予定日より5日早く生まれた子馬。
早期胎盤剥離で生まれたらしい。
立てないまま哺乳ビンで乳を飲んでいたが、生後24時間たった頃から元気もなくなり、乳も半分くらいしか飲めなかった、ということで生後28時間ほどで来院した。
生後44時間ほどには死んでしまった。
剖検では胃潰瘍穿孔、腹膜炎、盲腸結腸の著しい膨満、そして・・・・・
サーファクタントが準備されていないことによる新生仔独特の無気肺とはちがう。
しかし、気管から気管支を開いてみると・・・
普通の肺炎にみられる気管粘液とは違う。
どうやら胎便が混じっているようだ。
胎便吸引症候群 だったのだろう。
Meconium Absorption Syndrome
分娩時、羊水が胎便で汚れていることがある。
それは胎仔が低酸素におちいったことを示していて、危険な徴候だ。
自発呼吸が始まり、胎便で汚れた羊水を肺に誤嚥すると、肺がダメージを受ける。
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肺サーファクタントが用意されていない新生児呼吸窮迫症候群にしても、胎便吸引症候群にしても、たいてい生後24時間くらいは子馬は活力を示すのは不思議なことだ。
新生仔特有の強さなのかもしれないし、体全体が酸素化されていて耐えられるのかもしれない。
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今日は北海道獣医師会産業動物臨床部会の会議。
いろいろな報告事項、議案があったのだが、東北関東大震災と原発事故による牛や馬の被害を心配し、救援方法を求める声も出ていた。
義援金を送る以外に具体的にできる妙案もないのだが。
なにかできることはないか、大動物の獣医さんたちは家畜と家畜を飼っている人たちのために何かできることはないか考えている。
ウンコしない方向、低酸素状態を改善する方向を考えるとき、母体への酸素投与などによる経胎盤、経臍帯が一般的なのでしょうか?
酸素が供給され、母体の末梢血酸素分圧が改善しても有効な酸素となっていなければならないのですね、この場合も。
鳥は卵の殻にはりめぐらされた血管が収束するまで出してあげることもできず、ひどく無力感を覚えたものでした。
気管支肺胞洗浄でしょうね。しかし、病院でお産するようにするとか、小児ICUを用意しておくとか、でないと助けるのは難しいように思います。
サーファクタントも3kg前後の人の新生児用で10万円くらいするようです。50kgほどの新生子馬だと体重換算でいくと・・・・・・