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Shelley, ("One word is too often . . . ")

パーシー・B・シェリー (1792-1822)
(「神聖なはずの言葉がいつも汚されている」)

神聖なはずの言葉がいつも汚されている。
だから、わたしはそれを汚したくない。
大切なはずの感情が、くだらないものと誤解されている。
だから、君にはそう誤解してほしくない。
ある希望はあまりにも絶望に似ていて、
思慮深く押し殺すまでもない。
君からのあわれみは
ほかの人のものよりうれしい。

わたしは、人が「愛」と呼ぶものを与えることができない。
が、受けとってくれないか?
心が高く捧げ、
神々が受けとってくれるような崇拝を。
星に対して蛾が抱くような、
朝に対して夜が抱くような欲望を。
この悲しみの世界から、遠い世界のなにかに対して、
身を捧げるような思いを。

* * *
Percy Bysshe Shelley
("One word is too often profaned")

One word is too often profaned
For me to profane it,
One feeling too falsely disdained
For thee to disdain it;
One hope is too like despair
For prudence to smother,
And pity from thee more dear
Than that from another.

I can give not what men call love,
But wilt thou accept not
The worship the heart lifts above
And the Heavens reject not,--
The desire of the moth for the star,
Of the night for the morrow,
The devotion to something afar
From the sphere of our sorrow?

* * *
ペトラルカの作品をモデルとして書かれた
16世紀の恋愛ソネットのロマン派的・シェリー的
変奏。恋する男性詩人が届かぬ想いを歌う。

* * *
1 profane
(神聖なもの)を不敬なかたちで扱う、軽んじる、
無視する(OED 1)。

1-2
Too . . . to (do) の構文。辞書的に訳せば、
「あまりにoften profanedなので、わたしは
profaneできない」。こういう定式化した言い回しも
文脈や雰囲気に即して柔軟に意訳しないと、読んで
すぐに内容が伝わる日本語にならない。

「神聖なはずの言葉」とは、たとえば「愛」とか。

3 falsely
まちがって、誤ったかたちで(OED 2)。
正当な理由もなく(OED 3)。

3 disdain
とるに足らないと考える、軽んじる、あざける(OED 1)。

3-4
1-2行目と同様(feelingのあとにisが省略)。
辞書的に訳せば、「あまりにまちがったかたちで軽く
見られているので、君がそれを軽く見ることができない」。
文脈や雰囲気に即して柔軟に意訳しないと。

「大切なはずの感情」とは、たとえば「愛情」とか。

5-6
ある希望とは、たとえば、「わたし」の気持ちに
「君」が応えてくれる、という希望。第二スタンザ参照。

7
[T]hee のあとにis.

7 pity
愛する/恋する気持ちに相手が応えてくれることを
「あわれみ」と表現するのが16世紀の恋愛ソネットの
定番。

9-
一般的に「愛」と呼ばれるものと、「わたし」が
「君」に対して抱いている気持ちを区別している。
第一スタンザにあるように、人々はそれを
汚しているから。

(実際、愛についてシェリーの考え方は、
ふつうの人々のそれとはかなり違った。
最初の妻を捨てて次の妻に走り、その後も
いろいろ・・・・・・。常識的にいえば、
「愛」ということばを汚していたのはシェリーの
はずだが、彼は常識を超越した人なので。)

12 Heavens
神々または(大文字の)神(OED 6b)。(Shelleyのことなので、
後者、つまりキリスト教的な神、ではないはず。)

11 worship
ペトラルカ流の恋愛ソネットでは、男性詩人が
愛しい女性を神格化し崇拝する。

13-16
想いが届かないことをロマン派的にたとえるとこうなる、
という例。

13
蛾は明るい火に寄っていくことから。(今の時代だったら、
蛍光灯とか電燈とか。) ポイントは、蛾が、明るい火に
寄っていって・・・・・・焼かれて死んでしまうということ。
つまり、欲望の対象に到達したら自分が消えてしまう。
欲望は成就しない。

14
13と同様。夜の時間は朝に向かって進んでいくが、
朝になったら(当然だが)夜の闇は消えている。
夜と朝は共存できず、結局夜の欲望は成就しない。

15-16
13-14と同様、ポイントは、悲しみの世界にいる
わたしたちの手は、something afarに届かない、
ということ。

16 sphere
(ここでは)領域、世界(OED 6-7)、星(OED 10b)。

* * *

リズムについて。

とりあえず、かなり実験的。





1
交互にビートx3の行とビートx2の行。

2
ビートを中心に弱強弱格x/xの音歩。

3
これは、BBB(B)やBB(B)(B)という
ストレス・ミーター(四拍子)の変奏というより、
本来は一行であるビートx5の行を二行に
わけたもの、と見るべき(たぶん)。つまり--



崩れているところもいろいろあるが、こうして見れば
基調は弱強弱格五歩格。

4
が、第二スタンザでは、行のはじめにもうひとつ
弱音節xがついているところが多く、基調が
x/xからxx/に移行している。よく見れば、
13-14行目、15-16行目は、完璧な弱弱強格五歩格
(女性韻つき)。



5
つまり、第一スタンザがデコボコはねるような
感じなのに対し、第二スタンザは流れるような
感じになっている。もちろん、これは内容にあっている。
第一スタンザが理屈っぽいのに対し、第二スタンザは
かなえられない欲望をきれいな比喩で。

* * *

英文テクストは、The Complete Poetical Works of
Percy Bysshe Shelley, vol. 2 (1914) より。
http://www.gutenberg.org/ebooks/4798

* * *

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