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Yeats, "Cloths of Heaven"

W・B・イェイツ (1865-1939)
「もし空色の布をもっていたら」

もし、大空のように刺繍された布をぼくがもっていたら、
金色、銀色の光で飾られた
青い布、薄明るい布、暗い布、
夜や、光や、たそがれ時の色の布を、もしもっていたなら、
ぼくは、それを君の足の下に広げてあげることだろう。
でも、貧しいから、ぼくにあるのは夢だけで、
それを君の足の下に広げてきた。
静かに歩いて、ぼくの夢を踏んでいるのだから。

* * *

William Butler Yeats,
"He Wishes for the Cloths of Heaven"

Had I the heavens' embroidered cloths,
Enwrought with golden and silver light,
The blue and the dim and the dark cloths
Of night and light and the half light,
I would spread the cloths under your feet:
But I, being poor, have only my dreams;
I have spread my dreams under your feet;
Tread softly because you tread on my dreams.

* * *

イェイツ曰く、「こういうことをしていると女性にふられる」。

Jeffares, A Commentary on the Collected
Poems of W.B. Yeats
(Stanford, 1968), p. 84;
Ross, Critical Companion to William Butler
Yeats
(New York, 2009) p. 284.

(君のために自分の夢を、もっているものすべてを、
犠牲にしてるんだからやさしくして、という取り引き的な
ところがダメ? 自分の夢を、もっているものすべてを、
犠牲にするという行為が、実はダメ? あるいは、
大空のように刺繍された布をもっていない、などと
認めるところがそもそもいけない?)

* * *

以下、訳注。

タイトル
初出時のタイトルは "Aedh Wishes for the Cloths
of Heaven". 1906年のPoetical Works以降、AedhがHeに。
(Aedhというのはイェイツの作品に出てくる神話的なキャラクター。
この辺、詳しくないので、さらっと。)

1-5
いわゆる仮定法の構文。1-4行目が仮定節(If I had. . . )で
5行目が帰結節。

1 heavens
タイトルではHeavenと単数形で、ここでは複数形。意味は同じで、
「太陽や月や星のある、大きな丸屋根のように見える空の広がり」
OED 1a, 1c)。(上の日本語訳では、あえて「天」という
言葉をはずしています。)

2
[T]he heavens' embroidered clothsを後ろから説明。
(日本語訳では3-4行目にかけています。)

金色銀色の光とは、太陽や月や星の光のこと。
慣例的に、太陽の光は金色、月の光は銀色。

3-4
1行目のthe heavens' embroidered clothsと同格。
いい換えているだけ。

青は昼間の空の色。薄明るい(dim)のは夜明けや夕暮れ、
太陽が昇る直前あるいは沈んだ直後の空の色。
(いわゆるtwilight.)

* * *


http://commons.wikimedia.org/wiki/
File:Dscf1869.jpg


By Fir0002
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:April_dawn.jpg


By George Groutas
http://commons.wikimedia.org/wiki/
File:Jorge-11_-_Night_Skies_(by).jpg

こんな色の布など、もちろん誰ももっていないわけで・・・・・・。

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女性による朗読では、視点と雰囲気が変わってきます。

http://www.gutenberg.org/files/20591/mp3/20591-02.mp3
http://www.gutenberg.org/files/20591/mp3/20591-03.mp3
http://www.gutenberg.org/files/20591/mp3/20591-04.mp3
http://www.gutenberg.org/files/20591/mp3/20591-05.mp3

* * *

リズムについて。



ストレス・ミーター(四拍子)だが、弱強格、強強格、
弱弱強格を効果的に配置することにより(特に行末)、
各ビート(拍子)のあいだを不均一にしている。
(歌のように一定のリズムで読むと不自然。)

また、行末が、前半四行(仮定節の部分)は強強格
(特に3-4行目)、後半四行は弱弱強格(特に6, 8行目)、
と統一されているのが特徴的。前半と後半で雰囲気が
まったく違う。

* * *

英文テクストは、Yeats, The Wind Among the Reeds,
4th ed. (1903)より。
http://www.gutenberg.org/files/32233/
32233-h/32233-h.htm

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