「ワイルド・バンチ(The Wild Bunch)」(1969米、146分)
(オリジナル・ディレクターズ・カット)
監督・脚本: サム・ペキンパー
ウイリアム・ホールデン、アーネスト・ボーグナイン、ロバート・ライアン、ウォーレン・オーツ、ベン・ジョンソン、エドモンド・オブライエン
スローモーションをうまく使ったヴァイオレンス・アクション場面の美しさが語り草、サム・ペキンパー伝説の最高傑作と言われている。今回初めて見た。
これだけ丁寧に美しく撮った西部劇、アメリカのアクション映画も稀だろう。焦点深度の深いカメラ、大スクリーンで見たらどんなにと思わせる。そこはヴィスコンティに匹敵するといってもおかしくない。
1910年代のテキサス、メキシコの社会・政治情勢が不安定な中で、ギャング、賞金稼ぎ、軍閥などが交錯する。ウイリアム・ホールデン率いるならず者、それを追うものたち、大きな力に動かされていると言うより、一度入り込んだら止められない流れの中で動いていく、それはいい。場面から場面へ、乾いたトーン・タッチで説得力はある。見ていて退屈はしない。そしてメキシコ音楽の使い方、細かい音のひろい方も効果的だ。
しかしいいところはそこまで。最後の20分、このアクションが映像として最も素晴らしいのは確かなのだが、そこに入る動機がなんとも甘い。見つめる視線が弱い。それがいい、男のなんとかという人もいるだろうが、この映像2時間の後がこれでどうするのか。センチメンタルになってはいけない。
ウイリアム・ホールデン以下のならず者たち、演技は皆いいが、一番雰囲気あるのはわけありの追手を演じるロバート・ライアン、体、顔つきの疲労感など、彼の結末にも納得である。
女性の扱い方には30年以上前でも批判はあったに違いない。ストーリーの必然性を考えてもちょっとひどい、まったく絡みがないほうがまだしもだろう。
冒頭、恐ろしいサソリが多数の蟻(?)に襲われて弱っていく、それに火がつけられ子供達が見ているところが意味ありげに何度か出てくる。何かわかりやすい予言的な場面だが、センスは悪くない。