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Marullus, "Ad Neaeram"

ミカエル・マルルス
「ネアエラに」

清純派だもんね、ネアエラ。いやかな? キスしていい?
あ、しまった、君の唇で、ぼくの魂がとろけちゃう。
死にそう。魂が抜けて帰ってこない。
あと一瞬遅れたら本当に死んじゃう。
だから心を送った、魂を探してこいって。そしたら心も
あのきれいな目につかまった。もう帰ってこない。

……でも、キスだけじゃなくって、炎ももらって
吸いこんだのかな、ネアエラから。魂が抜けてもまだ生きてるし?
ほんとはあれがぼくの最後の、そして最高の日だったのかも。
あの時ぼくは、君から唇を奪ったまま死んだのかも。

*****
Michael Marullus (b. after 1453, d.1500)
"Ad Neaeram"

Suaviolum invitae rapio dum casta Neaera,
Imprudens vestris liqui animam in labiis.
Exanimusque diu, cum nec per se ipsa rediret,
Et mora lethalis quantulacunque foret:
Misi cor quaesitum animam. sed cor quoque blandis
Captum oculis nunquam deinde mihi rediit.
Quod nisi suaviolo flammam quoque casta Neaera
Hausissem, quae me sustinet exanimum,
Ille dies misero mihi, crede, supremus amanti
Luxisset, rapui cum tibi suaviolum.

http://magyar-irodalom.elte.hu/gepesk/bbom/krit/fbb20f.htm

*****
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Pontano, "Ad Fanniam"

ジョヴァンニ・ポンターノ
『パルテノパイオス』1.4
「ファニアに」

かわいいよね、君、ファニア、若くてやわらかい薔薇の花よりずっと。
春に顔を出す緑の芽よりも君は上。
アフリカのメムノンを産んだ女神のアウロラが、庭のかわいい
花たちに甘い露をふりかけてるけど、それより君のほうが上。
それは朝いちばんの露で、葉に包まれた
枝がきらきら光ってる。
空を見れば、赤い戦車に乗って輝くアポロが旅してる。
宝石のようにきらきらでまぶしい。
でも、花の命は短くて、咲いてもすぐにやつれて死んでいく。
疲れた頭を下にたれ、
花びらを失って、すぐに薔薇は倒れてしまう。
きれいと言われるのは、ほんのちょっとのあいだだけ。
そう、美しさが花開くのは最初だけで、美しくない
老いがすぐにやってくる。
ひどいよね、金色に光る顔の色は翳ってしまい、
汚いしわができて畑みたいになる。
稲妻のような髪の光も肌のつやも消えて、逆に、
白く光っていた歯が金色、というか、むしろ黄色になっていく。
魅力のない胸、たれ下がった乳首が
よれよれのみじめな服に隠れる。
今の服は東方の宝石で輝いていて、
しかも、透きとおった帯で巻かれているのに。
君にふられた男の子が、懲りずに君の手を求めることもなくなる。
お願いします、なんて、もう彼はドアを叩かない。
咲きはじめの花の冠がドアの柱を飾ることもなくなる。
受けとらなかった、あの恋の贈りもの。
そうして冷たいベッドで一晩一晩、命をすり減らす、
もう誰にも求められず。
そうならないように、若さの花咲く甘い春を、
花の命のようにはかない若さを、楽しもうよ?
25過ぎたら老いのはじまり、と言うか、
見えないけど、今でも老いは忍び寄ってきてるから。
だから、さあ、ぼくの炎の息で明るい昼間は、
甘く白熱した時間にしよう。
それから、夜のすべての瞬間も捧げよう、
朝、星になって輝くウェヌスに。

