晴走雨読

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三浦英之 『太陽の子 日本がアフリカに置き去りにした秘密』 日本鉱山 コンゴ

2023-02-04 09:59:09 | Weblog

友人からの紹介で月刊雑誌『選択』の見本誌が送られてきた。書店では扱っておらず年間予約購読で自宅に直接郵送される方式だ。創刊45年とあるが全く知らなかった。少し読んでみないとそのテイストがわからないのだが、ほとんどの記事に署名が無いのが特徴か。「左翼の病」を治す効能があるかな?

 

『太陽の子 日本がアフリカに置き去りにした秘密』(三浦英之著 集英社 2022年刊)  

近くの図書館の新刊コーナーから借りた。このルポルタージュの始まりは、「朝日新聞では、1970年代コンゴでの日本企業の鉱山開発に伴い1000人以上の日本人男性が現地に駐在し、そこで生まれた日本人の子どもを、日本人医師と看護師が毒殺したことを報道したことはありますか?」という情報が寄せられたことにある。

はたしてこれは、事実なのだろうか。事実とすれば多くの人に伝えることはジャーナリストとしての使命だ。

著者は、南アフリカ共和国に駐在する朝日新聞のアフリカ特派員。早速、現地に飛び取材協力者に援助してもらいながら関係者の聞き取りを進める。関わってくれる人たちとの信頼関係を築きながら「事実」に迫ろうとしていくところは、さすがは朝日の記者だ。気迫を感じる。断片的な欠片と欠片を繋ぎながら仮説を立てそれを検証していく地道な取材姿勢に引き込まれていく。これが本書を貫くメインストリームだ。

僕は、本書にはもう一つの重要なサイドストリームがあると思う。著者は、常に心の中で迷いを抱えておりそれを正直に吐露する。真実を明かすことが本当に「正しいこと」なのだろうかと葛藤する。この取材行為によって傷つく人が出るかも知れない。でも、真実なら多くの人に伝えるべきではないかと。新聞紙面では記者が自らのこころの揺れを表すことはないだろう。しかし本書では人間三浦英之氏自身を表現できている。

この間、僕は小説とルポを続けて読んだがやはり僕は小説よりドキュメンタリーの方が読みやすいと感じる。現実に起こった事件を題材にした小説なら入り込みやすいのだが、全く著者の頭の中の世界での創作、ゼロからストーリーを構築した小説は中々読むのに難儀してしまう。

それはどうしてなのだろうか。人間に対する興味はあるがアプローチが違うのではないか。僕は人のこころの動きを知りたいと思うが、こころは人間のどこにあるのか、こころと脳の関係はどうなっているのか、こころと身体の関係は、そんな切口だと非常に興味を覚える。だが、人情、こころの機微、愛と憎しみなどを追いかけるのは苦手だ。あまりいい小説を読んでこなかったせいかな。

 

 

 


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