語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【南雲つぐみ】1日2食か3食か

2017年11月03日 | 医療・保健・福祉・介護
 そばなどの屋台の飲食店が登場したのは、江戸時代の初めごろ。当時は朝夕の1日2食だったそうだ。町人や農民は午前7時か8時に朝食をすまし、夕飯は午後4時から5時ごろだったという。だが時代と共に活動時間が増えて、夜が長くなる。「小腹がすく」ことも多くなり、屋台のそばは、もっぱら夜食として広まったのだそうだ。
 午後2時から4時の「八つどき」に何か食べる「おやつ」の習慣も、もともと江戸時代の風習だったらしい。食生活が豊かになってきたのと共に産業が盛んになり、仕事で忙しい人が増える。脳もよく使うようになる。朝食から夕方まで何も口にしないのは、持久力がなくなるのだろう。
 江戸時代後期には1日3食になったようだ。今日では厚生労働省も「1日3回規則正しく食べる」ことを奨励しているが、長い歴史から見ると、食事量としては1日2食でおやつか夜食を軽く食べるくらいがちょうどいいのかもしれない。現代社会が昔より脳を酷使する生活だとしても、1日3回食事を取ったらおやつや夜食はいらないのではないだろうか。

□南雲つぐみ(医学ライター)「1日2食か3食か ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年5月26日)を引用
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【本】人材開発でもPDCAを回す ~戦略的に人事を考える必読書~

2017年11月03日 | 批評・思想
★大湾秀雄『日本の人事を科学する 因果推論に基づくデータ活用』(日本経済出版社 2,300円)

 (1)働きやすい職場として知られる米グーグル。かつて従業員の採用には、16~25回の面接を行っていたという。しかし、5回目以降の面接は採用の精度に1%しか影響を与えないことを統計的に発見する。その後の面接は4回とし、採用に費やす日数は大幅に短縮された。

 (2)私たちが新製品や新サービスを売り出す際、計画を立て(Plan)、実行する(Do)だけでなく、それを評価し(Check)、改善を施す(Act)というPDCAサイクルを回すのが今や一般的だ。しかし、人事回りについては計画を実行するまでで、入社後の業績にどれほど貢献したとか、良い人材を効率よく見出せたとか、グーグルのように客観的なデータで評価し、採用方法を見直すことはしない。

 (3)本書は、人事経済学の第一人者が、データを活用して望ましい人事の仕組みや戦略をいかに構築するか、具体例を基に一般に向けて平易に論じたものである。かつては同質的な従業員ばかりだったから経験や勘でも対応できたが、人材やキャリアパスの多様化が進む現在、データ分析なしでは人材開発も機能しない。官民を挙げて働き方改革が進行中だが、具体的にどう対応すべきか悩む人事担当者に大きなヒントを与えてくれる。
 取り上げるテーマは、採用の効果測定、優秀社員定着のための施策、中間管理職の貢献度の測定という昔ながらの問題から、女性活躍推進、働き方改革、高齢化への対応など新たな問題も網羅する。

 (4)では、人事部は具体的に何から始めるか。第一に、人事上の意思決定に用いたデータを全てデジタル情報として保存する。第二に、人事データを一元管理する。第三に、統計リテラシーの高い人を人事部に最低1人は配置する。第四に、統計ソフトを導入する。第五に、業務ごとに業績指標を設置し、PDCAサイクルを回す。
 人事部の役割そのものも大きく変わらざるを得ない。これまでは人材開発を一手に担ってきたが、多様化する人材の育成やワークライフバランスの問題は、現場での対応がより効率的だ。それ故、中間管理職に権限を与えて解決を図ると同時に、人事部は現場から集めた情報を基に人事制度が有効に機能しているか、客観的なモニター役に徹することになる。

 (5)米国の大企業では、中間管理職がより高いポストに昇進するための条件として、後継者育成計画の策定が求められる。危機管理の側面もあるが、真の目的は部下育成のインセンティブを持たせることと、タレント・マネジメントの基礎情報を揃えることだ。日本企業も導入を検討すべきだろう。

□河野龍太郎(BNPパリバ証券経済調査本部長)「人材開発でもPDCAを回す/戦略的に人事を考える必読書 ~目利きのお気に入り~」(「週刊ダイヤモンド」2017年10月21日号)
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