*****
Giovanni Pontano (1429-1503)
Parthenopeus 1.4
"ad Fanniam"

Puella molli delicatior rosa,
Quam vernus aer parturit
Dulcique rore Memnonis nigri parens
Rigat suavi in hortulo,
Quae mane primo roscidis cinctos foliis
Ornat nitentes ramulos;
Ubi rubentem gemmeos scandens equos
Phoebus peragrat aethera,
Tunc languidi floris breve et moriens decus
Comas reflectit lassulas;
Mox prona nudo decidit cacumine
Honorque tam brevis perit.
Sic forma primis floret annis; indecens
Ubi senectus advenit,
Heu languet oris aurei nitens color,
Quod ruga turpis exarat,
Perit comarum fulgor, et frontis decus,
Dentesque flavent candidi,
Pectus papillis invenustum languidis
Sinus recondet sordidus,
Quod nunc heois lucidum gemmis nitet,
Tenuisque vestit fascia.
Nullas amantis audies moesti preces
Duram querentis ianuam,
Non serta lentis fixa cernes postibus
Exclusi amantis munera;
Sed sola noctes frigido cubans toro
Nulli petita conteres.
Quin hoc iuventae floridum atque dulce ver
Brevemque florem carpimus;
Post lustra quinque iam senectus incipit
Latensque surrepit modo.
Quare, meorum o aura suavis ignium,
Dies agamus candidos,
Noctesque divae conteramus integras,
Que mane lucet Hesperos.

http://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Perseus%3Atext%3A2011.01.0464

*****
セクンドゥスに影響を与えたナポリの詩人・政治家。
Alliterationという言葉をつくったのは、このポンターノ。

*****
カルペ・ディエム carpe diem

このような発想の人たちが詩を書き、また読んでいた、
ということ。そんな人たちが今の時代に甦ったら、
詩ではない表現・楽しみのありかたを選ぶのでは。

*****
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Pontano, "Naenia Prima"

ジョヴァンニ・ポンターノ
「子守り歌 1:眠りくん」

来て、眠りくん、とろんとしたルキウスくんが待ってます
来て、眠りくん、お願い、気持ちいい眠りくん、来て
ルキウスくんが君に優しく歌ってます、深い眠りくん
眠りくん、来て、お願い、気持ちいい眠りくん、来て
ルキウスくんが君をお部屋に呼んでます、気持ちいい眠りくん
優しい眠りくん、気持ちいいお休みくん
ルキウスくんが君を揺りかごに呼んでます、こっち来て、眠りくん
眠りくん、揺りかごに来て、ね、眠りくん、来て
ルキウスくんが君をベッドに呼んでます、さあ、来て、眠りくん
さあ、来て、眠りくん、来て、夜の友だち眠りくん、来て
ルキウスくんが君を枕に呼んでます、目でお願いしています
眠りくん、来て、お願い、さあ、来て、眠りくん、来て
ルキウスくんが君を抱っこしたいって呼んでます、自分でぎゅーって
ぎゅーってしたいって、ねえ、お願い、ねえ、今すぐ、眠りくん、来て
来てくれた、優しいね、眠りくん、眠らせてくれる優しい眠りくん
眠りくんがいれば、心の悩みも体の痛みも軽くなるのです

*****
「こもりうた 1:ねむりくん」

きて、ねむりくん、とろんとしたルキウスくんがまってます
きて、ねむりくん、おねがい、きもちいいねむりくん、きて
ルキウスくんがきみにやさしくうたってます、ふかいねむりくん
ねむりくん、きて、おねがい、きもちいいねむりくん、きて
ルキウスくんがきみをおへやによんでます、きもちいいねむりくん
やさしいねむりくん、きもちいいおやすみくん
ルキウスくんがきみをゆりかごによんでます、こっちきて、ねむりくん
ねむりくん、ゆりかごにきて、ね、ねむりくん、きて
ルキウスくんがきみをベッドによんでます、さあ、きて、ねむりくん
さあ、きて、ねむりくん、きて、よるのともだちねむりくん、きて
ルキウスくんがきみをまくらによんでます、めでおねがいしています
ねむりくん、きて、おねがい、さあ、きて、ねむりくん、きて
ルキウスくんがきみをだっこしたいってよんでます、じぶんでぎゅーって
ぎゅーってしたいって、ねえ、おねがい、ねえ、いますぐ、ねむりくん、きて
きてくれた、やさしいね、ねむりくん、ねむらせてくれるやさしいねむりくん
ねむりくんがいれば、こころのなやみもからだのいたみもかるくなるのです

