英語の詩を日本語で
English Poetry in Japanese
Marvell, "On a Drop of Dew"
アンドリュー・マーヴェル
「露の玉」
ほら、東方の真珠のような露が、
朝日の胸からこぼれ、
花咲く薔薇のなかに
(うれしくなさそうに、
生まれ育った清らかな世界に戻りたいようすで)
包まれている。
そしてその小さな丸のなかに、
生まれ育った空を映している。
まるで相手にしていないかのように、
赤い花にはほとんどふれようとしない。
ただ空を見つめ、
悲しげな光を放っている、
涙のような光を。
空から遠く離れてしまったから。
落ち着きなく露は転がり、不安げに
震える、汚れることが恐いから。
そんな露がかわいそうと、やがてあたたかい太陽は
蒸発させて空に返す。
魂はまさにそんな露、そんな光、
永遠の世界の泉からやってきた透きとおった光。
からだという花に降りてきた見えない光。
前にいた天国のことをずっと覚えていて、
きれいな葉、緑の花には近づかない。
自分の光を集め、
汚れのない思いをめぐらせて、
玉のなかに大きな天国をつくる。
慎み深い小さな姿で、
すべてのものに背を向ける。
あたりの世界に見向きもせず、
日の光だけを受けいれる。
下界は暗いから、天国だけに光があるから。
この世は卑しいから、天国だけに愛すべきものがあるから。
この世に縛られず、いつでも天に帰ろうとしている。
準備万端、いつでも天に昇ろうとしている。
下界にふれているのは一点だけ、
他のすべてのところは上に向かっている。
そんな露のように、神聖なマナも降りてきた、
白く、一面に、冷たく凍って。
今、露もこの世で凍っている。でも、いずれとけ、蒸発し、
輝く全能の太陽の光のなかに帰っていく。
*****
Andrew Marvell
"On a Drop of Dew"
See, how the orient dew,
Shed from the bosom of the morn
Into the blowing roses,
(Yet careless of its mansion new,
For the clear region where 'twas born,)
Round in itself incloses;
And, in its little globe's extent,
Frames, as it can, its native element.
How it the purple flower does slight,
Scarce touching where it lies;
But gazing back upon the skies,
Shines with a mournful light,
Like its own tear,
Because so long divided from the sphere.
Restless it rolls, and unsecure,
Trembling, lest it grow impure;
Till the warm sun pity its pain,
And to the skies exhale it back again.
So the soul, that drop, that ray
Of the clear fountain of eternal day,
(Could it within the human flower be seen,)
Remembering still its former height,
Shuns the sweet leaves, and blossoms green,
And, recollecting its own light,
Does, in its pure and circling thoughts, express
The greater heaven in an heaven less.
In how coy a figure wound,
Every way it turns away;
So the world-excluding round,
Yet receiving in the day;
Dark beneath, but bright above,
Here disdaining, there in love.
How loose and easy hence to go;
How girt and ready to ascend;
Moving but on a point below,
It all about does upwards bend.
Such did the manna's sacred dew distil;
White and entire, though congealed and chill;
Congealed on earth ; but does, dissolving, run
Into the glories of the almighty sun.
http://www.luminarium.org/sevenlit/marvell/dewdrop.htm
*****
キーワード:
キリスト教 Christianity
この世に対する侮蔑 contemptus mundi
*****
学生の方など、自分の研究/発表のために上記を
参照する際には、このサイトの作者、タイトル、URL,
閲覧日など必要な事項を必ず記し、剽窃行為のないように
してください。
ウェブ上での引用などでしたら、リンクなどのみで
かまいません。
商用、盗用、悪用などはないようお願いします。
「露の玉」
ほら、東方の真珠のような露が、
朝日の胸からこぼれ、
花咲く薔薇のなかに
(うれしくなさそうに、
生まれ育った清らかな世界に戻りたいようすで)
包まれている。
そしてその小さな丸のなかに、
生まれ育った空を映している。
まるで相手にしていないかのように、
赤い花にはほとんどふれようとしない。
ただ空を見つめ、
悲しげな光を放っている、
涙のような光を。
空から遠く離れてしまったから。
落ち着きなく露は転がり、不安げに
震える、汚れることが恐いから。
そんな露がかわいそうと、やがてあたたかい太陽は
蒸発させて空に返す。
魂はまさにそんな露、そんな光、
永遠の世界の泉からやってきた透きとおった光。
からだという花に降りてきた見えない光。
前にいた天国のことをずっと覚えていて、
きれいな葉、緑の花には近づかない。
自分の光を集め、
汚れのない思いをめぐらせて、
玉のなかに大きな天国をつくる。
慎み深い小さな姿で、
すべてのものに背を向ける。
あたりの世界に見向きもせず、
日の光だけを受けいれる。
下界は暗いから、天国だけに光があるから。
この世は卑しいから、天国だけに愛すべきものがあるから。
この世に縛られず、いつでも天に帰ろうとしている。
準備万端、いつでも天に昇ろうとしている。
下界にふれているのは一点だけ、
他のすべてのところは上に向かっている。
そんな露のように、神聖なマナも降りてきた、
白く、一面に、冷たく凍って。
今、露もこの世で凍っている。でも、いずれとけ、蒸発し、
輝く全能の太陽の光のなかに帰っていく。
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Andrew Marvell
"On a Drop of Dew"
See, how the orient dew,
Shed from the bosom of the morn
Into the blowing roses,
(Yet careless of its mansion new,
For the clear region where 'twas born,)
Round in itself incloses;
And, in its little globe's extent,
Frames, as it can, its native element.
How it the purple flower does slight,
Scarce touching where it lies;
But gazing back upon the skies,
Shines with a mournful light,
Like its own tear,
Because so long divided from the sphere.
Restless it rolls, and unsecure,
Trembling, lest it grow impure;
Till the warm sun pity its pain,
And to the skies exhale it back again.
So the soul, that drop, that ray
Of the clear fountain of eternal day,
(Could it within the human flower be seen,)
Remembering still its former height,
Shuns the sweet leaves, and blossoms green,
And, recollecting its own light,
Does, in its pure and circling thoughts, express
The greater heaven in an heaven less.
In how coy a figure wound,
Every way it turns away;
So the world-excluding round,
Yet receiving in the day;
Dark beneath, but bright above,
Here disdaining, there in love.
How loose and easy hence to go;
How girt and ready to ascend;
Moving but on a point below,
It all about does upwards bend.
Such did the manna's sacred dew distil;
White and entire, though congealed and chill;
Congealed on earth ; but does, dissolving, run
Into the glories of the almighty sun.
http://www.luminarium.org/sevenlit/marvell/dewdrop.htm
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キリスト教 Christianity
この世に対する侮蔑 contemptus mundi
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かまいません。
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