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五十嵐敬喜 『土地は誰のものかー人口減少社会の所有と利用』 その1 空き家 不明土地 マンションの区分所有

2022-08-22 15:05:40 | Weblog

友人が送ってくれた北広島市にある国指定史跡旧島松駅逓所の蓮の花です。

今年は昨年と違ってランニングしている人が多い。来週は北海道マラソンが開催されるが、各種大会も復活してきていて、ランナーがそれぞれの目標に向かって走り込みをしているようだ。僕も今持っている力をやりくりしながらヨレヨレでも精いっぱい走っている。運動は健康貯金!

 

『土地は誰のものかー人口減少社会の所有と利用』(五十嵐敬喜著 岩波新書 2022年刊) その1 空き家 不明土地 マンションの区分所有    

「あそこの土地は誰のもの?」と問われれば、かつてなら「きっと前に住んでいた何々さんのお子さんのものじゃない」と答えたはずだ。それが「さあ、今は誰のものになっているのだろうか」「調べてみないとわからないね」となった。ところが、最近は「法務局まで行って調べたが結局わからなかった」という事案が急増しているという。そこに存在する土地や建物が「誰のものかわからない」時代になっている。

本書によると、全国に空き家は850万戸あり今も増加している。その内訳は、賃貸51%、長期不在41%、空き家率は13.6%ということだ。「近所の●●さんの家、亡くなった後ずっと空き家だね」というのは珍しいことではないというのが実感だ。

また、所有者不明の土地は全国に410万haあり、この国の全面積の10%、九州全体の広さを超えているという。「えっ、そんなに!」と驚いてしまう。

僕らより前の世代は、いつかは自分の家を持ちたいという目標に向かって懸命に働いた。そして手に入れたマイホーム。それが、跡を継ぐ世代に相続されず放置状態になっている。

昔なら、生まれた土地で育ち、家業を継ぎ、3世代が同じ屋根の下で暮らしていたのだろう。だが、時代は変わった。今は親とは別の土地にそれぞれ暮らしの拠点を持ち、親の家や土地を相続する必要が無くなっている。さらに不動産を所有すると固定資産税を払わなければならない。古家を解体するには費用がかかる。田舎では土地も家も需要が無いので売れない。さらに相続、登記の手続きをしなくても罰則はない。放置状態になってしまう理由がたくさんある。

さらにマンションも将来において廃墟になる可能性があるという。現在、マンションには675万世帯が暮らしている。一世帯の平均居住人口2.33人を掛けると1,573万人になり、人口の10%がマンションに住んでいる。

新しかった建物も数十年もすれ必然的に建て替えの必要が生じてくる。ここにあと何年住むことになるのだろうか。今の居住者がそれまで全員が生きているだろうか。それぞれの建て替えに対する考え方、暮らし向き、経済状態が異なる状態で、建て替えに対して全体に合意形成ができるのだろうか。また、共有施設については区分所有という所有方法もあり、さらに問題を複雑化している。

キシダ首相は「新しい資本主義」なる政策?を掲げているが未だに全く中身を説明できていない。僕はそんなのんきなことを言っている場合ではないと考える.

この国の資本主義社会には10%の亀裂が入っており、この亀裂はさらに拡がり遠からず資本主義システムは崩壊すると思う。

周知のように資本主義社会は私有財産制を基礎としている。戦前の治安維持法下においては私有財産を否定する思想に対して厳罰をもって対処した歴史がある。それほど私有財産は社会の根幹中の根幹である。それが、今は国民自らが私有財産を放棄する事態に陥っているのだ。10%の私有財産がすでに持ち主不明状態になっている。はたしてこのままこの国の資本主義体制は維持できるのか。もしできないとすればそれとは別のあり方を描けるのだろうか。

 

 


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