メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

私は、マリア・カラス

2020-02-16 15:30:41 | 映画
私は、マリア・カラス (私は、マリア・カラス、2017仏、113分)
監督:トム・ヴォルフ
 
マリア・カラス(1923-1977)の公演、歌唱、インタビューからなるドキュメンタリー映画である。彼女はほぼ私の親の世代であるから、その全盛期を知っているかというとちょっと微妙なところはある。私は若いころクラシックでは器楽曲、オーケストラ曲、一部のリートなどが主で、オペラに関しては、その評判が耳に入ってくる以上ではなかった。それに今のように映像は出回っていなかったし、オペラの録音全曲盤はやすやすと買い求められるものではなかった。それでもカラスに夢中になっている同世代の人がいなかったわけではないが。
 
オペラをもう少し聴くようになってからだろうか、今も手元にカラスの「ノルマ」、「ルチア」、「トスカ」の全曲LPが残っている。何度かの処分時期にも、ボックスは残したかったのかもしれない。
 
さて、今回の豊富な歌唱シーンで、特にベルカントオペラのレパートリーを聴くと、その見事に磨かれた強さに打たれる。この分野での表現力を彼女が一段と高めたことは確かである。その一方で、演じているときのその役のふくよかな色というか、それが感じられず、長く聴くと少し疲れるという感は持った。それは感じ方の問題といったらそれまでだが。
第一線で活躍したのは案外短く、10年くらいだったらしい。ベルカントはヴェルディやワーグナーなどのドラマティックなものと比べると、比較的長持ちするはずだが、あの強さが寿命を短くしたのかもしれない。私生活上のさまざまな問題とは別に。
 
彼女については、今回まで知らなかったことも多く、生まれはニューヨーク、フランスでの生活もあったからか、フランス語も流暢で、インタビューはほとんど英語、フランス語である。
 
昨今のスキャンダル報道においては、マイクを向けるとノーコメントや不機嫌な対応が多いけれど、カラスの場合それはない。微妙な場面でも適格に応えている。頭のいい、コミュニケーション力があるひとのようだ。
 
この種のもの、フランスで作られるとなかなかいいものができる。ほかに例えばイヴ・サン・ローランに関するものとか。
最後のクレジットが右半分で流れ、左半分はモノクロで彼女が「私のお父さん」を歌う(指揮しているのはジョルジュ・プレートル)、見終わった感じがしっとりするセンスの良さ。
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