goo

Rossetti, "Autumn Song"

D・G・ロセッティ(1828-1882)
「秋の歌」

わかりませんか、木の葉がおちるのを見ると、
どれほど心にけだるさと悲しみを感じるか、
まるでそれらを身にまとっているように。
いかに眠りが美しく感じられることか、
秋に木の葉がおちるのを見ると。

頭のなかの早い鼓動が
いかに遅くなることか、無駄ですから、
秋に木の葉がおちるのを見ると、
わかりませんか? いちばんの
幸せは痛みがないこと、と思われてくると。

わかりませんか、木の葉がおちるのを見ると、
いかに魂が、乾いた麦わらのように
根こそぎ刈られて縛られる気がするか、
どれほど死がすてきなことに思われるか、
秋に木の葉がおちるのを見ると。

* * *

D. G. Rossetti
"Autumn Song"

Know'st thou not at the fall of the leaf
How the heart feels a languid grief
Laid on it for a covering,
And how sleep seems a goodly thing
In autumn at the fall of the leaf?

And how the swift beat of the brain
Falters because it is in vain
In autumn at the fall of the leaf,
Knowest thou not? and how the chief
Of joys seems not to suffer pain.

Know'st thou not at the fall of the leaf
How the soul feels like a dried sheaf
Bound up at length for harvesting,
And how death seems a comely thing
In autumn at the fall of the leaf?

* * *

「いちばんの幸せは痛みがないこと」
なんて正しく、正しくない・・・・・・

* * *

この詩の独特な雰囲気の背後にあるのはアヘン。
これを書いた1848年(20歳)のロセッティは
まだ麻薬に溺れておらず、また彼が後年溺れたのは
クローラルだが、この詩で歌われるもの憂さ、
遅くなる脈拍、麻痺する痛覚などは、みなアヘンの
作用として知られたもの。

(当時、アヘンは、鎮痛剤として一般家庭にふつうにあった。)

---
アヘンおよびその調合剤、アヘン溶液など――
〈急性アヘン中毒の症状〉めまい、昏迷、意識の喪失。
脈は早くて弱く、呼吸も早い。しばらくすると症状が変わる。
完全に意識と感覚を失い、呼吸は遅く、いびきをかく。
肌は冷たく、脈は強く、遅い。
Isabella Beeton, The Book of Household Management
(London, 1861) 1086. 次のURLでも読める。
http://www.mrsbeeton.com/43-chapter43.html#2662
---

形式的には、「木の葉がおちるのを見ると」というリフレインが
第1、3スタンザの最終行に執拗に戻ってくることにより、
また第2スタンザのややおかしな場所に入っていることにより、
アヘンの作用で昏迷して単調になった思考と、木の葉がおちる
という情景に固着してバランスを失いつつある精神状態が
あらわされている。(構文も脚韻も単調で、それが効果的。)

けだるく、不健全で、しかしどこかはかなく美しいと
感じられないこともない、そんな絶妙な空気を漂わせる
この詩を母に書いて送った手紙における彼のコメント--

「泣き叫ぶような歌を載せておくね。昨日ぼくが書いたんだ。
どれだけ涙を流し苦悶していたか、見ればわかるよ。
ついでにいっておくと、もし偽りの装いを身にまとうことが
インチキなら、この世でいちばんのインチキは詩だね。」

William Fredeman, ed., The Correspondence of
Dante Gabriel Rossetti, 5 vols. (Cambridge,
2002) 2: 434.

* * *

テクストは大英図書館のアシュリー文庫の手稿より。 http://www.rossettiarchive.org/img/ashleyB1417c.jpg

* * *

学生の方など、自分の研究/発表のために上記を参照する際には、
このサイトの作者、タイトル、URL, 閲覧日など必要な事項を必ず記し、
剽窃行為のないようにしてください。

コメント ( 0 ) | Trackback (  )
« Milton, ("Whe... Jonson, ("O, ... »