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Dryden, ("Ah, how sweet it is to love!")

ジョン・ドライデン(1631-1700)
(「ああ、恋することって、なんて素敵!」)
(『暴君の恋』より)

ああ、恋することって、なんて素敵!
ああ、若くて、恋い焦がれるって、なんて楽しい!
なんて気持ちいい痛み!
はじめて恋の炎にふれたときって!
恋の痛みはずっと素敵、
他のすべての楽しみより。

ため息でも、恋する人がつけば、
静かに心が浮かびあがる。
ひとり流す涙でも、恋する人が流せば、
したたる香油のように傷をいやす。
息絶えるとき、恋する人は、
血を流しつつ安らかに逝く。

〈愛〉と〈時〉には敬意を払って。
去りゆく友のように大切にして。
金色の贈りもの、若さの盛りに
〈愛〉と〈時〉がくれる贈りものを拒まないで。
年ごとに、手に入りにくくなって、
年ごとに、難しくなっていくから。

愛は、泉の水のようになみなみと、
若い人すべての血にあふれる。
でも、流れるたびにそれは減り、
やがて枯れてしまう。
年老いたときに流れるのは、
雨だけ。にごって流れる雨だけ。

* * *
John Dryden
("Ah, how sweet it is to love!")
(From Tyrannick Love)

Ah, how sweet it is to love!
Ah, how gay is young desire!
And what pleasing pains we prove
When we first approach love's fire!
Pains of love be sweeter far 5
Than all other pleasures are.

Sighs which are from lovers blown
Do but gently heave the heart:
E'en the tears they shed alone
Cure, like trickling balm, their smart. 10
Lovers, when they lose their breath,
Bleed away in easy death.

Love and Time with reverence use,
Treat them like a parting friend;
Nor the golden gifts refuse 15
Which in youth sincere they send:
For each year their price is more,
And they less simple than before.

Love, like spring-tides full and high,
Swells in every youthful vein; 20
But each tide does less supply,
Till they quite shrink in again:
If a flow in age appear,
'Tis but rain, and runs not clear.

* * *
劇中で、魔法使いに呼び出された異教の精霊
ダミルカー(Damilcar)が、眠っている
聖カタリナに対してこの歌を歌う。そして
カタリナの守護霊アマリエル(Amariel)に
こっぴどく怒られる。

カルペ・ディエム(Carpe diem)--将来のことを
あれこれ考えるのではなく、今を生きよう/若いうちに
恋をしよう、というテーマ--の一変奏。Herrick,
"To the Virgins" や Marvell, "Coy Mistress" など
ばかりがとりあげられるが、他の詩人たちのものも
もっと読まれるべき。

また、政治詩・宗教詩(つまり、時の情勢を反映する詩)
以外のドライデンももっと評価されるべき。

思うに、この詩のいいところは、スタンザ1の浮かれ
具合とスタンザ4の枯れ具合の落差、およびスタンザ
2-3の比喩の繊細さ。ため息で心が浮かぶ(たとえば
風船のように)とか、愛や時間は去りゆく友のよう、
とか。

* * *
英語テクストは、The Works of the British Poets
(1795) vol. 6 より。
http://books.google.co.jp/books?id=ezdjAAAAMAAJ

* * *
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