*****
Giovanni Pontano (1429-1503)
"Naenia Prima ad Somnum Provocandum"

Somne, veni; tibi Luciolus blanditur ocellis;
Somne, veni, venias, blandule somne, veni.
Luciolus tibi dulce canit, somne, optime somne;
Somne, veni, venias, blandule somne, veni.
Luciolus vocat in thalamos te, blandule somne,
Somnule dulcicule, blandule somnicule.
Ad cunas te Luciolus vocat; huc, age, somne,
Somne, veni ad cunas, somne, age, somne, veni.
Accubitum te Luciolus vocat, eia age, somne,
Eia age, somne, veni, noctis amice, veni.
Luciolus te ad pulvinum vocat, instat ocellis;
Somne, veni, venias, eia age, somne, veni.
Luciolus te in complexum vocat, innuit ipse,
Innuit; en venias, en modo, somne, veni.
Venisti, bone somne, boni pater alme soporis,
Qui curas hominum corporaque aegra levas.

https://tinyurl.com/ycthptxg
(www.perseus.tufts.edu)

*****
本当に眠くなるリズム。

*****
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Secundus, Basium 14

ヨハネス・セクンドゥス
「キス 14」

火のように真っ赤なくちびる、どうして噛んでるの?
キスできないよ、冷たくするなら。
ね、冷たい大理石より冷たいネアエラちゃん。
前みたいに仲よく、口づけをたくさん、
ぼくは捧げたいんですけど、気高いあなたさまに。
何回でも、仰向けになって力の抜けた君にキスして、そのたびに
ぼくはかちかちになって、ふたりの服に穴あけちゃう、みたいな?
頭からっぽになるほど欲望にとり憑かれて、
血が燃えて溶けてダメになっちゃう、みたいな?
どこ行くの? 逃げないで。かわいい目でこっち見て。
真っ赤なくちびる、噛んだまんまでいいから。
ね、いい子ちゃん、キスしたいな。
やさしい最高級の羽毛よりもやさしい君に。

*****
Johannes Secundus
Basium 14

Quid profers mihi flammeum labellum?
Non te, non volo basiare dura,
Duro marmore durior Neaera.
Tanti istas ego ut osculationes
5. Imbellesis faciam, superba, vestras,
Ut, nervo toties rigens supino,
Pertundam tunicas meas, tuasque;
Et, desyiderio furens inani,
Tabescam, miser, aestuante vena?
10. Quo fugis? remane, nec hos ocellos,
Nec nega mihi flammeum labellum:
Te iam, te volo basiare, mollis,
Molli mollior Aanseris medulla.

http://www.wernergelderblom.nl/editie/basia/index.html
Ms. Rawl. G 154
- 適宜修正

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Secundus, "Basium 16"

