メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

ハチミツとクローバー

2006-09-21 22:01:20 | 映画
「ハチミツとクローバー」(2006年、116分)
監督・脚本: 高田雅博 原作: 羽海野チカ
櫻井翔、蒼井優、伊勢谷友介、加瀬亮、関めぐみ、堺雅人、西田尚美
  
美大の教師(堺雅人)の周囲に集う様々なアート分野をめざす若者達、その5人はみんな片思い。そして彼ら彼女らは相手のために何が出来るか葛藤模索する。しかし何もできない、それが互いにわかったとき、そこから何かが始まっていく、という話である。
それぞれ皆が創作という孤独な行為を生活の中心に据えているから、他人のために何かが出来るはずはないことがわかるまでの過程はシンプル、そうでない場合のようにぐちゃぐちゃにはならず、そのあとを見ることが出来るといっても偽善的なものにはならない。
この作品のプロットが、たまたまかもしれないがうまく出来ているところである。
 
そして美大を舞台にしたコミックが原作だからか、映画もアート系のバックをうまくつかって、イメージのつながりでうまく進めようとしている。それは半分成功しているが、途中弛緩して退屈するところもあり、もっとカットしてもよかったかもしれない。
 
そういう進行と、あまりしゃべらないという設定の主人公はぐに蒼井優の演技は、ぴったりはまった。それに蒼井が数少ない言葉を発するときのスローモーションのような見事な表情、オペラの音楽に乗せて大胆な抽象画を描く動作、なんと気持ちがいいことだろう。
 
主人公の1人竹本だけが、役柄も演ずる櫻井翔もアート系に似合わず普通である。彼が映画を見ている普通の人、こちら側の代表という役割をも担っているようだ。
 
繰り返して言うと、この作品を見ると、何か文章で書かれたアイデア、オリジナル脚本などとは異なった出発点の映画もあるのだ、その作りは違うのだ、ということがわかる。
 
伊勢谷友介、「嫌われ松子の一生」と同様ちょっと変わった人の役で特色を出しやすいということはあるが、好演。
 
題名の「ハチミツとクローバー」はエミリー・ディキンソンの詩、
「草原を作るのに必要なのは/一匹のミツバチ、一房のクローバー、そして夢見る心/もしミツバチがいなくても、夢見る心が草原を作るだろう」
から取ったそうである。
夢見る心は、ある不可能の先にはたらくものだからか。
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