メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

女王陛下のお気に入り

2020-02-10 18:07:49 | 映画
女王陛下のお気に入り(The Favourite、2018アイルランド/米、120分)
監督:ヨルゴス・ランティモス、脚本:デボラ・デイヴィス
オリヴィア・コールマン(アン女王)、エマ・ストーン(アビゲイル)、レイチェル・ワイズ(サラ)
 
18世紀初頭、イギリスのアン女王の世、侍女で存在感を示すサラのところに、父親の失敗から外に出され男にいたぶられていた従妹のアビゲイルが頼ってくる。
 
アビゲイルはサラの手伝いから入るが、次第に女王に気に入られ、それはサラも警戒し、嫌うところとなって、ついに、三人の関係に大きな変化が起きていく。
 
時間的にそう長い経過は描かれないし、場面もほとんど宮殿の中、三人の女性とそれにかかわる男たちだから、脚本の面からは舞台劇を見ている感じなのだが、映像的に細かいところが効いてきていて、三人に対するカメラワークも相まって、効果を出している。
 
見え方はいくぶん控えめだが、女王とサラは幼馴染で同性愛関係にあり、それを知ったアビゲイルも女王と性的関係を持ち、サラには脅威となってくる。
女王は17人の子供を産んだが、すべて死なせてしまったらしく、それが二人との関係に影を落としていることが想像されるようになる。
 
途中まではなんだか三人ともいやな女のキャラクターだし、進行も男の史劇のように力技が効くところもほとんどないわけだが、これはこの女優たちの演技力なのか、妙に納得して最後まで見た。
 
オリヴィア・コールマンはこれでオスカーを取ったそうだ。確かに理解が難しい女王の役を、理解が難しいのによくというのは変だが、まあいろんな場面を細かく演じ分けているとでもいったらいいか。
エマ・ストーンは新参ものからのし上がっていく女を熱演。
 
しかし見終わってなるほどと感心したのは、結果として損な女の微妙な表情を表出し、演じ分けているレイチェル・ワイズだろうか。実年齢はコールマンより少し上なのだが、きつめの美貌も見栄えがあった。
 
ところでこのアビゲイルという名前、英文学で見た記憶はないので調べてみたら、侍女役で使われることがある名前だそうだ。また思い出したのはヴェルディの「ナブッコ」でナブッコが女奴隷に産ませた娘がこの名前、王室を脅かす強い女になる。

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