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Jonson, ("O, that joy so soon should waste!")

ベン・ジョンソン(1572-1637)
「ああ、よろこびがすぐに失われるなんて!」

ああ、よろこびがすぐに失われるなんて!
甘い、この上ない幸せ、
たとえばキス、
が、永遠につづかないなんて!
砂糖のように甘く、とろけそうで、なんてやわらかく、なんておいしい!
バラの上には露のしずく、
朝の女神が姿をあらわすとき、
それでもキスにはかなわない。
ああ、だまってなんていられない--
もう一度そんな幸せを味わえるなら、
ぼくは願う、
キスしながら死にたい、って。

* * *

Jonson
("O, that joy so soon should waste!")

O, that joy so soon should waste!
Or so sweet a bliss
As a kiss,
Might not forever last!
So sugared, so melting, so soft, so delicious,
The dew that lies on roses,
When the Morn herself discloses,
Is not so precious.
O rather than I would it smother,
Were I to taste such another,
It should be my wishing
That I might die kissing.

* * *

1 that
悲しみ、憤りなどをあらわす節の前におかれるthat(OED 1e)。
その前に、感嘆の言葉が来ることも多い。(ここの "O" のように。)

4
キスをあまーい、とろーりした食べものにたとえて。

4 soft
静かなよろこび、心地よさ一般をあらわす(OED 1aなど)。
(やわらかいというだけでなく。)

4 delicious
とても気持ちいい、うれしい、大きなよろこびをもたらす(OED 1)。
(おいしいというだけでなく。)

7 the Morn
擬人化された「朝」。朝の女神エーオース(ギリシャ神話)
またはアウローラ(ローマ神話)。


http://www.theoi.com/Titan/Eos.html

8 so
そのように。どのようにかといえば、キスのように。
(3行目のas a kissがこの後ろに省略されている。)

9 smother
隠す、・・・・・・についてだまっている(OED 2)。
この行は、構文的に不完全で浮いているものとして解釈。

12 die
(エロな裏の意味がある--OED 7d)。

(エロと不幸、という二重のタブーのためか、
研究社の『リーダーズ』や『大英和』でもこの意味を
載せていない。OED曰く、16-17世紀に頻出。1961年、
1974年からの用例もある。他に思いつくのは、
Stones, "Parachute Woman" や、Springsteen,
"Born to Run" など。)

* * *

リズムについて。





基調はストレス・ミーター、四拍子。
いろいろ工夫されている。

2-3
本来はこの二行あわせて一行。
それぞれ、bliss, kissで行を短く切り、
しあわせ・・・、キス・・・・・・などと
それぞれ読者に想像させる時間を与えている。

5
拍ごとに三音節x/xをあて、またコンマで区切り、
ゆっくり、かつ強調的なリズムに。あまーくて、
とろーりしてて、という感じ。

9-12
5行目と同じリズム。全体としてこの詩は行1-8(5行目を除く)
と9-12でリズムを変化させている。

11-12
ここも本来あわせて一行。wishing, kissingで
行を短く切り、ぼくの願い・・・・・・、
キスしながら・・・・・・と余韻のあるかたちに。

* * *

テクストはJonson, Works (1616) のものを用い、
スペリング、パンクチュエーションなどを修正。

(リズムのところのテクストは、以前どこかから
写してきたもの。いずれ差し替えます。)

* * *

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