メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

マイスキー/アルゲリッチ

2008-10-04 23:08:18 | 音楽一般
マイスキー&アルゲリッチ ライブ・イン・ジャパン
2000年11月京都でのライブ録音CD(2001年、DG)
ショパン「チェロ・ソナタ」、フランク「チェロ・ソナタ」、ドビュッシー「チェロ・ソナタ」、ショパン「序奏と華麗なるポロネーズ」
 
もう10年以上前からアルゲリッチの録音はほとんどライブであり、また演奏会でもソロはほとんどない。それもあって、新しく出るCDもいつかあまり注意しなくなっていて、これも見落としていた。
 
レコード芸術9月号に吉田秀和がわざわざ取り上げていたのを読んで、店に行ったがなく、日本だけで出たものかもしれず、ネットでも新品はない状態であった。ところが同じ店にしばらくして他のものを買いに行ったときにもしやと見てみたらなんと一枚、、、
おそらく吉田の文章の影響もあって、どこかから探してきたのだろう。これはありがたい。
 
どうしても聴きたかったのは、ショパンのチェロ・ソナタだったからである。ショパンが書いたピアノ以外の曲はそんなにないが、中でチェロ・ソナタは優れたもので、多くのチェリストのレパートリーになっているのは以前から知っていた。知ってはいたもののチェリストのリサイタルで聴いた覚えはなく、LP、CDも買ったことはない。放送で聴いたことはあったかもしれないが記憶はない。
 
そのチェロ・ソナタは、ショパンとしては一度聴いたら忘れないというほどのメロディーではないものの、聴きやすく、ゆっくり大きく展開していく様は、気持ちがいい。そしてマイスキーがまた、こんなに軽くストレスがない弾き方が出来るのかと、軽く踊るような様で進んでいく。アルゲリッチのピアノとともに楽しめた。
 
ただ他の曲を比べるとなにかボーイングが軽すぎないかと思った。この曲はシューマンの曲の後に演奏され、その後休憩に入ったはずで、そうするとこのCDの他の曲は後半の演奏。休憩でマイスキー自身が何か変えたのか、録音サイドで設定を変えたのか、単にマイスキーの直感的な振りなのか。小さなことではあるけれど。
 
フランクの曲はまさにあのヴァイオリン・ソナタをチェロで弾いたもの。これはよくあるそうだ。マイスキーの音色、タッチもあるのか、こっちのほうがしっくりくる感じもあり、説得力もありそうだ。ただこの演奏ではヴァイオリンのときに見られる聴く側の神経に刺激を与えるようなフレーング、それによって何かくっきりと形を示していくという効果ななくなっている。
 
ドビュッシーは、これまで聴いた何人かの演奏とは違って、これももっと太く伸びやかな演奏となっている。また、第3楽章の諧謔のモダーンな度合いといったらいいか、そのあたりはマイスキーが弾いているということが頭にあるからだろうか、まさにストラヴィンスキーやプロコフィエフのモダーンにつながるものである。
 
そして最後、アンコールに弾かれたもう一つのショパン「序奏と華麗なるポロネーズ」。こういう曲があるから、ショパンは油断がならない。
覚えやすい、効果絶大、といえばそうだが、何度も聴くに耐える素晴らしいものである。作品3だから若いときで、そのあとすぐ作品22が生涯の傑作「アンダンテ・スピアナートと華麗なるポロネーズ」である。
 
この演奏、もう二人にぴったりであって、考えないで弾いても見事にはまってしまっている。その何も不安のない、ためらわないということが、単なるブラブーラ、見得でなく、聴いていても音楽のよろこびを実感できる数少ないケースになっている。
特にアルゲリッチは、いくつかの部分では二人であわせるなどということを超えて、飛び出してくる。いくつかのフレーズで、フレーズのまとまりは「華麗」だが、その中の一つの音が飛び抜けて「ブリリアント」で、「あっ、これこれ、これがアルゲリッチの輝ける音」と聴くのだ。
 
この曲も実はチェロ・ソナタと同様、意識して聴いたのは初めてである。ところが違うのは、曲名は知らないのに、このフレーズは記憶があることだ。思い起こしてみるのだがわからない。映画「戦場のピアニスト」で使われたかなと思ったが、サントラ盤の曲名リストにはなかった。

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