが案出されたのだが、それらに似た商品が、日本のコンビニエンスストアにも並んでいる。
 多数の兵士に大量の食料を供給するには、輸送コストを減らし、保存を容易にする必要がある。そこで、輸血用血漿のためにフリーズドライ製法が案出されたのだが、いまはそれが朝食用シリアルに使われている。
 旧日本軍と違い、米軍は戦場でも肉を食いたいという兵士の要求に応えた。だが、骨付き肉の巨大な塊を吊り下げたまま輸送するのは効率が悪いし、兵士ごとに食べる部位の当たり外れが生じることにもなる。無駄を省き、コンパクトに輸送できる合成肉は、そのための発明だ。
 同じような理由でプロセスチーズも発明された。

 (2)食品だけではない。
 ポリ塩化ビニリデン(サラン)を使った透明な食品用ラップや、缶詰に代わって食品の保存と携帯を容易にしたレトルト・パウチも、米陸軍の研究所から生まれた。
 米軍は、温度、湿度、pH(ピーエッチ。水素イオン濃度)、そして圧力をコントロールして、カビなどの真菌や微生物に対して一つ一つ対策を講じた。それにより、何カ月たっても食べられるピザやパンが生み出された。

 (3)本書を読んで、チーズ味のピザやスナック菓子、それに「お口で溶けて手で溶けない」チョコなど「特殊部隊と同じもの」を子どもに買い与えるのをためらう読者もいるかもしれない。
 だが、著者の意見は、驚くほど前向きである。
 何年もの間、著者は子どもたちのために毎日手作りの食事と弁当を用意していた。それは家族との触れ合いをもたらした。だが、食事の支度に手をかけずに済むのは、自由な時間を増やし、創造性を高める。いまや料理は趣味であり、特別なアートだ。・・・・そう著者は言う。
 食料の効率的な生産、保存、輸送といった軍事的合理性は、同時に経済的合理性でもあった。本書は、軍の予算が大学に投入され、産学連携によって民間企業に移転してきたさまも、活写している。
 軍事技術の日常生活への応用は、必要な栄養を安価に供給し、人類を飢餓から解放することにもなる。ハムやチーズを古代ローマの軍団が帝国内外の各地に広めたときから、軍事研究は、食事と不可分だった。

 【注】「【本】「戦争がつくっった現代の食卓」 ~ネイティック研究所~」
【本】「戦争がつくっった現代の食卓」 ~ネイティック研究所~

□玉井克哉(東京大学教授、信州大学教授)「加工食品はどこから来たのか/軍隊と科学の密な関係を読む  ~私の「イチオシ収穫本」~」(「週刊ダイヤモンド」2017年月日号)
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 【参考】
【本】80年代中世ブームの傑作 ~『一揆』~
【本】万華鏡のように迫る名著 ~『新装版 資本主義・社会主義・民主主義』~
『【本】『世界をまどわせた地図』
【本】率直過ぎる米情報将校の直言 ~『戦場 -元国家安全保障担当補佐官による告発』~
【佐藤優】宗教改革の物語 ~近代、民族、国家の起源~」」
【本】舌鋒鋭く世の中の本質に迫る/地球規模で読まれた洞察の書 ~『反脆弱性』~
【本】【神戸】「自己満足」による過剰開発のツケ ~『神戸百年の大計と未来』~
【本】英国は“対岸の火事”にあらず ~新自由主義による悲惨な末路~
【本】人材開発でもPDCAを回す ~戦略的に人事を考える必読書~
【本】仮想通貨が通用する理屈 ~『経済ってそういうことだったのか会議』~
【本】進化認知学の世界への招待 ~『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか』『動物になって生きてみた』~
【本】「戦争がつくっった現代の食卓」 ~ネイティック研究所~
【本】IT革命、コミュニケーションの変容、家族の繋がりが希薄化 ~『「サル化」する人間社会』~
【本】生命はいかに「調節」されるかを豊富な事例で解き明かす ~『セレンゲティ・ルール』~
【本】メディアの問題点をえぐる ~『勝負の分かれ目 メディアの生き残りに賭けた男たちの物語』~
【本】テイラー・J・マッツェオ『歴史の証人 ホテル・リッツ』
【本】中国から見た邪馬台国とは
【本】核兵器は世界を平和にするか ~著名学者2人がガチンコ対決~
【本】『戦争がつくった現代の食卓 軍と加工食品の知られざる関係』
【本】梅原猛『梅原猛の授業 仏教』
【本】東芝が危機に陥った原因は「サラリーマン全体主義」 ~『東芝 原子力敗戦』~
【本】バブル崩壊後の経済を総括 ~『日本の「失われた20年」』~
【本】20世紀英国は実は軍事色が濃厚 ~通念を覆す『戦争国家イギリス』
【本】時代による変化、方言など ~『オノマトペの謎 ピカチュウからモフモフまで』~
【本】冷笑的な気分に喝を入れる警告と啓発に満ちた本 ~『日本中枢の狂謀』~
【本】物質至上主義批判の古典 ~『スモール イズ ビューティフル』~
【本】日本近現代史を学び直す ~『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』~
【本】精神の自由掲げた9人の輝き ~『暗い時代の人々』~
【本】遊牧民は「野蛮」ではなかった ~俗説を覆すユーラシアの通史~
【本】いつも同じ、ブレないのだ ~『ブラタモリ』(1~8)~
【本】分裂する米国を論じた労作 ~『階級 「断絶」社会 アメリカ』~
【本】否応なきグローバル化、つながることの有用性 ~「接続性」の地政学~
【本】読書の効用、ゆっくり丹念な ~より速く成果を出すメソッド~
【本】国谷裕子『キャスターという仕事』

