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夏目漱石、『虞美人草』

夏目漱石、『虞美人草』

(これもまた)「文芸と道徳」にあるような旧道徳・
浪漫主義と新道徳・自然主義の対立を背景とする作品。

「旧」の側の勝利・優越をわかりやすく描いていることが
特徴。そこに以下のものなどが重ねられている。

1
クレオパトラの魅力のような、道徳を超えたカリスマ性。

2
自己愛に溺れたナルキッソスは死んで水仙となった、
というようなオウィディウス『変身物語』風のイメージ。
自己愛と利己主義に溺れて藤尾は死に、(ある意味で)
虞美人草(ヒナゲシ)となる。

3
ラファエル前派が描いたようなケシ--ヒナゲシ ≒
アヘンゲシ、本当は別種だがイメージのうえで混同
される--がもつ、美しき悪、美しき頽廃、などという
イメージ。

つまり、内容的には「旧」サイドの勝利だが、
イメージとして支配的なのは藤尾が体現する「新」サイド。

* * *
文体的には、初期短編のような詩的・漢文的・美文体的
なスタイルと、スターンの『シャンディ』やバイロンの
『ドン・ジュアン』のように時おりナレーターが叙述に
直接介入するスタイルを並行させる、という実験がなされて
いる。

以上、私見まで。

* * *
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