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2010年1月29日開設
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大岡昇平+社会問題・社会保障

【欧州】スペイン経済は大打撃、欧州金融危機の再来か ~カタルーニャ独立~

2017年07月27日 | 社会
 (1)1970年代、スペインはフランコ独裁政権による長い抑圧から解き放たれた。カタルーニャ州では独自の文化や言語への回帰現象が見られた。
 それから40数年、再び同州が独自色を強めている。

 (2)カタルーニャは、10月1日に独立を問う住民投票を行うことを決めた。独立の票が残留を上回った場合、48時間以内にスペインからの独立を宣言すると公表した。独自の憲法はもちろんのこと、軍隊、中央銀行、税務署などを設置し、海外からの融資を呼び込もうとしてる。
 住民投票を10月1日にした理由は、英国のEU離脱に伴い、ロンドンにある欧州医薬品庁の移転先としてカタルーニャの州都、バルセロナが最有力候補に挙がっているからだ。EUは7月末までに候補地を絞り込み、10月に決定する見込みだ。
 カタルーニャはこの決定前に住民投票を行い、欧州医薬品庁の誘致をEU加盟への道筋にしようと考えている。
 欧州委員会は、カタルーニャが独立してもEUへの参加を認めない姿勢だった。しかし、態度が軟化してきている。とはいえ、EU加盟には全27カ国の承認を得なければならい。当然ながら、スペインは首を縦に振らないだろう。

 (3)2012年の時点では、独立57%、残留20%と明らかな差があった。
 2014年の住民投票では80%以上が独立に票を投じた。ただし、投票所に足を運んだ住民は、投票権のある540万人のうち、たった4割(220万人)だった。
 それが、2016年12月時点では(州政府の調査)、45.3%が独立、46.8%が残留を支持と、ほぼ均衡している。EU加盟が容易でないことに加え、Brexitを目の当たりにして、EU離脱のマイナス面に対する懸念が広がっているのだろう。

 (4)カタルーニャは、スペインの人口の15%、経済の20%を占めている。スペインでは最も生産性が高い地域で、1人当たりのGDPはスペインの平均に比べて20%ほど高い。ポルトガルと同規模の経済を持ち、スペインの流通の重要拠点でもある(輸出の70%を取り扱う)。
 スペインは、欧州債務危機の際に緊縮財政という誤った処方箋をEUから与えられた。その結果、重い債務と高い失業率(約25%、若年層では約50%)に苦しむ。カタルーニャが独立し、稼ぎ頭が出ていってしまえば、EU第5位のスペイン経済は間違いなく揺らぐ。そうなれば、スペイン発の金融危機が再来する可能性は高い。

 (5)だから、スペイン政府はいかなる住民投票も無効と見なす、という姿勢を崩していない。
 2014年に住民投票を行ったカタルーニャ自治州政府の、アルトゥール・マス首相(当時)に対し、2年間の公職就任禁止措置を取った。
 また、独立を強行した場合は、憲法155条(地方政府の権限凍結)を適用する方針だ。州政府による自治がスペイン民主主義の目玉だったのだが、政府はそこまで追い詰められているわけだ。政府の対応は、12月に行われる総選挙にも強い影響を及ぼす。
 しかし、155条の適用は明らかに逆効果だ。独立派、残留派の区別なく、80%のカタルーニャ住民が住民投票を望んでいるからだ。中央政府が強権的に出れば、独立派の票は伸びる。スペイン政府は微妙なかじ取りを迫られている。

□竹下誠二郎(静岡県立大学経営情報学部教授)「カタルーニャ独立ならスペイン経済は大打撃/欧州金融危機の再来か」(「週刊ダイヤモンド」2017年7月29日号)
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 【参考】
【欧州】のゴミ箱扱いに憤慨する東欧諸国 ~深まるEUの東西分裂~
【英国】の地政学的優位性がBrexitで喪失 ~領内で高まる独立気運~
【欧州】北欧も難民入国規制強化へ ~形骸化するシェンゲン協定~
【スウェーデン】文化多元主義の限界 ~移民問題~


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