晴走雨読

晴耕雨読ではないが、晴れたらランニング、雨が降れば読書、きままな毎日

『かぞくのくに』

2012-08-12 21:52:21 | Weblog

 『かぞくのくに』(ヤン・ヨンヒ監督 2012年作品、シアターキノ)   

 朝鮮総連の幹部である父は、かつて16歳だった息子を「地上の楽園」と信じていたかの国へ送った。その息子が病気治療のため25年ぶりに帰国した。帰国中にも監視が付きまとう。監督自らの実体験に基づくストーリー。

 命令にその理由はいらない。命令にはただ従えば良い。あれこれ考えてはいけない。自分が生き残ることだけしか考えることのできない国。圧倒的な権力と相互監視社会の中では、自分を殺して生きていくしか無い。思想、国家、権力、家族、自由、生きるとはどういうことかが問われる。

 権力者や為政者にとって、自己の権力保持、組織の維持のためには、物言わず黙って命令に従う国民、社員、生徒、市民がいいのか。これを他国の出来事としていいのだろうか。私たち自らが所属する組織が、いつのまにか変質していないだろうか。

 監督自身の妹役には安藤サクラ、帰国した息子役には、『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』で三島を演じた井浦新(ARATA)。大変地味な映画だが重いテーマに真正面から取り組んだ秀作だと思う。

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