【中国】日本の6倍売り上げる店もローソン快進撃の理由 ~日系コンビニ初の南京出店~

2017年11月20日 | 社会
 (1)日系コンビニエンスストアの中国における2016年末の店舗数は、セブン-イレブンが1,371、ファミリーマートが1,810、ローソンが1,003。いずれも日本の店舗数の1割程度にすぎない。それが、近年急激に増加している。
 その中で最近話題なのが、日系として初めて南京に進出したローソンだ。

 (2)ローソンが南京に進出したのは2017年8月。オープンするや否や大量の客が押し寄せ、2時間で日配食品は完売、2日目以降も爆発的に売り上げ、1日当たりの売上高(日販)が11.8万元(約200万円)に達する店舗も現れた。これはローソンが中国に進出して以来の最高記録である。
 中国の一般的なコンビニの日販は6,000元(約10万円)程度で、比べものにならない水準だ。さらに、2カ月後には別の店舗でなんと20万元(約340万円)の売り上げを突破した。ローソンの日本での全店平均日販55万円の6倍もの数字をたたき出したことになる。

 (3)現地では(2)を「ローソンの南京現象」と呼んでいるが、一体何が起こったのか。
 南京でのエリアフランチャイジーである南京中央商場集団の副総裁は、大きく三つの要因を挙げる。
  (a)南京は人口800万人の大都市だが、コンビニの多くは洗練されておらず、24時間営業の店舗もない、など消費者ニーズを満たしていなかった。そこに目を付け、ローソンは一部で24時間営業の店舗を出店したところ、消費者に受け入れられた。
  (b)南京中央商場集団が店舗開拓・運営やマーケティング、物流など現地オペレーションを担当し、ローソンが商品、運営指導、コールドチェーン設備、商品棚等の管理を担当した。この歯車がかみ合った。
  (c)コンビニという業態やローソンの認知度を高めるため、SNSや屋外広告、有名人の活用やネットアイドルによる試食など、あらゆるチャネルを通じてプロモーションを行ったことが功を奏した。

 (4)その他、営業していく中で見えてきたのが、南京ではスイーツや弁当といった食品に対するニーズが高いことが挙げられる。これらの売上高に占める比率は、上海の40%に対して南京は60~70%と高く、また商品の味とコストパフォーマンスも南京人にぴたりとはまった。南京地場のコンビニではローソンが提供しているような商品を提供できていないことも勝因だ。
 今後の南京での展開は、
   ・来年の出店計画は120~150店舗
   ・このうちフランチャイズ店は80~100店舗
と計画している。そして3~5年かけて全体で300~500店舗まで増やしていく計画だ。

 (5)南京現象といわれるだけあって、現時点でフランチャイズへの加盟希望者はなんと3,000人近くもいるという。
 中国ではフランチャイズに加盟しさえすればもうかるという安直な考えの人も少なくない。どれだけ効率よく管理していけるか、という課題はある。
 だが、これだけの希望者が殺到している現状を見ると、少なくともローソン側が選べる立場にあることは間違いない。
 店舗数では、ローソンはセブン-イレブンとファミリーマートの後塵を拝している。今後、南京現象を全国に広げることができるか。

