メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

ロッシーニ「セビリアの理髪師」(グラインドボーン2016)

2017-01-12 16:32:52 | 音楽一般
ロッシーニ:歌劇「セビリアの理髪師」
エンリケ・マッツォーラ指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、演出:アナベル・アーデン
ビョルン・ビュルガー(フィガロ)、ダニエル・ドゥ・ニース(ロジーナ)、テイラー・ステイトン(アルマヴィーヴァ)、アレッサンドロ・コルベルリ(バルトロ)
2016年6月17日、21日 グラインドボーン音楽祭歌劇場、2016年11月 NHK BSPre
 
大げさな言い方だが、この上演でようやく「フィガロの結婚の結婚」の呪縛から抜け出た感じがする。
 
いうまでもなく「セビリアの理髪師」は「フィガロの結婚」の前日譚ともいうべきもの、つまりアルマヴィーヴァ伯爵がロジーナをゲットするまでの話で、ロジーナの後見人バルトロ、音楽教師バジーリオ、そして何でも屋の理髪師フィガロがここでも登場する。
 
フィガロより後に作られたということもあって、見る方は伯爵家の情景が頭にあるし、それは演出する側にもあるだろう。メトロポリタンのよくできた上演でも、ディドナートの見事なロジーナともども、何か上品なところはあった。セビリアの市井の人たちの中にアルマヴィーヴァが入ってくるわけだが、ロジーナは二階の窓の令嬢のイメージ(箱入り)のイメージが強い。
 
ところがこの上演では、まず舞台装置がコンパクトによくできていて、上と左右がはっきり縁取りされており、背後が紺地になかなか素敵な花と葉(?)のデザインされたものになっている。人間関係、そのやりとりがわかりやすい室内劇のドタバタに終始するから、連想するのはあのコメディア・デラルテ。考えてみれば、ロッシーニの「ラ・チェネレントラ(シンデレラ)」、「オリー伯爵」そしてドニゼッティの「ドン・パスクワーレ」などとこの「セビリアの理髪師」は同類といえなくもない。
 
この演出、演奏はそういう流れで楽しく見ることができる。ロジーナ、フィガロ、アルマヴィーヴァ、皆はじけている。
 
フィガロとアルマヴィーヴァは姿も似ていて、何かいたずらを一緒にやっている雰囲気で、動きもいいし、歌も軽快である。
ロジーナ役のドゥ・ニースは元気はつらつで、ロッシーニのこの種の主役そのもの。そしてロッシーニは多くの作品で最期に女性が自立してしあわせをつかむという形に持っていくが、ここでもそう。それに彼女はぴたりとあっている。
 
指揮者が舞台上の人たちとかけあう場面がいくつか設定されており、そのこなしと軽快なブリオで通したマッツォーラの指揮もよかった。



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