メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

オルガ・ノイヴィルト「オーランドー」

2022-05-22 09:41:54 | 音楽
歌劇:オーランドー
作曲:オルガ・ノイヴィルト、原作:ヴァージニア・ウルフ
指揮:マティアス・ピンチャー、演出:ポリー・グレイアム
衣装:コムデギャルソン(川久保玲)
ケイト・リンジー(オーランドー)、アンナ・クレメンティ(語り手)、エリック・ジュレナス(守護天使)、コンスタンス・ハウマン(エリザベス女王ほか)
2019年12月18、20日 ウィーン国立歌劇場 2022年5月 NHK BSP
 
ウイーン国立歌劇場150周年記念で2019年に上演されたもののうちの一つで、これは新作である。
 
ヴァージニア・ウルフの原作で、なかなかわかりにくいのだが、おそらくエリザベス1世からどちらの性か自分でも意識しないで生きてきてあるとき女性になってしまった(自覚してしまった)オーランドー(作者)の前半生(?)がまず描かれる。いろいろな時代のいろいろな事件、問題が出てくるが、多様、多彩な背景だからここに起用されたコムデギャルソンの多くの衣装が効果を見せている。
 
ただ音楽はというと、あまり流れない瞬発的な効果をねらった劇伴のように聴こえた。
 
原作はヴィクトリア朝時代の女性にとって問題が多かった時期のあとあたりで終わっているようだが、このオペラではそのあとの大戦、原爆などこの上演の2019年までが描かれている。この後の部分は前半よりは音楽が流れているように感じたが、それは作曲者の意図だろうか。
 
2幕3時間あまりの本作品、私にとって見続けるのは難しいと思ったが、なんとか最後までいったのは、ひとえに主役オーランドーを演じたのが私が大ファンであるケイト・リンジーだったからである。ほぼ出ずっぱりで大変だったと思うし、メゾ・ソプラノとはいえ前半はずいぶん低い音域も続いた。この人あって成り立った上演にはまちがいないところだろう。

彼女のレパートリー、いわゆるズボン役といわれているけれど、オクタヴィアン(ばらの騎士)タイプではなく、もう少しあぶないというか、偏った要素がある役で聴かせる、見せるところがある。ケルヴィーノ、ニクラウス(ホフマン物語)、ネロ(アグリッピーナ)など、これだけ興味を続けさせてくれる歌手はめずらしい。
 
ピンチャー指揮ののオーケストラ、この長丁場の新作、ロック・バンドも入って大変だったろうがよくやりとげた。
2019年の記念上演には先にとり上げた「影のない女」もあり、レパートリーの広さはさすがシュターツ・オパー。
 

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