□呉 明憲(TNCリサーチ&コンサルティング代表取締役)「日系コンビニ初の南京出店/日本の6倍売り上げる店もローソン快進撃の理由」(「週刊ダイヤモンド」2017年11月25日号)
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 【参考】
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【アジア】度重なる不祥事で日本企業のイメージ失墜 ~アジア商戦にも逆風~
【中国】で日本の「どら焼き」や「カステラ」が売れない理由 ~風土で違う味覚~
【中国】ユニコーンが55社、加速する起業ブーム ~課題は人材確保~
【欧州】ドイツ議会選挙で極右政党が大躍進 ~危機感強める経済界~
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【欧州】身近で頻発するテロで苦境に陥る欧州の観光業 ~ISが戦術を転換~
【中国】住宅を入手しやすい「新一線都市」が人気 ~地方の生活水準が向上~
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【欧州】スペイン経済は大打撃、欧州金融危機の再来か ~カタルーニャ独立~
【欧州】のゴミ箱扱いに憤慨する東欧諸国 ~深まるEUの東西分裂~
【英国】の地政学的優位性がBrexitで喪失 ~領内で高まる独立気運~
【欧州】北欧も難民入国規制強化へ ~形骸化するシェンゲン協定~
【スウェーデン】文化多元主義の限界 ~移民問題~

【佐藤優】ホワイトカラーの労働者化

2017年11月20日 | ●佐藤優
 ①ライアン・エイヴェント(月谷真紀・訳)『デジタルエコノミーはいかにして道を誤るか』(東洋経済新報社 1,800円)
 ②池内敏『日本人の朝鮮観はいかにして形成されたか』(講談社 2,200円)
 ③松浦壮『時間とはなんだろう』(講談社ブルーバックス 1,000円)

 ①は、優れた現状分析兼近未来予測の書だ。
 <世界中の低スキル労働者を高学歴化するのは、おそらく低スキル労働者にとっては良いことだろう。大卒の労働者には大卒の資格のない労働者に対して相対的に大きな賃金プレミアムがあることは、今も変わらずデータに示されている。しかし学歴の階段を上った者が獲得する利益は、すでに階段の上段にいる者の犠牲によって生まれるかもしれないのだ。ただでさえ大卒者の所得が頭打ちになるか下がり、大卒者が稼ぐプレミアムは縮小する可能性がある。事実、2000年以降、豊かな国々の大卒者は意味があるほどの賃金上昇を享受していない>
 とのエイヴェント氏の指摘は重要だ。低スキル労働者の高学歴化によってもたらされるのはホワイトカラーの労働者化なのである。

 ②は、朝鮮/韓国理解のための必読書だ。
 <朝鮮人の朝鮮人としての自我認識を育む媒介項として「秀吉の朝鮮侵略」は小さくない。植民地期朝鮮では、子供が泣き止まないときに母親たちは決まってこう言ったという。「そんなに泣いていると秀吉が来るよ」と。すると小さな子供たちは、秀吉が何者なのか分からないままに、とにかく恐ろしくて泣き止んだという>
 という池内氏の指摘を深刻に受け止めなくてはならない。日本人と朝鮮人/韓国人の互いの認識のずれというものを理解することが重要である、と再認識した。

 ③は、推理小説のように面白く読むことができる。
 <「時間とはなんだろう?」という問いの果てに私たちが気付きつつあるのは、時間が、空間・物質・力を含む巨大な構造の一部であるということです。これは、地面にピョコっと飛び出している小さな石が、実は、遥か昔に埋もれた巨大な古代遺跡の尖塔の先であった、という類の驚きに似ています。
 このたとえ話になぞらえるなら、この本のお話は、「時間」と刻まれた小さな石を手がかりに、そこに連なる建物を掘り起こす発掘の旅路です。小さな石だと思っていた「時間」は、「時空」「重力」「量子場」と刻まれた建造物を絶妙に繋ぐ要石でした。これらの建物はそれ自体美しく壮麗ですが、どうやらこれらは、さらに深く埋もれた巨大な構造物の一部のようです>
 と松浦氏は表現するが、本書のおかげで「巨大な構造物」である「量子重力理論」の世界をのぞき見ることができる。こういう高度な内容を、専門知識を持たない読者に分かるように書くことができる力量を著者は持っている。

