メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

ヴェルサイユの宮廷庭師

2017-01-11 14:52:52 | 映画
ヴェルサイユの宮廷庭師(A Little Chaos、2014英、117分)
監督:アラン・リックマン
ケイト・ウィンスレット(サビーヌ・ド・バラ)、マティアス・スーナールツ(ル・ノートル)、アラン・リックマン(ルイ14世)、ヘレン・マックローリー(マダム・ル・ノートル)
 
ルイ14世がヴェルサイユ宮殿を作らせたときの庭師がル・ノートルという人であったということは聞いていた。その下にいた女性庭師(バラ)の話で、どこまでが本当かわからないが、面白い設定である。
 
これまでにない大きな庭園だから、助手が必要ということで募集をする。バラも応じるが、秩序を第一とするル・ノートルの方針とはちがう違うイメージを彼女は持っていて、それが明らかになって合格はあきらめていたのだが、自分の世界にちがう分子を入れることを考えたル・ノートルは彼女を採用する。
 
それからの、難航する工事、宮廷の権謀術数、愛人関係などがからんで、なかなかうまくいかない中で、まっすぐ筋を曲げない彼女が苦労しながら、少しずつ成功していく、というところは予想通り。
ドラマチックではないが、一つの山は、ルイ14世に初めて公式に拝謁し、薔薇の本質について述べるところ、植物の生命の本質と美を言いえて妙である。
 
造営プロジェクト自体の完成までの困難とその克服というものは映画では描き切れていない。映像的に(まあ予算的にも)無理だったか。今ならドローンで撮影してCGという手もあるはずだが、それはこの脚本とは本質的にずれているということか。
宮廷の一室で、女性ばかりが集まって盛り上がっているところに、初めて参内したバラが案内される。この場面、大奥というか今の女子会というか、面白おかしく作られている。
 
アラン・リックマンは俳優としてよく見ていて、幅のひろい名優だが、監督は2作目とか。本当はもっと起伏のある映画で見てみたい。またルイ14世役は、風貌特に恰幅が立派すぎるけれど、台詞のないところの演技もふくめなかなかである。
 
ケイト・ウィンスレットは若いころのイメージからすると、どんどんいい俳優になってきていて、ここでもパワフルであるところと、前夫と娘を亡くしたときのことに苦しみ続けていることの相克を、よく受けとめた演技になっている。
 
ル・ノートル役のスーナールツは知らない人で、ちょっと線が細い感じだが、役柄には合っているだろう。


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