晴走雨読

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安彦良和 『ヤマトタケル』、原田常治『古代日本正史』、小椋一葉『天翔る白鳥ヤマトタケル』

2018-11-18 10:22:30 | Weblog

喫茶店で隣に座っていた年輩者同士の会話が耳に入った。「ウルトラ右翼でナショナリスト・排外主義者のアへが移民政策を進めようとして、それに左翼(野党の意味だろう)が反対するのは本来的におかしな話。国を開いていくのがリベラルだろうに。」この件、僕もずっとシックリきていなかったが、見知らぬ方が的確に整理してくれたと思う。北方四島問題でも2島返還で手を打とうとしているアへ。それに対してナショナリズムを振りかざしてあくまで4島だろうと野党は批判するのだろうか。「右を向いても左を見ても真っ暗闇じゃございませんか!」

 

安彦良和 『ヤマトタケル』、原田常治『古代日本正史』、小椋一葉『天翔る白鳥ヤマトタケル』

安彦良和氏による日本古代史シリーズ3部作、『古事記巻之一 ナムジー大國主 全4巻』、『古事記巻之二 神武 全4巻』、そして『ヤマトタケル 全6巻』が『ヤマトタケル⑥』(角川コミックス・エース 2018年刊)の発刊をもってついに完結した。30年をかけた労作である。

この国では僕らのようなファンが大勢いて古代史は常にブームである。書店の古代史コーナーは多くの論者が諸説唱えて百家争鳴状態。どこかで遺物が発見されると一目見ようとどっと人が押し寄せる。そして玄人も素人もそれぞれが推理をめぐらして古代の歴史を想像する。定説が定まっていなく各自各様に解釈できるところが魅力なのだろう。

安彦氏は、「日本には古代史がない、5世紀代までの歴史が空白である、近代国家としては他に例を見ないような特殊性が日本にある、それは皇国史観の後遺症だ」という。戦前の神話教育が軍国主義に利用されたという反省から、戦後になり皇国史観を葬った。その際、盥(たらい)の水とともに赤子まで流してしまったということなのだ。この国は、歴史の始源を持たぬため、現時点の位置が定まらないし、当然未来の方向などわかるはずもない。(数学のベクトルを想像してほしい)

安彦氏は、原田常治氏と原田氏の方法論の継承者小椋一葉氏の『天翔る白鳥ヤマトタケル 伝承が語る古代史Ⅱ』(河出書房新社 1989年刊)に依拠したという。原田常治氏の『古代日本正史 記紀以前の資料による』(原田常治著 同志社 1977年刊)において、『古事記』(712年)以前から存在する古い神社(1631社)を調査して、その神社が①いつ建てられたのか、②誰を祭っているのか、③誰が祭ったのか、④どういう理由で祭ったのかという残された記録から歴史を再構成してみせる。これは、記紀神話、特に『日本書記』(720年)が万世一系の天皇制の正統性を裏付けようという意図のためまとめられたものであり、書き上げるに際し、全国からあらゆる歴史資料が集められ、その後に廃棄されたのではないか、そうなると真実はそれ以前に書かれたものにしか残されていないという理由からである。

原田氏が導いた歴史を2,3例示してみる。紀元前660年といわれている神武天皇の即位は紀元後241年。邪馬台国は素佐之男が日向に侵攻して宮崎県西都市においた都。以後、大国主、大日霊女(ヒミコ)、豊受姫と栄えた。神武天皇は東征ではなく養子として九州から大和に来た(御東遷)など驚きの記述がたくさんある。原田氏は古代史の専門家ではないので関係著作は少ないが、『神武から応神まで 上代日本正史』を読みたいと思っている。

自分の中で考え方が固まっていないことはたくさんあるが、そろそろ一つずつ絞っていきたいと考えている。ということで、これまでふらふら彷徨ってきた僕の古代史は、安彦―原田―小椋理論で一応固めることにする。

 

 


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4 コメント

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科学的古代史について (山田 義雄)
2018-12-01 21:31:51
戦後皇国史観の非科学性を明らかにし、シュリーマンによるトロイ発掘の意義を明らかにし、アウグスト・ベークによるフィロロギーの方法論により、記紀の本質を解明したのが古田史学です。

科学的古代史を展開した九州王朝論こそが大和朝廷一元史観の虚妄を白日の下にしました。

先ずは、下記を参照下さい。
「新・古代学の扉」
http://www.furutasigaku.jp/jfuruta/jfuruta.html
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倭健(ヤマトタケル)の歌 (山田 義雄)
2018-12-05 21:15:00
すいません。慌てて二重に投稿してしまったので前稿は削除下さい。

なお、「倭健(ヤマトタケル)」については、「倭健(ヤマトタケル)の歌」

http://www.furutasigaku.jp/jfuruta/jkiki/jkiki2.html

を参照下さい。■
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浅学菲才 (晴走雨読)
2018-12-09 16:08:27
山田 義雄さま、コメントをいただきましてありがとうございます。

ご紹介いただいたHPですが、凄い世界が広がっているように感じました。恥ずかしながら、古田武彦氏は名前を知っている程度で、著作を読んだことはありません。

アウグスト・ベークによるフィロロギーの方法論も初めて聞きました。

これから少しづつですが、どのような考え方なのかを勉強したいと思っています。







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Unknown (omachi)
2020-02-02 18:53:33
あなたの知らない日本史をどうぞ。
歴史探偵の気分になれるウェブ小説を知ってますか。 グーグルやスマホで「北円堂の秘密」とネット検索するとヒットし、小一時間で読めます。北円堂は古都奈良・興福寺の八角円堂です。 その1からラストまで無料です。夢殿と同じ八角形の北円堂を知らない人が多いですね。順に読めば歴史の扉が開き感動に包まれます。重複、 既読ならご免なさい。お仕事のリフレッシュや脳トレにも最適です。物語が観光地に絡むと興味が倍増します。平城京遷都を主導した聖武天皇の外祖父が登場します。古代の政治家の小説です。気が向いたらお読み下さいませ。(奈良のはじまりの歴史は面白いです。日本史の要ですね。)

読み通すには一頑張りが必要かも。
読めば日本史の盲点に気付くでしょう。
ネット小説も面白いです。
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