□佐藤優「ホワイトカラーの労働者化 ~知を磨く読書 第224回~」(「週刊ダイヤモンド」2017年11月25日号)
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【佐藤優】今後、起こりうる財政破綻 ~対応策を学ぶ~
【佐藤優】社会の価値観、退行する社会
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【佐藤優】中曽根康弘、21世紀の資本主義分析、北樺太の石油開発
【佐藤優】日本人の思考の鋳型、死刑問題、キリスト教と政治
【佐藤優】中国株式市場の怪しさ、イノベーションの障害、ホラー映画の心理学
【佐藤優】普天間基地移設問題の本質、外務省犯罪黒書、老後に快走!
【佐藤優】シリア難民が日本へ ~ハナ・アーレント『全体主義の起源』~

【南雲つぐみ】鴨南蛮

2017年11月20日 | 医療・保健・福祉・介護
 鶏肉よりも歯応えと甘味があるカモ肉と、ネギが入っただしでそばやうどんを食べるのが、鴨南蛮。コクがあって体が温まり、冬に食べたく味だ。
 関東育ちの筆者は、子どもの頃「鴨南蛮」とはカレー味のことだと思っていた。社会科の教科書などに出てくる「南蛮貿易」「東インド会社」から連想したものだった。
 関西地方では一説に南蛮でなくて「難波」だといわれる。由来は大阪市の繁華街ミナミで知られる難波地区だ。かつてはこの場所がネギの有名な産地だったので、大阪ではネギソバのことを「なんばソバ」といい、カモ肉とネギの炊き合わせをのせたソバは「鴨ナンバ」と呼んだとのことだ。江戸に伝わったときに、なぜか末尾に「ん」がついて「鴨南蛮」になったともいわれる。
 日本食肉消費者総合センターによれば、アイガモは「アヒルとカモの交雑種」のことを指す。一般的に流通している「アイガモ肉」は、通常肉用に肥育された肉質の柔らかいアヒル肉のことをいうそうだ。

□南雲つぐみ(医学ライター)「鴨南蛮 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年11月10日)を引用
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【南雲つぐみ】風邪を予防する条件

2017年11月19日 | 医療・保健・福祉・介護
 注意しているつもりでも風邪をひいてしまうことがある。反対に同じ家に住んでいて、一人だけかからない人もいる。
 こうした状況はなぜ起こるのか。保健所でもらった「保健の窓」という冊子からご紹介したい。
 感染症にかかる条件は「病原体がいること」「感染経路があること」「免疫力が低下していること」の三つ。逆に言うと、この三要素がそろわない限り、感染症は発生しない。、この時期、風邪やインフルエンザウイルスはどこにでも存在するが、感染経路を断ち、免疫力を上げることで対処できるのだ。
 経路について、ウイルスの感染は、「飛沫感染」「接触感染」「空気感染」の3パターンのどれかで起こる。マスクを着用すると自分の中のウイルスを飛ばさず、人の飛ばしたウイルスを防御するにも役に立つ。接触感染は、手洗いを十分にするだけでなく服やタオルをよく洗うことや、食べ物を電子レンジで十分に加熱することが、予防につながるそうだ。さらにバランスの良い栄養の摂取や運動を行うことなどで免疫力の低下を抑えて、風邪の予防に励みたい。

□南雲つぐみ(医学ライター)「風邪を予防する条件 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年11月16日)を引用
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【本】80年代中世ブームの傑作 ~『一揆』~

2017年11月19日 | 批評・思想
★勝俣鎮夫『一揆』(岩波書店、1982)

 『応仁の乱』(中公新書)に始まる室町時代ブームは、出版界にとって近年で最大の「想定外」といってよいだろう。よくある対立構図を用いず、歴史の中で翻弄され、もがく人物を淡々と描く。昨今の室町時代関連本の筆致は、英雄譚や人生訓に着目した従来の歴史読本とは一線を画している。
 もっとも、1980年代にも――偉人や支配者の記録ではない――民衆史としての中世に注目が集まったことがある。当時は網野善彦氏の著作がよく読まれたが、『一揆』も代表的な一冊だ。一揆を民衆の抵抗、一種の原初的な革命運動として捉えた視点には今日では批判もある。
 しかし、“一揆の時代”だった室町時代を理解する上で、かつてのブームを振り返る作業は実り多いものとなるはずだ。