ヨハネス・セクンドゥス
『キス』
「キス16」

白雪のラトーナの星より美しく、
金のウェヌスの星よりきれい、だね。
さ、キスして、百回。
たくさんして、キス。
カトゥルスが求めたくらい、レスビアが与えたくらい、たくさんして。
色っぽいウェヌスや、クピドーが、何回も
君の唇と
薔薇色のほっぺでぼくを誘ってる。だから何回でもキスしたい。
君の目に何度も命をもらって、何度も殺されて、そのたびにキスしたくなる。
君の目を見て期待して、不安になって、いつも
心配しながら幸せなごちゃまぜな気分になって、
好きでたまらなくなってため息をついて、で、キスしたくなる。
だからキスして、胸に刺さる痛みの数だけ。
空飛ぶ怖い愛の神が、ぼくの胸に矢を撃ちこんでくるんだ。
あの金色の筒にある矢の数だけ
キスしたいってこと。
それから、キスしながら、ぼくにさわって。話しかけて。
優しくささやいて。しー、って言って。
楽しく笑って。
キスして、そして幸せで痛い気分にして。
カオニアの恋する鳩たちが、興奮してぱたぱたしておしゃべりしながら
くちばしでちゅっちゅするみたいにキスして。
春の西風が吹いて、
冬の厳しさがゆるんだ頃に。
ぼくのほっぺにもたれながら
濡れた目を溺れさせて。
そして、血の気が抜けたみたいに力を抜いて、
助けて、ってぼくに言って。
そしたらぼくは君を、き・み・を、ぎゅーって抱きしめる。
冷たくなった君に、ぼくの熱い胸と心を押し当てる。
そして、君を生き返らせるんだ、
炎のように燃える、長いキスで。
そしたら今度は、キスするたびにぼくの魂が
濡れた口から抜けていって、気が遠くなって、
腕に力が入らなくなるから、お願い、
ぼくを君の腕で抱きしめて。
腕をからめて、ね、ぼくを抱っこして。
冷たくなったぼくを、君の生ぬるい胸で撫でて、
そして、ぼくに命をふーって
吹きこんで、露たっぷりの長いキスで。
こうやって、ね、まぶしい君、花の人生の花びらのような一瞬一瞬を
ぜんぶ摘んで楽しく生きよう。ほーら、今のうちに! そのうち
歳をとって病気になって、心配ごとばかりでみじめになって、
体も痛くて悲しくなって、結局死ぬだけなんだから。

*****
Johannes Secundus (1511-36)
Basia
"Basium XVI"

Latonae niveo sydere blandior,
Et stella Veneris pulchrior aurea,*
Da mi basia centum,
Da tot basia, quot dedit
5. Vati multivolo Lesbia, quot tulit:
Quot blandae Veneres, quotque Cupidines
Et labella pererrant,
Et genas roseas tuas:
Quot vitas oculis, quotque neces geris,
10. Quot spes, quotque metus, quotque perennibus
Mista gaudia curis,
Et suspiria amantium:
Da, quam multa meo spicula pectori
Insevit, volucris dira manus Dei:
15. Et quam multa pharetra
Conservavit in aurea:
Adde et blanditias, verbaque publica,
Et cum suavicrepis murmura sibilis,
Risu non sine grato,
20. Gratis non sine morsibus:
Quales Chaoniae garrula motibus
Alternant tremulis rostra columbulae,
Cum se dura remittit
Primis Bruma Favoniis.
25. Incumbensque meis, mentis inops, genis,
Huc, illuc, oculos volve natatiles,
Exanguemque lacertis
Dic te sustineam meis:
Stringam nexilibus te te ego brachiis,
30. Frigentem calido pectore comprimam,
Et vitam tibi longi
Reddam afflamine basii:
Donec succiduum me quoque spiritus
Istis roscidulis linquet in osculis,
35. Labentemque lacertis,
Dicam, collige me tuis.
Stringes nexilibus me, mea, brachiis,
Mulcebis tepido pectore frigidum,
Et vitam mihi longi af-
40. flabis rore suavii.
Sic aevi, mea lux, tempora floridi
Carpamus simul, en iam miserabiles
Curas aegra senectus
Et morbos trahet, et necem.

http://www.wernergelderblom.nl/editie/basia/index.html
Ms. Rawl. G 154
- 適宜修正

*****
ルネサンスのネオラテン詩のなかで、もっとも大きな影響を
及ぼしたといわれるセクンドゥスの詩集より。
初版は1539年。

こういうものを読んで、ロンサールらが性的に刺激の
強い、道徳的に挑発する、詩を書きはじめた。
それらがイングランドに入ってきて、というのが
16-17世紀の流れ。

*****
カルペ・ディエム carpe diem

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