□飯田泰之(明治大学政治経済学部准教授)「80年代中世ブームの傑作 ~名著未読・再読~」(「週刊ダイヤモンド」2017年11月11日号)
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 【参考】
【本】万華鏡のように迫る名著 ~『新装版 資本主義・社会主義・民主主義』~
『【本】『世界をまどわせた地図』
【本】率直過ぎる米情報将校の直言 ~『戦場 -元国家安全保障担当補佐官による告発』~
【佐藤優】宗教改革の物語 ~近代、民族、国家の起源~」」
【本】舌鋒鋭く世の中の本質に迫る/地球規模で読まれた洞察の書 ~『反脆弱性』~
【本】【神戸】「自己満足」による過剰開発のツケ ~『神戸百年の大計と未来』~
【本】英国は“対岸の火事”にあらず ~新自由主義による悲惨な末路~
【本】人材開発でもPDCAを回す ~戦略的に人事を考える必読書~
【本】仮想通貨が通用する理屈 ~『経済ってそういうことだったのか会議』~
【本】進化認知学の世界への招待 ~『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか』『動物になって生きてみた』~
【本】「戦争がつくっった現代の食卓」 ~ネイティック研究所~
【本】IT革命、コミュニケーションの変容、家族の繋がりが希薄化 ~『「サル化」する人間社会』~
【本】生命はいかに「調節」されるかを豊富な事例で解き明かす ~『セレンゲティ・ルール』~
【本】メディアの問題点をえぐる ~『勝負の分かれ目 メディアの生き残りに賭けた男たちの物語』~
【本】テイラー・J・マッツェオ『歴史の証人 ホテル・リッツ』
【本】中国から見た邪馬台国とは
【本】核兵器は世界を平和にするか ~著名学者2人がガチンコ対決~
【本】『戦争がつくった現代の食卓 軍と加工食品の知られざる関係』
【本】梅原猛『梅原猛の授業 仏教』
【本】東芝が危機に陥った原因は「サラリーマン全体主義」 ~『東芝 原子力敗戦』~
【本】バブル崩壊後の経済を総括 ~『日本の「失われた20年」』~
【本】20世紀英国は実は軍事色が濃厚 ~通念を覆す『戦争国家イギリス』
【本】時代による変化、方言など ~『オノマトペの謎 ピカチュウからモフモフまで』~
【本】冷笑的な気分に喝を入れる警告と啓発に満ちた本 ~『日本中枢の狂謀』~
【本】物質至上主義批判の古典 ~『スモール イズ ビューティフル』~
【本】日本近現代史を学び直す ~『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』~
【本】精神の自由掲げた9人の輝き ~『暗い時代の人々』~
【本】遊牧民は「野蛮」ではなかった ~俗説を覆すユーラシアの通史~
【本】いつも同じ、ブレないのだ ~『ブラタモリ』(1~8)~
【本】分裂する米国を論じた労作 ~『階級 「断絶」社会 アメリカ』~
【本】否応なきグローバル化、つながることの有用性 ~「接続性」の地政学~
【本】読書の効用、ゆっくり丹念な ~より速く成果を出すメソッド~
【本】国谷裕子『キャスターという仕事』


【本】万華鏡のように迫る名著 ~『新装版 資本主義・社会主義・民主主義』~

2017年11月17日 | 批評・思想
★シュムペーター(中山伊知郎・訳)『新装版 資本主義・社会主義・民主主義』(東洋経済新報社、1995)

 資本主義は成功するが故に崩壊し、社会主義に移行する──という主張も注意深く読み取らなくてはならない。本書にはアイロニーがたっぷりと効いていて、字面をそのままの意味通りに取るのは危険だ。人を驚かすような重厚かつ新奇な分析の底に現代文明への深い諦念があることが、その背景だろう。
 中でも、民主主義における政党とは、原理・原則を推進する集団ではなく権力獲得を目指して競争する企業のようなもの、と喝破したことは、今こそ真実味を持って受け止められよう。読み手のその時々の関心により、古典は万華鏡のように異なる姿を見せる。まさに、味読・再読にふさわしい名著といえよう。

□若田部昌澄(早稲田大学政治経済学術院教授)「万華鏡のように迫る名著 ~名著未読・再読~」(「週刊ダイヤモンド」2017年11月18日号)
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 【参考】
『【本】『世界をまどわせた地図』
【本】率直過ぎる米情報将校の直言 ~『戦場 -元国家安全保障担当補佐官による告発』~

【佐藤優】宗教改革の物語 ~近代、民族、国家の起源~」」
【本】舌鋒鋭く世の中の本質に迫る/地球規模で読まれた洞察の書 ~『反脆弱性』~
【本】【神戸】「自己満足」による過剰開発のツケ ~『神戸百年の大計と未来』~
【本】英国は“対岸の火事”にあらず ~新自由主義による悲惨な末路~
【本】人材開発でもPDCAを回す ~戦略的に人事を考える必読書~
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